表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『八洲防衛戦記 ムラサメ』  作者: 水前寺鯉太郎
第一部:異星侵略者編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
9/26

第8話「蒼穹の亡霊、F-4編隊」

第8話「蒼穹の亡霊、F-4編隊」


 空が唸った。


 巨大な浮遊物体の底部ハッチがゆっくりと開き、黒い影が次々と飛び立っていく。


 一機。


 二機。


 十機。


 二十機――。


 瞬く間に編隊を組み、蒼穹を覆い尽くした。


「……なんだ、あれは」


 銀太はムラサメの単眼モニターを拡大する。


 映し出された機影を見た瞬間、思わず息を呑んだ。


「嘘だろ……」


 見間違えるはずがない。


 あの独特な機体形状。


 長く突き出た機首。


 後退翼。


 空を駆け抜けた伝説の戦闘機。


「F-4ファントム……」


 とうの昔に退役したはずの名機だった。


 だが違う。


 機体は黒ずんだ銀色。


 風防の奥に人影はない。


 まるで亡霊だった。


「敵が……人類の兵器を学習したのか」


 銀太の背筋を冷たい汗が流れる。


 F-4編隊は一斉に機首を下げた。


 衝撃波が空を裂く。


 急降下。


 レールガン。


 実体弾。


 雨のような攻撃が街を穿つ。


「紬!」


「うん!」


 銀太は背中の固定ハーネスを締め直す。


「舌を噛むな!」


 変形レバーを叩き落とした。


 ガチン。


 ガガガガガガッ!!


 数万の歯車が逆転を始める。


 腕が折り畳まれ、翼となる。


 脚部が収納され、胴体が流線形へ変化していく。


 青い巨人は再び飛翔形態へ姿を変えた。


 機首下部から斬撃ブレードが飛び出す。


 シャキン!!


「行くぞ、ムラサメ!」


 背部推進器が火を噴いた。


 爆煙を突き破り、青い機体が空へ躍り出る。


 一気に加速する。


 正面から迫るF-4。


「そこだ!」


 操縦桿を押し込む。


 真正面。


 互いの距離が一瞬で消える。


 すれ違いざま。


 斬撃ブレードが銀色の翼を切り裂いた。


 ドゴォォォン!!


 敵機は火球となり、大地へ墜ちる。


「まず一機!」


 だが、残る編隊は乱れない。


 一斉に散開する。


 左右へ。


 上下へ。


 完璧な連携だった。


「来る!」


 翼下ポッドが唸る。


 ゼンマイが弾ける。


 バババババッ!!


 空気圧で撃ち出された鋼鉄弾が二機目を捉え、機首を吹き飛ばした。


 それでも終わらない。


 背後。


 さらに三機。


 銀太は急旋回へ入る。


 強烈なGが全身を押し潰した。


「ぐっ……!」


 コックピットの警告灯が赤く点滅する。


 マブイ計。


 針が危険域へ沈んでいく。


「お父さん!」


 紬の声だった。


 その瞬間。


 背中から温かな熱が伝わる。


 ムラサメの装甲が淡く蒼く輝いた。


「紬……?」


「分かる!」


 紬は目を閉じたまま叫ぶ。


「右!」


 銀太は反射的に操縦桿を倒す。


 一瞬前までいた空間を、レールガンが貫いた。


「まだ来る!」


「っ!」


「上!」


 機体を跳ね上げる。


 銀太の視界に、敵機の軌道が自然と浮かび上がった。


 まるで空そのものが教えてくれているようだった。


「見えた!」


 ムラサメは急上昇する。


 その勢いのまま反転。


 一瞬で敵編隊の後方へ回り込んだ。


「紬!」


「うん!」


 二人の声が重なる。


 ムラサメの歯車が轟音を上げた。


 翼下ポッドが一斉に火を噴く。


 バババババババッ!!


 通常の倍を超える鋼鉄弾が空を埋め尽くした。


 三機。


 四機。


 爆炎が連続して咲く。


 青い機影は、その炎を突き抜ける。


 空にはなお、銀色の亡霊たちが旋回を続けていた。


 だが銀太は笑った。


「空なら負けねぇ」


 青きムラサメは再び機首を上げ、迫り来る銀の編隊へ一直線に飛び込んでいった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ