第千四百二十三話 気配
ガイウスは足下をじっくりと見下ろして、敵の姿を探した。
だが一向に、敵の影すら見当たらなかった。
そのためガイウスは、先程よりもはるかにゆっくりと、さらに降下しはじめた。
「……どこだ?……お~~い……いるんだろう?……出て来いよ~~……」
ガイウスは小さな声で見えざる敵に対して語り掛けるも、当然のことながら返答はなかった。
「……返事無しと……ま、そりゃそうだ……そうなんだけど、そろそろ出てきて欲しいなあ~なんて思ったり、思わなかったり、またまた思ったり、思わなかったり……どっちなんだ~俺~……」
ガイウスは暇つぶしのつもりなのか、クドクドと独り言を言い続けた。
だが敵は気配だけをわずかに感じさせつつも、その姿は一向に現わさなかった。
「……出て来ない……全然まったく出て来ない……こりゃ、この前の時とずいぶん違うな。前回は速攻で襲ってきたもんなあ……」
ガイウスは、ほんのわずか下降をし続けながら、集中力を切らさずに周囲を警戒した。
するとわずかに敵の気配が変ったように、ガイウスには感じられた。
「……攻撃態勢に入ったってところかな?……」
ガイウスはより一層、警戒の色を強めた。
そしてさらにゆっくりと下降する。
ゆっくりと、ゆっくりと、静かに下降をし続けた。
すると、再び敵の気配が変った。
「いよいよか……さあ、来い。相手になってやるぜ」
ガイウスも完全臨戦態勢に切り替え、どんな攻撃が来ようとも対応できるように十全に身構えた。
「……さあ来いよ……さあ……」
ガイウスはどんどんと下降した。
そして……。
ついに地上へと辿り着いてしまった。
「……ええと……お~い……いませんか~?……完全に降りちゃいましたけど~……」
ガイウスは地面にしっかりと足を下ろして、間抜けな台詞を呟いた。
だが、敵は現われなかった。
「…………まさか…………」
すると突然、音もなくカルラがガイウスの隣に降り立った。
「どうやらそのまさかだね」
「……嘘でしょ?逃げやがった?」
「ああ、まるで気配がないからね。逃げたね」
「いやいやいやいや、マジかよ。俺もの凄い緊張してたのに……」
「間抜けだな」
カルラが鼻でせせら笑った。
ガイウスは頬をピクピクと引き攣らせて反抗した。
「ちょっと待ってよ!それは俺のせいじゃないでしょ?奴が逃げたからであって、俺が悪いわけじゃないでしょうが!」
「わたしは単に状況を見て言っただけだ。間抜けだとな」
「二度も言った。俺のせいじゃないのに……」
ガイウスはこの怒りを何処にぶつければいいのか判らず、ただただ怒りに身体を震わすのであった。




