第千四百十七話 許容範囲
「ほら!やっぱりいるんだ!猫王エル!」
コメットがさもうれしそうに叫んだ。
アジオはバルトと顔を見合わせていぶかしげな表情を作った。
「いやあ、以前も猫王エルがいるとか仰ってましたけど……正直信じてなかったですよ」
「だろうな。わたしも君たちがエル様の実在について、信じてはいないだろうと感じていた」
「はい。だって御伽噺の類いですからね。それに……なんでしたっけ?究極魔法とか……」
シェスターは思わず苦笑した。
「オーガ神の究極魔法だな」
「ええ、それですよ。それ……それによって猫王エルは失踪したんですよね?」
「おそらくだがな」
「それにガイウス君も?」
「そうだ。それにカルラ様もだ」
「ああ、あの大魔導師……いや、もう本当にお腹いっぱいですよ」
アジオが腹の底から絞り出すような溜息を吐いた。
シェスターは思わず笑った。
「いや、すまんすまん。つい笑ってしまった。だが……そうなるだろうな。いくらなんでも突拍子もない話が多すぎるからな」
「……ええ、とはいっても我々も色々な経験をしましたから、頭ごなしに信じないってわけじゃないんですがね……」
「そうだな。それは正直、わたし自身もそうだ」
「シェスターさんもですか?」
「ああ、正直、事はわたしの許容範囲を超えているよ。実際すべてのことをキッチリと頭の中で整理できているわけではないんだ」
「……なんか、他にもありそうですね?」
アジオが、ジトーッとした目でシェスターを見た。
シェスターは内心ドギマギしたものの、顔には出さずにすんだ。
「……いや、特にはないが?」
「本当ですか?何か他にも隠しているような……」
「そんなことはない。今までの話で充分混乱するだろう?他には別にないさ」
シェスターはそう言いつつ、心の中で舌を出した。
(いや、今の段階で地獄巡りの話はまずいだろう。ルキフェルの正体についても……な)
するとアジオが仕方ないといった表情となって呟いた。
「参りましたね。伝説の大魔導師やら、猫王やら……それに古代の神の究極魔法に、神の棺……それと地下水路の怪物……ああ、怪物と言えば、現世において最強クラスの権力を持つカルビン卿なんて怪物まで……正直、とんでもない連中の博覧会じゃないですか?いやあ参った。とんでもなく厄介なことに巻き込まれたな~って思ってますよ……」
アジオはそう言うと、両手を広げて大きく肩をすぼめた。
シェスターは相好を大きく崩して、苦笑いをするしかなかった。
「同感だ。やはりこれはわたしの許容範囲を超えている。ならばやはりここは、今君が名を上げた方たちに裁量してもらうしかあるまいな」




