Administrative Stargazing ―措置観測―
※あとがきに、執行停止申立書の準備稿を載せています。
読まなくても本編には影響ありません。
いつも通り、雰囲気でお願いします。
……私なりのジョークなので、笑ってやってください。
役割を決めてから、四十分が過ぎた。
星空サロンは、先ほどより散らかっていた。
机も。
椅子も。
カウンターの奥に並んだカップも、変わらない。
増えたのは、人ではなかった。
記録だった。
【登録領域別・移動条件】
【倉庫・工房接続記録】
【市場同期・反映時刻】
【定点観測ログ】
【利用可能な代替経路】
一つの記録を置くために、別の記録をずらす。
ずらした先にも、すでに何かが置かれている。
「そこ、工房の記録です!」
「倉庫との接続があるなら、こっちでござるよ」
「観測時刻が分かるものは、消さずに残してください」
「カップを記録板の上に置かないでくださいね」
声が飛ぶ。
返事が返る。
誰かが間違える。
別の誰かが、笑いながら直す。
騒がしい。
けれど。
何をしてよいのか分からなかった声は、もう少なかった。
クロセの前にも、整理された記録が届いていた。
移動できる者。
条件があれば動ける者。
移動先では活動を続けられない者。
止まる経路。
残せる経路。
表示された時刻と、実際に変化が見えた時刻。
全部を読む必要はない。
少なくとも。
今は。
どこに線が集まっているのか。
何を動かせば、何が切れるのか。
そこだけを見る。
「集まってきたな」
グレンが、新しい記録板を置いた。
「はい」
「で、お前は何してる?」
クロセの手元には、集められた記録とは別に、二つの文書が開いていた。
一つは、世界律。
もう一つは。
「現実の法律です」
「何でそっちが出てくる」
「この世界律と、よく似ています」
権限を与える。
使う条件を定める。
不利益を受ける者へ、外から争う道を残す。
名前は違う。
仕組みも、まったく同じではない。
それでも。
骨格は、よく似ていた。
偶然にしては。
ただ、考えれば、別の問いが増える。
「……まあ、今はいいです」
「何がだ?」
「似ているなら、判例の物差しが使えます」
クロセは、現実の判例から拾った項目を並べた。
【判断要素】
具体的な不利益
後から回復できるか
代替手段を実際に利用できるか
措置の対象と範囲
より軽い手段の有無
措置を止めた場合の全体への影響
「レクスも、同じところを見るのか?」
「分かりません」
「分からねえのかよ」
「同じなら、先を読めます」
「違ったら?」
「この世界の物差しが分かります」
グレンが、並んだ項目を見る。
「どっちでも使う気だな」
「使えるものは使います」
「顔に似合わず、たくましいでござるな」
シグレが言った。
「それ、使い方が違います」
「顔に似合わず、という部分でござるか?」
「全部です」
近くで記録を整理していた誰かが吹き出した。
短い笑いだった。
その直後。
星空サロンの中央を、金色の光が走った。
声が止まる。
記録板を動かしていた指が止まる。
クロセの前に、新しい通知が開いた。
【第一段階追加措置】
【判断理由】
任意協力、表示軽量化、処理分離その他の負荷軽減措置を実施したものの、登録処理系統の負荷低下が所定の基準値に達しなかったため。
【対象】
負荷基準を超過した指定登録領域
指定された高負荷操作
指定された低優先同期処理
対象登録領域における一部機能
【措置】
一 混雑登録領域への新規登録を制限する
二 指定された高負荷操作を強制待機列へ投入する
三 指定された低優先同期処理を強制延期する
四 対象登録領域における一部機能を制限する
【期間】
発動から八時間
【見直し】
三十分ごとに実施
【解除条件】
登録処理系統の負荷が指定基準を下回り、かつ全体同期予測が安定した場合
【延長】
新たな判断理由の提示及び確認を要する
【記録】
対象、理由、期間、影響及び代替手段を保存する
【外部確認】
黒環書庫への確認申立てを妨げない
【発動まで】
五十九分五十八秒
任意ではない。
お願いでも。
協力でもない。
対象がある。
範囲がある。
期間がある。
判断理由も。
「来たな」
グレンの口元が上がった。
楽しそうだった。
追加措置が出たことを喜んでいるわけではない。
たぶん。
「何でちょっと嬉しそうなんですか」
シオンが聞いた。
「相手が動けば、こっちも動けるだろ」
「戦闘開始の合図ではありません」
「似たようなもんだ」
「まったく違うでござるよ」
「お前はさっきから俺に乗ってただろ」
「分かりやすく翻訳していただけでござる」
「都合よく戻るな」
笑いが起きた。
けれど。
クロセは、通知から目を離さなかった。
新規登録制限。
強制待機列。
同期延期。
一部機能制限。
八時間。
三十分ごとの見直し。
解除条件。
世界律に書かれた順番は、守られている。
少なくとも。
通知の上では。
「止められるか?」
グレンが聞いた。
「確認します」
「今から?」
「何を止めるのかが、ようやく示されました」
クロセは、届いた記録を通知へ重ねる。
指定された登録領域。
対象となる処理。
その処理を日常的に使う者。
実際に利用できる代替手段。
「全部止めるのか?」
「いいえ」
「なら、どれだ」
「発動後の影響を見て、止める範囲を決めます」
グレンが、通知とクロセを交互に見た。
「発動させるのか?」
「この措置に、仮の差止めは使いません」
「何でだ」
「登録拠点そのものが失われる措置ではありません。期間も限られ、見直しもあります」
発動前に予測できることはある。
けれど。
どの処理に。
どれだけの遅れが生じ。
代替手段が本当に使えるのか。
それは、まだ分からない。
「発動したあと、実際に生じた影響を記録します」
「それから止める?」
「はい。残っている措置の執行停止を求めます」
「執行停止?」
「すでに始まった措置を、途中で止める方法です」
「八時間なら、途中でも間に合う」
「四時間ほど観測します」
「半分待つのか」
「一時的な混乱なのか。代わりの方法が使えるのか。三十分ごとの見直しが機能したのか。それを確認します」
「四時間後も続いてたら?」
「措置そのものによる不利益として、残りを止めに行きます」
グレンは、しばらく通知を見た。
「なるほど」
短く言った。
理解できたらしい。
「今回は、殴られてから殴り返す」
「違います」
「始まってから止める」
「それでお願いします」
「ほぼ同じじゃねえか」
「かなり違います」
「クロセ殿も、グレン殿に合わせることを覚えたでござるな」
「届く言葉を選んだだけです」
「俺向けに簡単にしたってことか?」
「そこまでは言っていません」
「否定もしねえな」
シグレが肩を揺らした。
先ほどまで通知を見つめていた者も。
少しだけ、息を吐いた。
「でも」
グレンは、世界律の別の欄を開いた。
【例外措置】
既存登録拠点の強制移転は、全体同期の断絶が切迫し、他の措置では回避できない場合に限り、個別審査を経て実施することがあります。
「こっちは、始まってからじゃ遅いんだろ」
「はい」
集められた記録の多くは、そこへ伸びていた。
拠点と倉庫。
拠点と工房。
市場。
取引。
そこへ集まった人。
拠点だけを元へ戻しても。
同じ形には戻らないものがある。
「本命は、強制移転です」
「仮の差止めで、出る前に止める」
「そうです」
「第一段階は、始まってから止める。本命は、始まる前に止める」
「はい」
グレンが、両手を机へ置いた。
「二段構えだな」
「そうなります」
「先に一発入れて、レクスがどこを見るか確認する」
「ですが第一段階の措置も、本気で止めにいきます」
「分かってる」
グレンは、判例から抜き出された項目を見た。
「勝てば、第一段階が止まる。止まらなくても、レクスが何を重く見たかは残る」
「裁定理由として」
「そいつを、本命に使う」
「はい」
「一回戦って、相手の癖を見る」
「判断基準を確認します」
「その基準に合わせて、本命を組み直す」
「必要な事実を整理します」
「やっぱり同じだろ」
クロセは答えなかった。
違う。
少なくとも。
クロセの中では。
けれど、今は言葉を重ねるより。
次に何を見るかを決めた方がよかった。
机の上には。
強制措置の通知がある。
発動までの数字も。
今も減っている。
「それと」
クロセは、例外措置を示した。
「強制移転が出ないなら、それが一番です」
「なんだ、準備が無駄になるぞ」
「なりません」
「何でだ」
「抑止力です」
短い言葉だった。
グレンの指が止まる。
「第一段階措置を、実際に黒環書庫へ持ち込めば、運営にも分かります」
「強制移転を出せば、多分次も来る、か」
「はい」
「なら、出す前に考える」
「通常なら」
「出さなければ?」
「それで終わりです」
争うことが目的ではない。
強制移転が行われないなら。
止めに行く必要もない。
「止めに行く準備そのものが、止める力になる」
「そうです」
グレンは少し黙った。
それから。
口元を上げた。
「いいな」
声が大きかった。
「よし。一発入れるぞ!」
「まだ発動していません」
「発動してから一発入れるぞ!」
「四時間観測してからです」
「四時間観測してから、一発入れるぞ!」
「条件を増やしても、勢いは落ちないのでござるな」
「落とす理由がねえ」
グレンは、サロンを振り返った。
「発動前の記録を取るぞ! 対象領域、倉庫、工房、市場。今の状態を残せ!」
声が返る。
「工房組、動きます!」
「市場の通常記録を取ってきます!」
「倉庫の更新時刻も必要ですよね?」
「必要です。表示された時刻と、実際に反映された時刻を分けてください」
シオンの前に、新しい記録表が開いた。
「同じ場所を観測する者は、時刻を合わせます。重複しても消さないでください」
「代替経路も確認するでござるよ」
シグレが、机の上の線を引き直す。
「あると表示されているだけでは足りぬ。実際に通れるか、発動前に一度使っておくでござる」
「話を聞く人は、こちらへお願いします」
リラの声に、何人かが手を上げた。
「発動前と発動後で、何が変わったのか。いつもの状態も教えてください」
「売上記録でもいいですか?」
「はい。いつもと違うと分かるものなら、持ってきてください」
「よし、やるぞ!」
「だから、一度に動かないでください」
クロセが言った。
「分かってる。担当を決めてからやるぞ!」
「勢いの使い方を覚えたでござるな」
「最初から知ってる」
「先ほど、止められていた気がしますが」
「細けえな」
誰かが吹き出した。
笑いながら。
手は、もう動いていた。
机の上で、記録が分かれていく。
発動前の状態。
対象となる処理。
使える代替経路。
比較する時刻。
何を見ればよいのか。
誰に聞けばよいのか。
先ほどよりも、はっきりしていた。
「それで」
グレンが、通知を指した。
「誰で行く?」
クロセは、新しい記録板を開いた。
【申立人候補】
対象処理を日常的に利用していること
短時間の制限でも、不利益を吸収しにくいこと
発動前後の記録を残せること
不利な見通しを含め、本人が理解して判断できること
「大きな商会では駄目か?」
「在庫と人員で、影響を吸収できる可能性があります」
「なら、小さな店」
「はい」
「補充や市場同期が止まれば、そのまま商売に響く」
「その前後を記録できる人です」
「それと」
グレンが言った。
「負けるかもしれねえと聞いても、自分で決められる奴」
「はい。大事です」
「なら、一度くらい、こういう戦いを知ってる方がいいな」
「経験は必須ではありません」
「でも、話は早い」
「否定はしません」
グレンが、シグレを見る。
シグレも。
同じ顔をしていた。
「いるな」
「いるでござるな」
「誰ですか」
二人は答えなかった。
なぜか。
少し楽しそうだった。
「小さな店を、ここまで守ってきた」
グレンが言った。
「一度、黒環書庫にも訴えているでござる」
シグレが続ける。
「今も、別の手続で戦ってる」
「それに」
グレンは、にやりと笑った。
「腹も座ってる」
クロセは、その人物を知らなかった。
それでも。
二人が同時に思い浮かべたなら。
軽い気持ちで挙げた名前ではないことだけは分かった。
【世界標準時】
二十二時〇一分
【第一段階追加措置】
【発動まで】
三十九分〇〇秒
「クロセ。面貸しな」
「名前は?」
「ミナトっていう」
執行停止申立書 【準備稿】
――第一段階追加措置・一部執行停止申立て――
黒環書庫 御中
【世界標準時】
【 年 月 日 時 分】
当事者
申立人
氏名:ミナト
登録領域:【 】
登録拠点:【 】
職業・活動内容:初心者向け物品販売店の運営
店舗名:【 】
連絡先:【 】
相手方
世界運営管理部門
代表者:【 】
本案事件
第一段階追加措置取消請求事件
事件番号:【 】
※本案訴状は、【本申立書と同時に提出する/世界標準時 時 分に提出済み】
申立ての趣旨
一 相手方が世界標準時【 時 分】に発動した第一段階追加措置のうち、申立人の店舗に関係する次の措置について、その執行を、本案事件の第一審判決言渡しまで停止する。
1 【対象処理名 】を強制待機列へ投入する部分
2 【対象処理名 】を強制延期する部分
3 【対象機能名 】の利用を制限する部分
4 前各項の措置に伴い、申立人の店舗における【補充/在庫反映/市場表示/取引成立/その他 】を制限する部分
二 申立費用は、相手方の負担とする。
との決定を求める。
申立ての理由
第一 事案の概要
一 第一段階追加措置の布告
相手方は、世界標準時二十一時四十分、登録処理系統の負荷低下が所定の基準値に達しなかったことを理由として、第一段階追加措置を布告した。
布告された措置は、次のとおりである。
1 混雑登録領域への新規登録制限
2 指定された高負荷操作の強制待機列投入
3 指定された低優先同期処理の強制延期
4 対象登録領域における一部機能制限
措置の期間は、発動から八時間とされた。
また、三十分ごとに見直しを行い、登録処理系統の負荷が指定基準を下回り、かつ全体同期予測が安定した場合には、期間満了前でも解除するとされた。
本件措置の発動時刻は、世界標準時二十二時四十分である。
二 申立人の活動
申立人は、登録領域【 】において、初心者向け物品を扱う小規模店舗を運営している。
申立人の店舗は、大規模商会のように大量の在庫を常時保有する方式ではなく、少量の商品を短い間隔で補充し、市場表示及び取引状況に応じて在庫を回転させる方式を採っている。
通常時における店舗の運営状況は、次のとおりである。
一回当たりの平均補充数:【 】
通常の補充間隔:【 】
一時間当たりの平均取引件数:【 】
主な取引時間帯:【 】
通常時の市場反映時間:【 】
店舗在庫で吸収できる時間:【 】
主な利用者層:【 】
代替仕入先又は代替倉庫:【有・無/内容 】
これらの詳細は、申立人本人の陳述及び発動前の取引記録によって補充する。
三 申立人に適用された措置
本件措置の発動後、申立人の店舗に関係する次の処理が対象となった。
対象処理措置内容通常時発動後
【補充処理】【強制待機列/延期】【 分 秒】【 分 秒】
【倉庫更新】【 】【 分 秒】【 分 秒】
【市場同期】【 】【 分 秒】【 分 秒】
【取引反映】【 】【 分 秒】【 分 秒】
【その他】【 】【 】【 】
発動後、申立人には、現時点までに次の影響が生じている。
1 補充処理の遅延
2 倉庫上の在庫と市場表示上の在庫との不一致
3 市場への商品反映の遅延
4 取引機会の喪失
5 【 】
6 【 】
具体的な件数及び発生時刻は、発動後観測記録をもって補充する。
第二 重大な損害を避けるため、緊急の必要があること
一 失われた取引は、後から処理しても回復しない
本件措置によって遅延した補充処理や市場同期は、措置終了後に処理を完了させること自体は可能である。
しかし、申立人が販売機会を失うのは、処理そのものではない。
特定の時刻に商品を必要としていた利用者との取引である。
利用者が別の店舗で商品を購入し、又は購入を断念した後に市場表示が回復しても、失われた取引が同じ形で成立することはない。
世界標準時【 時 分】から【 時 分】までに、申立人の店舗では、少なくとも次の取引上の影響が確認されている。
成立しなかった取引:【 件】
商品不足により中断した取引:【 件】
市場表示の遅延により確認できなかった商品:【 件】
利用者からの再照会:【 件】
推定損失額:【 】
その他:【 】
したがって、本件措置による損害は、単なる処理時刻の後退ではなく、後から同じ状態へ戻すことが困難な取引機会の喪失である。
二 小規模店舗であるため、損害を吸収できない
申立人の店舗は、少量かつ頻繁な補充によって営業を維持している。
大量の在庫、人員又は複数の代替倉庫を有する大規模商会とは異なり、数時間の処理遅延を内部在庫によって吸収することができない。
申立人の通常在庫は、平均して【 時間 分】分の販売に対応する量にとどまる。
本件措置の発動後【 時間 分】の時点で、次の商品が欠品し、又は欠品が見込まれている。
【商品名 /欠品時刻 】
【商品名 /欠品時刻 】
【商品名 /欠品時刻 】
申立人にとって、処理遅延は単なる不便ではなく、店舗の営業を直接停止又は縮小させるものである。
三 八時間の措置期間中、損害が継続して拡大する
本件措置の期間は八時間である。
申立人らは、発動直後の一時的な混乱と、本件措置そのものによる継続的な影響を区別するため、発動後約四時間にわたり観測を行った。
その間、世界標準時【 時 分】、【 時 分】、【 時 分】及び【 時 分】に見直しが行われたが、申立人に関係する措置は解除されなかった。
また、各見直し後の状況は、次のとおりである。
見直し時刻措置の変更申立人への影響
【 時 分】【継続/変更あり】【 】
【 時 分】【継続/変更あり】【 】
【 時 分】【継続/変更あり】【 】
【 時 分】【継続/変更あり】【 】
このまま措置が継続すれば、残り約【 時間】にわたり、取引機会の喪失及び営業上の不利益が拡大する。
本案判決を待っていては、本件措置はすでに終了し、失われた取引を回復できない。
したがって、重大な損害を避けるため、現時点で残る措置を停止する緊急の必要がある。
第三 代替手段が実際には機能していないこと
相手方は、本件措置に伴い、【代替経路/別倉庫/手動補充/別市場/別時間帯での処理】を利用できるとしている。
しかし、申立人が実際に利用を試みた結果は、次のとおりである。
代替手段試行時刻結果利用できなかった理由
【 】【 時 分】【成功/失敗】【 】
【 】【 時 分】【成功/失敗】【 】
【 】【 時 分】【成功/失敗】【 】
【代替手段名】は、表示上は利用可能とされていた。
しかし、【倉庫との接続がない/反映に同程度の遅延がある/必要な商品を扱えない/利用条件を満たせない/追加費用が生じる/既存利用者へ表示されない】ため、申立人の営業を継続する現実的な代替手段とはならなかった。
代替手段は、存在することだけでは足りない。
申立人が、必要な時刻に、必要な取引について、実際に利用できなければならない。
本件では、その条件を満たしていない。
第四 本案について理由がないとはいえないこと
一 本件措置には裁量判断が含まれること
相手方には、全体同期を維持するため、登録処理系統の負荷に応じて一定の措置を選択する裁量が認められる。
しかし、その裁量は無制限ではない。
世界律は、追加措置を行う場合に、
対象
範囲
期間
解除条件
判断理由
を示すことを求めている。
また、任意協力及びより軽い負荷軽減手段を先に用い、追加措置を段階的に実施する構造を採っている。
したがって、相手方は、個々の処理及び利用者に生じる不利益を考慮し、目的達成に必要な範囲を超えない措置を選択しなければならない。
二 申立人の事情を区別しない一律の措置であること
本件措置は、処理件数又は負荷区分に基づいて対象を指定している。
しかし、同じ処理を利用する者であっても、処理の延期を吸収できる者と、短時間の延期によって営業継続が困難になる者とがいる。
申立人の店舗は、少量在庫と短い補充周期を前提としており、大規模商会と同じ時間の延期を課された場合でも、その影響は著しく異なる。
それにもかかわらず、相手方が、
店舗規模
保有在庫
補充周期
代替経路の利用可能性
取引時間帯
措置終了後の回復可能性
を考慮せず、一律に措置を継続したのであれば、その判断過程には重要な事情の考慮不足がある。
三 より軽い手段を選択できる可能性があること
申立人に関しては、少なくとも次のより軽い手段が考えられる。
1 申立人の通常補充量の範囲内で優先処理を認める
2 初心者向け物品の補充処理を別の待機列へ分離する
3 市場表示のみを軽量化し、在庫更新自体は維持する
4 処理回数を制限しつつ、完全な延期を避ける
5 【 】
6 【 】
これらの手段によって全体同期への負荷を抑えつつ、申立人の営業上の不利益を軽減できる可能性がある。
相手方がこれらを検討していない場合、又は検討したにもかかわらず理由を示していない場合、本件措置のうち申立人に適用される部分には、必要な範囲を超えた裁量判断がある。
以上から、本案について理由がないとみえる事案ではない。
第五 本件申立てを認めても、全体同期に重大な影響を及ぼさないこと
申立人は、第一段階追加措置の全部の停止を求めるものではない。
また、新規登録制限その他、申立人の店舗と直接関係しない措置の停止も求めていない。
本申立てが対象とするのは、申立人の店舗運営に直接関係する【補充処理/倉庫更新/市場同期/その他 】のうち、必要最小限の部分である。
申立人の通常時の処理量は、次のとおりである。
一時間当たりの補充処理:【 件】
一時間当たりの倉庫更新:【 件】
一時間当たりの市場同期:【 件】
指定登録領域全体に占める割合:【 %】
申立人の処理量は、対象登録領域全体に占める割合として限定的である。
さらに、申立人は、次の条件を受け入れる用意がある。
一時間当たりの補充回数を【 回】以下とする
一回当たりの補充量を【 個】以下とする
高負荷時間帯【 】を避ける
軽量表示を利用する
必要に応じて処理状況を記録し、相手方へ提供する
【 】
したがって、申立人に関係する限定された処理のみを停止対象から外し、又は優先的に処理しても、全体同期の維持に重大な影響を及ぼすおそれはない。
仮に完全な停止が困難であるとしても、少なくとも、処理回数又は処理量を限定した部分的な執行停止が可能である。
第六 結論
本件措置は、全体同期を維持するために実施されたものであり、その目的自体を否定するものではない。
しかし、その目的が正当であることと、申立人に生じる不利益を区別せず、八時間にわたって措置を継続できることとは同じではない。
申立人には、すでに【 】という具体的な不利益が生じている。
その不利益は、措置終了後に処理を完了させるだけでは回復できず、残りの措置時間中も拡大する。
一方、申立人が求める停止範囲は限定され、条件を付すことによって全体同期への影響をさらに抑えることができる。
よって、重大な損害を避けるため緊急の必要があり、かつ、本案について理由がないとはいえず、全体への重大な影響も生じないことから、申立ての趣旨記載のとおり、本件措置の一部について執行停止を求める。
以上
疎明資料目録(準備稿)
番号資料名疎明しようとする事実状態
甲第一号証第一段階追加措置布告措置の理由、対象、内容、期間、見直し及び解除条件取得済み
甲第二号証世界律・追加措置規定措置の発動要件及び段階的実施の構造取得済み
甲第三号証世界律・外部確認規定黒環書庫への一時停止申立てが認められていること取得済み
甲第四号証申立人店舗概要店舗規模、取扱商品、営業形態【聴取後作成】
甲第五号証発動前取引記録通常時の取引件数、補充周期及び市場反映時間【取得待ち】
甲第六号証発動前在庫記録通常在庫及び措置を吸収できる時間【取得待ち】
甲第七号証発動後処理ログ待機時間、延期及び反映遅延【観測中】
甲第八号証不成立取引一覧措置によって失われた取引機会【観測中】
甲第九号証代替手段利用記録表示された代替手段が実際には機能しなかったこと【試行予定】
甲第十号証三十分ごとの見直し記録見直し後も不利益が継続したこと【取得予定】
甲第十一号証ミナト陳述書店舗の構造、措置の影響及び回復困難性【聴取後作成】
甲第十二号証対象領域全体との処理量比較限定的な停止では全体への影響が小さいこと【シオン観測】
甲第十三号証代替経路・処理分離案より軽い手段が存在すること【シグレ整理】
甲第十四号証対象者・活動条件記録小規模店舗に生じる影響の特殊性【グレン収集】
クロセの未記入欄
ミナトから聞く必要があるのは、実質的には次の五点。
店が普段どう回っているか
何時間止まると、どの商品から欠けるか
実際に何件の取引を失ったか
代替手段を試して、なぜ使えなかったか




