第千四百二十四話 逃走
「くっそー!リベンジのチャンスだったのに……」
ガイウスが悔しそうに天を仰いだ。
だがカルラもこの結果は意外だったらしく、本当に敵が消え去ったのかどうかを確認するため、周囲を探っていた。
「……本当に逃げたようだな」
カルラが敵の逃走を完全に認めた。
ガイウスはふて腐れた顔でもって言った。
「まさか逃げるとは思わなかったよ」
「ああ、それはわたしも同感だ。これは予想外だったね」
「だよなー。まさか逃げるなんて思わないもんなー」
ガイウスは口を尖らせて言った。
「残滓の残滓にも判断力があるということか……」
カルラがそう言うと、ガイウスもうなずいた。
「だよね。俺はてっきりほとんど脳みそなんて無い。単細胞的な奴を想像していたよ」
「わたしも同じだね。問答無用で襲いかかってくる物だとばかり思っていた」
「ところがそうじゃなかった……あれ、本当に残滓の残滓だったと思う?」
カルラが腕を組んで考え込んだ。
「ふむ……オリジナルだったと思うか?」
逆にカルラに問われ、今度はガイウスが腕を組んで考え込んだ。
「……どうかな?……俺は二回、奴と遭遇したわけだけど、違う印象を持ったな……」
「わたしもだ。あれはダロスで会った奴とは別物だと思う。だが、完全な別物ではない。だからわたしは残滓の残滓という表現に納得していたんだ」
「うん。俺も同じだね。だけど……」
「ああ、逃げるとはな……思考能力があると考えるほか無い……いや、待てよ」
カルラがそう言って再び考え込んだ。
「もしや……何者かが、逃走の指令を出したということかもしれんな……」
「何者か……か。てことは誰かが今のを見ていたってこと?」
「あるいはな」
「そんな気配あった?」
カルラは大きくかぶりを振った。
「いや、ないな」
「だよね。俺も感じなかった。誰も周囲にはいなかったと思う」
「ああ。いなかったが……」
「何か引っかかっているみたいだけど?」
ガイウスの問いに、カルラが難しい顔となった。
「そうだな。何かが引っかかっているようだ。だがそれが何なのか自分でもよくわからん」
「ふうん……カルラにしては珍しいね?」
ガイウスが意外そうに言った。
するとカルラがフンと鼻で息を鳴らした。
「何を言うか。わたしだって迷うことはある」
「まあそうだろうけどさ。珍しいと思ってね」
すると再びカルラが鼻息を鳴らした。
「珍しいかどうかは知らないがね。こういうことは今までも結構あったんだよ」
「へえ、で、今まではどうなったの?」
するとカルラが途端に険しい表情となって言ったのだった。
「大抵ろくでもない結果が待っていたよ」




