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第十一章 神の棺

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第千四百六話 カルビン邸

 1



 感情を露わにするイオーヌに対し、シェスターはあくまでも冷静に、穏やかな口調で語り掛けた。


「それはすまなかった。君の気に障ったというのならば謝ろう」


 シェスターはそう言うと、丁寧に頭を下げた。


 イオーヌは腰に当てた両手を上げて、胸の前で組んだ。


「素直ね。それならいいわ。許してあげる」


 イオーヌはようやく元通りの笑顔を取り戻した。


 そして再び歩き出したイオーヌに合わせ、同じ歩幅で歩き出したシェスターが、たっぷりの間を置いてから、あらためて問いかけた。


「ところで、もしやカルビン邸とは、あれではないか?」


 シェスターは遙か遠くに見える山の中腹に建つ、荘厳なたたずまいの建物を指差した。


「わたしは地下からしか訪れたことがないので判らないのだよ」


 シェスターが冗談めかしてそう言うと、イオーヌが楽しそうに口を開いて笑い出した。


「そうだったわね。そうよ。あれが目的地のカルビン邸よ」


 シェスターは山の中ほどに、世界を睥睨するかのように建つカルビン邸を睨み据えるのであった。



 2



 シェスターたちが豪壮なカルビン邸の正面入り口を通り抜け、豪華な意匠の玄関扉の前に立つと、突然観音開きに扉が開いた。


 すると扉の向こうには、執事とおぼしき者や、沢山の召使いたちがうやうやしく礼をしながら一行を待ち構えていた。


「お帰りなさいませ」


 執事が代表して先頭のイオーヌに対して言った。

 

 するとそれに続いて召使いたちが声を合わせて同じく出迎えの挨拶をした。


「お帰りなさいませ」


 だがイオーヌは仏頂面で、大股に召使いたちの間をすり抜けながら、ぶっきらぼうに言い放ったのだった。


「別にここはわたしの家じゃなくってよ。だからわたしには帰ったつもりなんてないし、貴方たちにお帰りなさいなんて言われたくはないわ」


 シェスターたちは、無言で頭を下げ続ける召使いたちの間をすり抜けつつ、イオーヌの後を静かに追った。


「……どうやら、この邸に厄介になっているのが、相当に業腹なようだな?」


 シェスターの問いに、イオーヌは振り返りもせずに答えた。


「当然よ。わたしは言われたからここにいるだけよ。お帰りなさいなんて言われるのはほんと迷惑だわ」


「言われたからか……おっと、これ以上詮索はすまい」


 シェスターが慌てて自らの発言を打ち消した。


 するとイオーヌがフッと軽く息を吐き出し、口の端を上げて微笑を浮かべた。


「まあいいわ。さあ、ここよ」


 イオーヌはそう言うと、目の前にそびえ立つ大きな観音扉を力強く開け放ったのだった。

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