第千四百二十一話 カルビン邸の前にて
「ほい、着いた。結構早かったね?」
ガイウスが着地と同時に軽い口調で言った。
カルラは偉容を誇るカルビン邸を見上げ、眉をひそめた。
「そうだな……しかし、まさかカルビンの別荘とはな……」
「うん?ああ、そうだね。確かにアルスたちがこんなところにいたとは誰も思わないよね?」
「ああ。ところで、どうだ?奴の残滓の残滓とやらを感じるか?」
カルラは、シェスターの手紙に書かれていた地下水路の怪物の痕跡についてガイウスに問いかけた。
だがガイウスは首を横に振るばかりであった。
「いや……全然そんなの感じないんだけど……本当にいるのかな?」
「さあな。シェスターの手紙にはそう書いてあったが……」
「そう言えば手紙にはルキフェルが結界を張ったとも書いてあったよね?」
「ああ、だがそれも感じないな」
ガイウスは首を巡らして別荘内部を覗き込んだ。
「中に張ってあるのかな?行ってみようよ」
ガイウスが促すと、カルラが周囲を警戒しつつうなずいた。
「そうしよう」
カルラの同意を得て、ガイウスが別荘の中へと向かった。
そしてしばらくすると、ガイウスが何かに気付いた。
「……あっ!あるかも」
先頭を行くガイウスが、ルキフェルの結界らしき物を、カルビン邸の門の向こうに見つけた。
「ふむ、敷地内だけに張ってあるのか」
「どうやらそのようだね……ああ、確かにこの結界は強力だ。ルキフェルが張ったというのは本当みたいだね?」
ガイウスが門の先に見える結界を、丹念に観察して結論づけた。
その結論にカルラがうなずいた。
「そうだな。確かにルキフェルの結界のようだ。だが、相変わらず怪物の痕跡は見当たらないな……」
ガイウスも首を巡らし、周囲を見回すも、そんなものは影も見えなかった。
「……いないね。もしかすると突然現われたりするのかな?」
「かもしれん。いれば退治してくれようと思ったが……いなければ仕方がないな」
そこでガイウスがはたと気付いた。
「あのさ、手紙には俺の関係者だからアルスたちが襲われたって書いてあったよね?てことは、俺がここに姿を現わした以上、出て来なければおかしくない?」
「ああ、そうなるはずだ。だが……気配もないぞ」
「それって残滓の残滓だからかな?俺が地下水路で出会った時は、一発で感じたけど……」
「わたしもだ……忘れもしない、あのヒリヒリとするような感覚……あれを見逃すはずはない」
「だよね?だけどここにはそんなもの……うん!?」
ガイウスが話しの途中で何かに気付いた。
そしてそれは、まったく同時に、カルラも感じたのであった。
「来るぞっ!」




