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第十一章 神の棺

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第千四百七話 ゼロス・カルビン

 イオーヌが開け放った扉の先には、立派な身なりの容姿端麗な壮年の男が、大勢の従者を随えて待ち構えていた。


「やあ、いらっしゃい。待っていたよ」


 男は良く通る透き通った声でシェスターたちを出迎えた。


 シェスターは軽く会釈を返すと、男の前に進み出て、丁重に挨拶をした。


「お初にお目にかかります。わたくしはヴァレンティン共和国……」


 すると途中で男が右手を挙げながら、シェスターの自己紹介を制した。


「聞いているよ。シェスター君だな?ああ、そう呼んでも構わないかね?」


 機先を制された形となったシェスターは、内心でかなり苛立つも、それを顔には決して出さずにうやうやしくうなずいた。


「もちろんです。カルビン卿」


 カルビンは、シェスターの回答に満足げにうなずくと、壁際でつまらなそうに腕を組んでいるイオーヌに対して優しげに語り掛けた。


「イオーヌ、ご苦労だったな」


 だがイオーヌは答えるのも嫌だとばかりに無言でプイッと横を向いてしまった。


 しかしカルビンはそんなことはまったく意に介さず、再びシェスターたちと向き合ったのであった。


「ところでシェスター君、わたしのことをどう思うかね?」


 思いがけぬカルビンの問いに、シェスターが少し間を置いた。


 そして考えをまとめるや、静かに口を開いたのだった。


「強大なローエングリン教皇国において、絶大な権勢を誇っておられるお方だと……」


 シェスターは単刀直入にそう言って、探るような視線をカルビンへと送った。


 カルビンはにこやかな笑みを浮かべながら、ゆっくりと口を開いた。


「的確だな。だが他にはないかな?」


 カルビンが挑戦的な眼差しをシェスターに送った。


 だがシェスターはその視線を受け流して答えたのだった。


「他と仰いますと?」


 カルビンは口の端をほんのわずか上げた。


「わたしについて我が国内では色々と噂が立っているであろう?そのことについてどう思うかね?」


 シェスターはさりげなく首を傾げた。


「噂……ですか。わたくしは正直世情に疎いものですから、ローエングリン教皇国の人々の噂話というものを良く存じませんが」


「ほう、そうかね?ところでシェスター君、君は以前この邸に地下道から訪れたと聞く。そこで変ったものを見たのじゃないかね?」


 カルビンが睨めつけるような視線をシェスターへ送った。


 だがシェスターは予想していたのか、その視線を真正面からしっかと受け止めた。


「ああ、確かに見ましたな。なにやら怪しげな地下室を」


 シェスターはここへ来て恭しい態度を一変、挑戦的な物言いへと変るのであった。

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