第千四百十九話 挨拶
「エリースよ」
エリースは真っ赤なドレスを身に纏い、可憐な笑顔で会釈した。
「アリエルよ」
深く濃い青色のドレスに包まれたアリエルが、可愛らしく膝を軽く曲げて挨拶した。
「ああ、よろしく。わたしはヘルムート・シェスターだ。こちらは……」
シェスターは順々にアジオたちを紹介していった。
エリースとアリエルはそれを時折うなずきつつ、微笑みを浮かべながら聞き終えると、一旦振り返ってイオーヌと目を見合わせた。
そして再び向き直ると、エリースがゆっくりと口を開いた。
「わたしたちに聞きたいことでもある?」
エリースの問いにシェスターが若干と戸惑いを見せた。
「そうだな……聞くべきことは全てイオーヌに聞いたかな?ただ顔を見ていなかったのでね。気になっていただけなんだ」
「あらそう。ならもう用は済んだってわけね?」
「そうだな。わざわざ顔を見せてくれてありがとう」
シェスターが礼を言うと、エリースは笑顔を振りまきつつ、同じ様に満面の笑みを浮かべるアリエルを伴って、優雅にドレスを翻して去っていった。
一人残ったイオーヌは、軽く室内を見回した後に言った。
「アルスとオルテスは?」
「いや、いないが?」
「一緒に居ると思っていたわ」
「先程まではいたんだがね」
「何処へ行ったの?」
「彼らがあてがわれている部屋へと戻ったよ」
「ふうん……つもる話があったんじゃないの?」
「したさ」
「あら、ずいぶんと早いのね」
「そうかね?」
シェスターがそう言って首を若干傾げた。
イオーヌは両手を広げ、肩をすくめた。
「まあいいわ。わたしにも特に話はないのよね?」
うなずくシェスターを見るや、イオーヌは身を翻して静かに去って行ったのであった。
シェスターは、イオーヌの退室をハッキリと確認するや、アジオに向かって問いかけたのであった。
「どう思うかね?」
アジオは上を見上げ、いくらか考えたものの、明確な答えは出なかったようで、首をすぼめて返答をした。
「さあ、よく判りませんね。アルス隊長たちに関心があるようでしたが、彼らはずっとこの邸に居たわけですしね……」
「その通りだ。今更アルスたちでもなかろう」
「では……」
「アルスたちに関心があると見せかけたのだろう」
「てことは……関心は、やはり貴方ですかね?シェスターさん」
するとシェスターが、ニヤリと笑みを見せつつ首を横に振った。
「いや、違うだろう。わたしではないはずだ」
「では誰ですか?」
シェスターは軽く首を傾け、一つ鼻を鳴らした。
「決まっている。ガイウス君さ」




