第15話「鉄の檻、閉ざされた地底」
第15話「鉄の檻、閉ざされた地底」
一機の敵重装甲兵を撃破したところで、この地獄の戦況は何ひとつ変わらなかった。
途切れぬ重機関砲の掃射音。連鎖する爆発。人々の痛切な悲鳴。
燃え上がる敷島京のあちこちから、惨劇の咆哮が耐え間なく響き続けている。
「……まだだ……まだ終わっちゃいねぇ……!」
コックピットの中で銀太が蒼き単眼を鋭く走らせた、まさにその時だった。
押し寄せていた異星の重装甲兵たちが、一斉にその歩みを停止させた。
バイザーの頭部センサー群が、不気味な赤光を淡く点滅させる。
まるで、地表の生体反応をくまなくスキャンするように。
「まずい……っ!」
瓦礫に潜む八洲軍の将校が血相を変えて叫んだ。
「あの先は……大勢の市民が避難している地下防空シェルターだぞ!」
重装甲兵の群れは迷うことなく進路を変えた。
敷島京の地下深く、幾百の避難民が息を潜めて身を寄せ合う地下シェルター。
分厚い耐圧鋼鉄扉の前に立つと、重装甲兵は無感情に腰から大型破砕手榴弾を取り出した。
ピンを引き抜き、扉の隙間へと深々と押し込む。
直後――ドォォォォォォォンッ!!
地底全体を揺らす凄まじい大爆発!
猛烈な爆風と黒煙が地下通路を怒涛のごとく駆け抜けた。
『きゃあぁぁぁぁっ!!』『助けて! 誰か助けてぇ!!』
歪んで吹き飛んだ耐圧扉の奥から、パニックに陥った避難民たちが次々と這い出してくる。
恐怖に泣き叫ぶ幼子、泥と血に塗れた母親、身を寄せ合って震える老人たち。
その退路を塞ぐように、異星の重装甲兵たちが無慈悲に立ちはだかった。
「生体スキャン完了。作業可能個体、拘束フェーズへ移行」
合成音声のような無機質な声が響く。
若者や体格のいい市民は黒い磁力拘束具を嵌められ、逃げる間もなく奴隷のように列へ繋がれていく。
そして――拘束を拒んで立ちはだかった老人は、装甲の重い鉄足で無造作に踏み潰された。
「やめろぉぉぉぁぁぁッ!!」
八洲軍の歩兵部隊が物陰から飛び出した!
「撃てぇぇぇっ! 市民を守るんだ!」
小銃の連続射撃! 旧式機関銃の咆哮!
だが――鉛の弾丸が重装甲兵の装甲に当たるたび、カンカンと虚しい高金属音を立てて弾き返されるだけだった。
かすり傷ひとつ、凹みひとつ付きはしない。
重装甲兵はゆっくりと重機関砲の極太の砲口を八洲軍歩兵たちへ向けた。
ズバババババババババッ!!
大口径実体弾の豪雨が遮蔽物ごと兵士たちを薙ぎ払う!
砕け散るコンクリート、吹き飛ぶ兵士たちの肉体、血で真っ赤に染まるアスファルト。
「そんな……嘘だろ……」
八洲軍の将校は膝から崩れ落ち、瓦礫を拳で叩いた。
「俺たちの武器じゃ……奴らを止めることすらできないのか……っ!」
完璧な絶望が、戦場全体を覆い尽くした――その瞬間だった。
「どけぇぇぇぇぇぇぇッ!!」
爆煙を突き破り、蒼い閃光が凄まじい重音とともに躍り出た!
八洲の青き巨神――ムラサメ!
背部ブースターを限界まで全開させ、地表を削りながら一直線に敵重装甲兵の群れへ突撃する!
右腕の積層からくり大盾が開放展開!
重ね合わされた鋼鉄板へ、敵の重機関砲弾が雨のように打ちつけられ、激しい火花の華が乱れ飛ぶ!
それでもムラサメは一歩も引かない! 火花と歪む鋼鉄の悲鳴を撒き散らしながら、一直線に敵陣を踏み破っていく!
コックピットで操縦桿を激しく握り締める銀太の眼に、猛烈な義憤の炎が吹き荒れる!
「人を……八洲の人間を……道具みたいに扱いやがってぇぇぇッ!!」
背から引き抜いた実体大刀が、蒼い光を放ちながら一閃構えにセットされる!
内部の歯車群が「ギギギギギギッ!」と狂狂した咆哮を上げる!
「お前たちのその汚い装甲ごと……みじんでも残さず叩き斬るッ!!」
絶望の地底シェルターの前で、青き甲冑は怒涛の勢いを乗せて、群がる敵重装甲兵の頭上へ斬りかかった!




