第千四百九話 危険
「そうですか。ところで伺いたいのですが?」
シェスターがすかさず話題を変えた。
カルビンは鷹揚にうなずいた。
「なにかな?」
「何故、我らの仲間を攫ったので?」
シェスターがあっさりと確信をつく問いを発した。
だがカルビンは悪びれるでもなく首を横に振った。
「さて、それはイオーヌに聞くと良いだろう。その件に関しては、わたしはほとんど関知していないのでな」
シェスターは驚き、重ねて問うた。
「関知していないと?それは本当ですか?」
「ああ、本当だ。わたしは監禁場所を提供しただけだ。もちろん話しは聞いてはいるが、わたしが指示を出したということはない」
「そうなのか?」
シェスターはイオーヌに向き直り、眉根を寄せて問い質した。
するとイオーヌがうなずいた。
「ええ、まあそうね。カルビンがまったく関係ないってわけじゃないけど、主体でないのは確かね」
「どういうことだ?では何のためにアルスたちを攫い、その後コメットたちまで攫おうとしたのだ?」
するとイオーヌが仕方なさげに口を開いた。
「危険だったからよ」
シェスターはとても厳しい表情でイオーヌを睨み付けた。
「危険だと?何に対して危険だと言うのだ?」
「貴方たちが言う、地下水路の怪物よ」
「なにっ!?地下水路の怪物だと!?」
「ええ、そうよ。あれに近付いたらダメなのよ」
「どういうことだ?アルスたちはあの地下水路の怪物に近付いたというのか?」
「そうよ。だから保護したの」
「ちょっと待て……ではコメットたちはどうなんだ?彼らは地下水路の怪物なぞには近付いていないぞ?」
するとイオーヌがすかさず答えた。
「ええ、彼らは貴方たちをおびき寄せようと思って攫っただけよ」
「本当か?」
「ええ、正確に言うとシェスター、貴方が目的よ」
「……何故わたしなのだ?」
「さっき言ったでしょ?貴方はガイウス・シュナイダーにとって重要人物だと」
「だからわたしをここに連れてくるためにコメットたちを攫ったと?」
「そうよ。もっともいとも容易く取り返されちゃったから、わたしが貴方の前に現われたのよ」
「ふむ……わかった。コメットたちの件はそれでいい。だがアルスたちの件は……」
シェスターがそう言った途端、広間の扉が開け放たれた。
そして、その開け放たれた扉の先に、二人の男の姿があった。
「アルス……オルテス……」
シェスターは二人の顔を認めるや、その名を呟いた。
アルスたちは元気そうな足取りで広間を闊歩し、シェスターの前へと辿り着いた。
「どうも、ご迷惑をお掛けしたようで……」
アルスはそう言うと、申し訳なさそうに頭を下げるのであった。




