第千四百八話 事象を引き寄せる
「そうか、正直で結構だ」
カルビンはそれだけ言うと、シェスターの後ろに控えるアジオたちを睥睨した。
そして軽く鼻でフンと息を漏らすと、あらためてシェスターを注視した。
「それで……今日はどんな御用向きだったかな?」
カルビンの問いに、シェスターがすかさず言った。
「我らの仲間をお引き渡し頂きたい」
「仲間?……ああ、彼らか……いいだろう」
カルビンはそう言うと、手近に控える部下を手招いた。
「連れてきてやれ」
カルビンは一言短く用を言いつけると、再びシェスターへと向き直った。
「ところでシェスター君。君に聞きたいことがある」
「何でしょう?」
「ガイウス・シュナイダーのことだ」
シェスターは顔色一つ変えずにいた。
「彼がどうかしましたか?」
「彼は……本当にそういう者なのかね?」
シェスターは片眉をピンと跳ね上げて問い返した。
「そういう者とは、一体どういう意味でしょうか?」
するとカルビンが難しい顔付きとなった。
「そうだな……わたしもよく要領を得ていないのでね。上手く表現することが出来ないのだが……なにやら特殊な体質だとか?」
シェスターは、カルビンがどこまでガイウスのことを承知しているか判らない為、情報を小出しにすることにした。
「特殊ですか……まあそうでしょうな。彼はまだ若いですが、恐ろしいほどの魔力総量を誇りますから」
するとカルビンが軽く首を横に振った。
「そうではない。いや、確かに魔力総量が尋常ではないとは聞いている。だが、わたしが言っているのはそうではない」
「では、なんだと?」
「彼は……事象を引き寄せるとか?……」
「事象をですか……さあ?それはまたずいぶんと抽象的な物言いですね?」
シェスターは顔をしかめ、肩をすくめながら言った。
カルビンは難しい顔はそのままに、実にたどたどしく問い直した。
「ああ、わたしも良くは判らないのだ。あまりにも荒唐無稽なのでな?」
「そうですか。で、その話し、誰からお聞きになったので?」
「ルキフェルという者だ」
「ルキフェルですか」
「そうだ。知っているかね?」
「いえ、直接会ったことはありませんが、名前は存じております」
「そうか。そのルキフェルがわたしに言ったのだ。ガイウス・シュナイダーは特別だとな」
「そうですか。事象を引き寄せる特別な存在……そう聞いてカルビン卿はガイウス君に興味を持たれたので?」
カルビンは大きくうなずき、右の口の端を大きく歪めて言ったのだった。
「そうだ。とても興味を引かれたのでな。会ってみたいと思っているところだ」




