第千四百十三話 トポロ
「つまりわたしを経由して、ガイウス君の関係者になると?」
困惑気味の表情で尋ねるシェスターに、イオーヌが明快に答えた。
「正確にはロンバルド・シュナイダーも経由しているわね」
シェスターは一度大きく息を吐き出し、気持ちを整理した。
「……それは我々だからか?」
イオーヌはすかさず返答した。
「そうよ。貴方とロンバルド・シュナイダーは、ガイウス・シュナイダーにとって重要人物だから、その貴方たちと関係の深いアルスとオルテスが引っかかるのよ」
「だが……我らとアルス、オルテスの両名は長年の知己というわけではないぞ?」
「ええ、そうらしいわね。でも付き合いの長さじゃないのよ。貴方たちにとって彼らが重要人物なのかどうかが大事なのよ」
「そのことが、その残滓とやらに判るのか?」
シェスターの問いに、イオーヌはさも当然と言いたげに答えた。
「ええ、わかるわよ。人の思いっていうのは、貴方たちが考えている以上に、重く漂うものなのだから……」
イオーヌはそう言うと、何やら憂いを帯びた悲しげな表情となった。
シェスターは、その表情に気付いたものの、今はそのことに触れずにいた。
「なるほどな。だとしたら、そのトポロも同様ということか?」
「たぶんね」
「たぶん?そのトポロはエル様の手下なのだろう?そのエル様はガイウス君にとって重要なお方だ。だからそのトポロも襲われたんじゃないのか?」
するとイオーヌが肩をすくめた。
「手下っていうのは、トポロ本人が言っているだけでしょ?本当かどうかはわたしにはわからないわ」
「ふむ……ではそのトポロはどうなったのだ?」
するとイオーヌが両手を広げた。
「消えたわ」
「それは、ガイウス君やエル様同様ということか?」
「たぶんね」
「またたぶんか……それも確認したわけじゃないからということか?」
「ええ、そうよ」
「ふむ……で、君たちはアルス、オルテスを救い出し、地下水路から脱出したと?」
「そう、その通りよ」
「トポロは救えなかったわけだな?」
矢継ぎ早やのシェスターによる質問に、イオーヌが思わず肩をすくめた。
「しょうがないじゃない。『わしがおとりとなって引きつける!お前たちはサッサと逃げい!』とかなんとか言って、勝手に敵の懐に飛び込んでいっちゃったんだから」
「ふむ、おとりにか……」
シェスターが呟くように言うと、イオーヌが異を唱えた。
「逃げ出せば良いんだから、別におとりになんてならなくて良かったのよ。なのに慌てて飛び込んでっちゃったんだから」
イオーヌは呆れ顔でそう言うのであった。




