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『八洲防衛戦記 ムラサメ』  作者: 水前寺鯉太郎
第二部:カゲ星人編

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第5話「覚醒の蒼光、震電搭乗」

第5話「覚醒の蒼光、震電搭乗」

 「震電っ……!!」

 夜の静寂を破る激しい金属音と火花。

 紬は裸足のまま、パジャマ姿で葉加瀬家の子供部屋を飛び出していた。

 月光に照らされた路地裏で繰り広げられていたのは、自分を守るために命を削って戦う、小さな相棒『震電しんでん』の痛々しくも気高き死闘であった。

 『ターゲット「特異点・紬」を捕捉。即時、捕獲モードへ移行する』

 カゲ星人の暗殺者『晴嵐せいらん』のバイザーが、紫色の不気味な光を点滅させた。

 晴嵐の巨躯が震電を振り払い、逃げ場のない紬へと流体金属の忍者刀を向けようとした――まさに、その時だった。

 「あたしの……あたしの友達に手を出すなァッ!」

 紬は恐怖を完全に吹き飛ばし、地を蹴って震電のもとへ飛び込んだ。

 そして――小さなからくり戦車の傷ついた真鍮装甲へ、両手を力強く重ね合わせた。

 ――ドクンッ!!

 大気が激しく震えた。

 紬の全身の血脈から、太陽のごとき眩い純白と蒼炎の『マブイ』の奔流が溢れ出し、震電の真鍮の車体へと一気に注ぎ込まれる。

 ガチン……ガガガガガガガガガガガガガッ!!

 震電の体内で眠っていた、超高密度圧縮の積層からくりフレームが一斉に解凍された。

 幾千、幾万の精密ギア群が狂暴なまでの逆回転を開始し、真鍮と黒檀の装甲が火花を散らしながら怒涛の勢いで膨張・伸長を始める。

 一メートル、二メートル――。

 車体から剛健な巨大脚部が伸び、胸部がせり出し、両肩の重連砲が圧倒的な威容を誇る大口径砲へと変貌していく。

 手のひらサイズだった小さな騎士は、光の濁流の中で――全高二・五メートルを誇る、勇壮なる「青き巨神甲冑」へと超巨大化(覚醒)を遂げたのだ。

 『な……なに……! データにない質量膨張だと……』

 晴嵐の内部モニターが驚愕に狂い咲く。

 その眼前で、巨大化した震電の胸部装甲が観音開きに開放された。

 内部に存在していたのは、銀太が娘のために設計した、温かな生体同調型コックピット。

 紬の身体が引き寄せられるように吸い込まれ、吸い付くように操作ハーネスがその小さな身体を優しく包み込んだ。

 ガシューンッ!

 ハッチが固く閉ざされ、コックピット全体に澄み切った蒼いマブイの光を満ち渡らせる。

 双眸のカメラアイが、闇夜を射抜くような鋭い蒼炎を放ち、地響きを立てて仁王立ちした。

 操縦席に座る紬の指先に、力強いマブイの脈動が宿る。

 もう……守られるだけの子供じゃない。お父さんと一緒に、この八洲の未来を守るんだ。

 「私と……震電が、お前の相手だッ!!」

 紬の魂の叫びに呼応し、巨大化した震電が右手に構えたのは、同じく巨身に合わせて伸長した超高周波からくり大刀『震牙しんが』。

 ギギギギギギギッ!!

 歯車が咆哮を上げ、巨大な刃が蒼い摩擦火花を散らす。

 父から引き継がれた熱き『マブイ』を身に纏い、15歳になった少女・紬と新生巨神『震電』の、反撃の第一撃が夜の闇を真一文字に切り裂いた。

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