第4話「一進一退、月下の死闘」
第4話「一進一退、月下の死闘」
月明かりが虚しく降り注ぐ、深夜の敷島京郊外。
全高わずか数十センチの「小さな鋼鉄騎士」――からくり甲冑モードへと変形した『震電』の双眸が、蒼く激しい火花を散らした。
ターゲットは、眼前に立ちはだかる全高二・五メートルの巨大な陰謀――カゲ星人の隠密型パワードスーツ『晴嵐』。
ガシュン! カシュンッ!
震電の両肩装甲が観音開きに叩き割られ、内部から無骨な二連装筒がせり出した。
銀太が仕込んだ内蔵遠距離兵装――『からくり重連機関砲』。
ギギギギギギギギッ!!
超高圧スプリングと精密ギアが狂おしく逆旋回を始める。
ババババババババババッ!!
超高圧圧縮空気によって撃ち出された鋼鉄スチール弾の豪雨が、月夜の静寂を切り裂いて晴嵐の胸元へ叩きつけられた。
だが――。
『無駄な足掻きを……』
晴嵐の巨躯が、まるで水面に映る影のように揺らめいた。
流体金属で構成された外装が瞬時に蠢き、極小の隙間をすり抜けるように弾道をすべてかわしきる。
弾丸は背後のコンクリート壁を粉砕し、激しい砂煙が路地に巻き起こった。
煙を切り裂き、晴嵐が影のごとき跳躍で肉薄する。
右腕から伸長した流体金属の忍者刀が、月光を反射して震電の小さな首元へと振り下ろされた。
死を招く一閃。
だが――震電は退かない。
ジャキンッ!!
右腕に構えた超振動短刀『震牙』を斜め上方へ力任せに突き上げる。
ガギィィィィィンッ!!
金属同士が破砕し合う激しい高音とともに、眩い火花の華が夜の闇を真白く照らし出した。
晴嵐の巨大な忍者刀の刀身を、震電の小さな震牙が見事に噛み合わせ、受け流していたのだ。
『ぬう……重い! このサイズのからくりにこれほどの出力が……』
晴嵐の内部モニターが驚愕に点滅する。
震電の真鍮製の足回りが「ギギギ」と悲鳴を上げ、アスファルトの地表に深い亀裂が放射状に走る。
だが、震電内部で脈打つのは、銀太の熱き職人魂と、愛する紬を守るための『魂』の同調波動。
震電は踏みとどまり、力任せに晴嵐の忍者刀を弾き返した。
間髪入れず、両肩の重連砲が零距離で火を噴く。
ババババッ!
晴嵐が間一髪で体を捻って弾丸を滑らせ、返す刀で死角からの突きを繰り出す。
震電はホバー脚部を滑らせて旋回し、間一髪で直撃を回避。
火花が散り、鋼が噛み合い、爆音が空を穿つ。
全高二・五メートルの影の暗殺者と、手のひらサイズの小さな巨神。
圧倒的な体格差を物ともせず、眠る紬の平和を守るため、月下の路地裏で命を削る一進一退の激闘が繰り広げられていた。




