第千四百二十話 権力闘争
1
「ですね。そのガイウス君が、いつ頃来るのかを知りたくて顔を出したんでしょうね?」
アジオがウンウンと、したり顔でうなずきながら言った。
「おそらくはそんなところだろうな」
シェスターは笑みを収めて、真剣な表情で言った。
「特異点……でしたっけ?」
「ああ。そこにこそ興味があるのだろうな」
「カルビンもですかね?」
「そうだろう。だが……カルビンが何故特異点たるガイウス君に興味があるのか……そこはまだ判らんな」
「ですね。特異点の性格を使って、権力闘争でもやるつもりですかね?」
「特異点の性格でそんなことが出来るとは思えないが……」
「う~ん、確か、物事が特異点中心に回るんでしたっけ?」
「そうだな。大体そういう認識でいいと思う。まあわたしも正直、あまりよく理解していないがな」
「難しいですね。ていうか本当にそんなことが起こるんですかね?」
「そう聞いているがな」
「なら、権力闘争にも使えるかも。だって特異点中心に良いことが起こるわけですよね?」
「いや、必ずしもそうではない。ただ人が集まり、何事かが起こる。決して良いことばかりというわけではない」
「そうなのか……じゃあ不確定要素が強すぎて、権力闘争には使えませんね?」
「そうだな。既にローエングリン教皇国のナンバー2としては、どちらかといえば危険因子だと思うが……」
「ですよね……自らの地位を崩されるかもしれないって考える方が、権力者としては自然ですよね」
シェスターはうなずきつつも、何か心に引っかかる物を感じていた。
だがそんなこととは露知らぬアジオが発言したことで、その考えは雲散霧消した。
「ところで、実際そのガイウス君はいつ頃ここに到着するんですか?」
「うん?……ああ、手紙は出したが、いつこちらに来られるかはわたしには判らんよ」
「そうですか。では気長に待つとしますか」
「ああ、そうだな。では折角だ。館の主が言ってくれたとおり、くつろいで待つこととしよう」
シェスターはそう言うと、アジオたちと軽く笑い合ったのだった。
2
「どうであった?」
カルビンは、自室に入ってきたイオーヌに対し、背を向け手元に開いた本を読みながら問いかけた。
イオーヌは、カルビンの顔を見ずに済んだことに喜び、笑みを浮かべながら答えた。
「さあ、いつ来るのかは判らないわ。ただ手紙は出したみたいだから、いずれ来るんじゃない?」
「そうか」
カルビンが興味なさそうに短く答えた。
イオーヌは内心腹を立てたものの、早くこの場を去りたい為か、やり過ごした。
「じゃあ、わたしは行くわよ」
イオーヌはそう言う途中でサッサと身を翻して、足早に去って行った。
カルビンはイオーヌが去ったのを確認するや手に取った本を閉じて振り返り、吐き捨てるように言ったのだった。
「生意気な小娘め……だがまあいい、貴様など使い捨てにすぎんのだからな……」




