第千四百十六話 残滓の残滓
1
「では関係性はどうなんでしょうか?会う回数や時間が短くとも、深い関係というものはあるかと……」
するとカルビンがニヤリと口角を上げた。
「さて……どうかな?さして深い付き合いということもないかな……」
「そうですか……」
シェスターはこれ以上カルビンに問い質しても満足のいく答えは得られないと思い、イオーヌに向き直った。
「では、アルスたちはまだこの別荘を出られないのか?」
「そうね。だいぶ薄くなったけど、まだ怪物の残滓の、そのまた残滓のようなものが感じられるのよ。その間は止めておいた方がいいと思うわ」
「残滓の残滓か……それが何時無くなるのかは判らないわけだな?」
「ええ、わかるわけがないわ。たださっきも言ったけど、だいぶ薄くなってはいるから、そう遠いことじゃないと思うけど」
「ふむ……ではアルスたちはもうしばらくご厄介になるしかないな?」
シェスターが微笑みながら二人を見た。
アルスたちは申し訳なさげに少しはにかんだ。
「はい。ご面倒をおかけします」
アルスはカルビンに向かって頭を下げながら言った。
カルビンは右手を挙げてアルスを制すと、鷹揚に微笑んだ。
「気にすることはない。我が家だと思ってくつろいでくれたまえ」
カルビンからのありがたい言葉に、アルスたちが深々とお辞儀した。
するとカルビンがシェスターへと向き直った。
「諸君らも疲れたろう。今日のところはこの辺にして、ゆっくりと休んでくつろいでくれたまえ」
カルビンが両手を広げ、笑顔を浮かべながら言った。
「そうですか。それでは遠慮無く、お言葉に甘えさせて頂きます」
シェスターはそう告げると、礼儀正しく一礼した。
そして機敏な動作でサッと後ろを振り返ると、アジオたちを促してサッサと退出するのであった。
2
シェスターたちは、カルビンから用意された部屋の中でも最も大きな部屋に集まった。
そしてそこで、シェスターがエルについての説明をした。
すると、当然のようにアジオが胡散臭げな視線をシェスターへと送りながら言った。
「……それ、本当の話ですか?」
シェスターは苦笑を漏らした。
「ああ、本当だ」
だがアジオは信じられないと言いたげに両手を大きく広げた。
「いやあ、でも猫王エルですよ?ハッキリ言って御伽噺の類いじゃないですか」
「いや、違う。実際におられるのだ」
「いやいやいや、信じられる話じゃないですって。実際、大人になってからその名前を聞いたことがないですしね。正直子供向けの絵本にしか登場しないですよ」
シェスターはうなずくも、断固として言った。
「そうだな。だが何度も言うが、これは本当の話なのだ」




