第6話「極大の一砲、逃げ場なき暗殺者」
第6話「極大の一砲、逃げ場なき暗殺者」
月光の下で仁王立ちする全高二・五メートルの青き巨神――覚醒を果たした新生『震電』。
その温かな生体同調コックピットの中で、十五歳になった紬の双眸が、鋭い蒼炎の光を宿して冷酷に冴え渡っていた。
『……チッ、図体ばかりデカくなりおって』
カゲ星人の暗殺者『晴嵐』のバイザーが、紫色の不気味な光を点滅させる。
晴嵐は身を躍らせ、路地裏の建物の影や夜の暗がりへと滑り込み、流体金属の特性を生かした「影への潜伏・不可視移動」に入ろうとした。
暗殺者の真骨頂。姿を消し、死角から紬の首元を狩り取る算段だ。
だが――操縦席の紬の唇から、小さく、しかし毅然とした言葉が溢れ出た。
「逃がさない……! お前なんかに、あたしたちの街を二度と荒らさせないッ!!」
紬が操縦桿のメインスイッチを深々と押し叩いた。
ガガガガガガガッ!!
巨大化した震電の胸部装甲が、重厚なギミック音を立てて観音開きに咆哮開放された。
内部から姿を現したのは――銀太が極限の職人技で仕込んだ超大口径主砲。
――からくり極大兵装『120mm滑腔砲・震電砲』。
「吹き飛べぇぇぇぇッ!!」
ドォォォォォォォォンッ!!!!!!
地底を揺らす、凄まじい大砲撃の巨響。
高圧空気と高強力スプリングの爆発的な解凍音とともに、巨大な超硬スチール砲弾が吐き出された。
砲煙と猛烈な衝撃波が路地裏を吹き荒れる。
砲弾は晴嵐の足元の建造物や瓦礫、そして奴が逃げ込もうとしていた影の死角を正面から木っ端微塵に砕き割った。
ズガガガガガガアンッ!
粉砕されたコンクリートと鉄筋の豪雨。影を落としていた遮蔽物が一瞬で消失し、晴嵐の隠れ場所が完膚なきまでに奪い去られた。
『なに……ッ! 環境そのものを破砕して影を消しただと……』
晴嵐の内部モニターが狼狽に揺らぐ。
遮蔽物を失い、月光の下にむき出しとなった異星の暗殺者。
その絶望の眼前に、震電の両肩の装甲が力強く跳ね上がった。
ガシューンッ!
現れたのは、巨大化に合わせて大口径化された『からくり重連銃』二門。
「これで……終わりだぁぁぁッ!!」
紬のマブイが極限まで跳ね上がり、震電のギア群が神速の追従速度を発揮する。
ババババババババババババババッ!!
大口径実体弾の豪雨が、逃げ場を失った晴嵐へ向かって乱れ飛んだ。
『ぬあぁぁぁっ! 変質……液体化してかわせ……っ』
晴嵐は流体金属の装甲を軟化させ、身体の形状を水のように崩して弾道を滑り抜けようと試みた。
――だが。
追いつかない。
覚醒した紬の圧倒的なマブイ反応速度と、震電の重機関砲の掃射スピードは、カゲ星人の「流体金属の細胞変質時間」を遥かに凌駕していたのだ。
ドババババババババッ!!
変質が間に合わない晴嵐の右腕、胸部、そして膝関節へ、鉛とスチールの大雨が容赦なく叩き込まれる。
激しい金属疲労音と火花。
流体金属の装甲が千切れ飛び、晴嵐の巨躯が黒煙を吹き上げて激しくのけ反った。
『ガハッ……バ、バカな……! この私が……人間の娘の攻撃スピードに……追いつけないだとぉぉぉッ!』
夜の街に響き渡る、暗殺者晴嵐の悲鳴。
父から受け継がれた熱き『マブイ』と、一歩も退かぬ少女の覚悟が、異星の冷酷な影を月光の下で叩き潰そうとしていた!




