衆声定位ーThe Place of Every Voiceー
アルティスです。
今回、かなり真面目に行政事件訴訟をぶち込んであります。
そのため、少し分かりづらい内容になっています。そこで、先にお伝えしておきます。
超雑な例えですが、やっていることは、
「互いの手札を全部公開して、勝敗を決するカードバトル」の対戦準備回です。
レクスが審判で、主人公はなぜかその試合に巻き込まれて、運営側のカードを説明している人――くらいのイメージで読んでいただければ幸いです。
レクスの周りに、白いログが浮かんだ。
どれも見覚えがあるものばかりだ。
「提出したログです」
視線を送るより早く、アイが答える。
一瞬だけ目が合った。
――不足はありません。
そう伝えるように、アイはすぐ視線をログへ戻した。
レクスは手を伸ばさなかった。
代わりに、黒い卓の中央へ指先を置く。
それだけで、白いログが端から淡い光へほどけ、文字が崩れていく。
次の瞬間、何枚もの黒い札となって卓上へ広がった。
第漆転送門。
入口流入制限。
優先導線設定。
行先制限。
一時封鎖。
退避導線。
代替経路。
解除条件。
民間観測ログ。
俺たちが提出した記録は、一枚も伏せられていなかった。
いつ作られたのか。
誰が作ったのか。
どの処理と接続しているのか。
すべてが、最初から表を向いている。
「隠さないんだな」
「隠す理由がない」
「裁判って、もう少しこう、相手の手札を読みながら進めるものじゃないのか。異議あり! みたいな」
「あれは分かりやすくするため。基本的に不意打ちは禁止」
「禁止なのか」
「ここは正々堂々だけ」
「聞かなきゃよかった」
隠し札はない。
けれど、その方が楽なのかは分からなかった。
全部見えているからこそ、知らなかったとは言えない。
レクスは札の一枚へ指を置いた。
黒い札が滑り、卓の端へ移動する。
そこで止まった。
ほかの札とは、まだつながらない。
「今日は、全部は並べない」
「もう並んでるだろ」
「置いてあるだけ」
「違いが分からない」
「まだ、対立させていない」
卓上には、すべての札が見えている。
それでも、札同士の位置には、まだ意味がなかった。
どの主張に使われるのか。
何と何がぶつかるのか。
どこまでが前提で、どこからが争いになるのか。
それが、まだ決められていない。
レクスが、卓の左端へ視線を向けた。
そこには一枚だけ、ほかの札から離して置かれたものがある。
【ミナト】
「この子の札は直接は使わない」
「ミナトの件か」
「今回は、こっちがメインだから」
レクスの指が動く。
青い縁取りのある札が、卓の中央へ滑り出した。
【本件紛争】
申立側:運輸ギルド《青車輪》
相手方:《蒼白の観測者》
「内容は、前に読んだ」
「当たり前」
「そこで終わらせるなよ」
「本当に当たり前。そんな軽い話じゃない。多くの人が困っている」
俺はなにも言えなかった。
レクスは中央の札を軽く押さえた。
「ここでは、争う形をきちんと整理していく」
その指先から細い光が伸び、卓の向こう側へ走った。
そこには、青い札がいくつか固めて置かれている。
輸送契約。
到着予定時刻。
予測情報。
経路変更。
損失記録。
札と札の間は、すでに光の線で結ばれ、ひとつの流れを作っていた。
青車輪が、何を前提に輸送を決め、どの情報を利用し、その結果として何が生じたと主張しているのか。
細かい内容までは分からなくても、盤面を見れば大まかな形は読み取れた。
向こうは、もう形になっている。
「青車輪側は、もう終わってるのか」
「主張と、使う札の位置は確認済み」
「残るのが、蒼白の観測者側か」
「最終確認」
レクスの視線が、卓上に広がった運営記録へ移る。
入口流入制限。
経路変更。
退避導線。
解除条件。
どれも、俺たちが提出した記録だった。
「俺たちは、参考人みたいなものか?」
「もっと重い」
即答だった。
黒い札が一枚、中央へ滑る。
【第漆転送門・入口流入制限】
「蒼白の観測者が、あなたたちの処理の適法性の問題を、自分たちの主張の前提に置こうとしている」
「処理そのものが争われてるのか」
「そう。ただし、世界律を否定しているわけではない」
レクスは、卓の向こう側へ目を向けた。
「流入を制限できることも、緊急時に経路を変更できることも争っていない」
もう一枚の札が、入口流入制限の隣へ移る。
【退避導線】
「問題にしているのは、この処理で十分な退避先が確保されていたか」
続いて、別の札が滑った。
【代替経路】
「利用できる別の経路を、適切に確認していたか」
最後に、二枚の札が重なるように並ぶ。
【制限範囲】
【解除条件】
「必要以上の範囲を止めていなかったか。解除できる状態になったあとも、制限を続けていなかったか」
「世界律じゃなくて、実際の使い方か」
「この場で問題になっているのは、そこ」
レクスは、入口流入制限の札を二つの陣の間へ置いた。
青車輪側ではない。
蒼白の観測者側でもない。
本件紛争の中央だった。
「この処理をどう評価するか。それが決まらなければ、蒼白の観測者側の札も確定できない」
蒼白の観測者側の主張に運営記録が使われるからといって、運営の札まで向こう側になるわけではないらしい。
まず、中央に置かれる。
俺たちが何をしたのか。
その処理が、定められた条件と範囲に沿っていたのか。
そこを固めてから、初めて本件紛争のどこへ接続するのかが決まる。
札が一枚動くたび、曖昧だった場所が狭くなっていく。
俺は、卓の端に残された札へ目を向けた。
【ミナト】
隣を見る。
アイも同じ札を見ていた。
目が合ったが、アイはなにも出さなかった。
今は、追加の記録を求められていない。
俺も小さく視線を戻す。
「それも、こっちに関係するのか」
「可能性はある。だからここにある」
「本人は、かなり困っていると思うが」
レクスの視線が、ミナトの札から俺へ移った。
「そうかもしれない」
一度だけ間を置く。
「でも、あなたはそれを言ってはいけない」
「俺が?」
「入口を通さなかったことと、あなたたちに責任がないかは別」
「入口で落としたのは、レクスだろ」
「そう」
原告適格がない。
ミナトの申出を正式な訴えとして通さなかったのは、レクスの判断だ。
俺は、その結果を伝えられただけだった。
「なら、俺がそれを言っちゃいけない理由は何だよ」
「入口を通さなかったのが私でも、その前に何が起きたかは別だから」
レクスの指先が、ミナトの札へ触れる。
札は動かなかった。
中央にも来ない。
ただ、そこに残っている。
「訴える資格がなかった。それだけで、そこまでの運営処理が正しかったことにはならない」
入口を通れなかった。
それは、その前に起きたことまで消えるという意味ではない。
「……分けて考えろってことか」
「最初から、そう言っている」
レクスはミナトの札から指を離した。
「混ぜると、正しく争えない」
そのとき、書庫の奥から足音が聞こえた。
ひとつではない。
黒い床を踏む音が、ゆっくり近づいてくる。
先頭にいたのは、赤い髪の男だった。
黒と赤の装備。
大きな体を隠す気もなく、こちらへまっすぐ歩いてくる。
グレンは俺の姿を認めると、口元を吊り上げた。
「よう、黒服のあんちゃん」
にやりと笑う。
「やっと出てきたな」
「やっぱりお前が絡んでたか。何でここにいる」
「呼ばれたんだよ」
「誰に」
グレンは親指で黒い卓の向こうを示した。
「こいつに」
「こいつではない」
レクスの声に、グレンの親指が止まる。
「……裁判官殿に」
「軽い」
「そこも判定されるのかよ」
グレンの後ろから、灰色の長衣を着た男が姿を見せた。
腰には工具と小瓶。
シグレは眼鏡の位置を直し、卓上に並んだ札へ目を落とす。
「相変わらず、怒られるのが早いでござるな」
「まだ怒られてねえよ」
「では、注意を受けるのが早いでござる」
「言い直しても同じだろ」
「正確になったでござる」
「そういう問題じゃねえ」
そのさらに後ろに、青い髪の女が立っていた。
初めて見る顔だった。
短い青髪。
動きやすそうな軽装。
腰には短剣と、細かな道具を収めたらしい小袋。
あれが、シオンだろう。
グレンたちのやり取りへ口を挟むこともなく、中央に置かれた運営処理の札を見つめている。
やがてこちらへ視線を移し、小さく頭を下げた。
「《蒼白の観測者》のシオンです。確認に来ていただき、ありがとうございます」
「そっちのためだけに来たわけじゃないぞ」
「承知しています」
返事に迷いはなかった。
「私たちの主張に、運営処理をどこまで前提として置けるか。その確認だと聞いています」
「話が早いな」
「先に説明を受けていますので」
シオンは、中央に並んだ札へ視線を戻した。
「確認したいのは、記録に導線があるかではありません」
その目が、【退避導線】の札で止まる。
「制限が行われた時点で、実際に使える状態だったのか」
続いて、【代替経路】。
「大型輸送隊が、実際に通行できる状態だったのか」
グレンが腕を組んだまま、こちらを見る。
「書いてあったから使えた、じゃ困るんだよ」
「用意していたかじゃなく、そのとき本当に使えたかを見るのか」
「正確には、その点をどこまで本件の争点として置くかを確認する」
レクスが言った。
「蒼白の観測者が問題を示した。どこまで本件の盤面に残すかを決めるのは、ここ」
乾いた音が、黒環書庫へ響いた。
レクスが、指先で卓を一度だけ叩いていた。
それまで交わされていた軽口が、その音で切れた。
「始める前に、確認する」
赤い瞳が、グレンたちを順番に見る。
「ここでは、提出していない札は使えない。相手が確認できない形で、新しい主張も出せない」
「不意打ち禁止、正面勝負、だろ」
グレンが口元を歪めた。
「そう。分かっているなら、続ける」
「へいへい」
「言い方に気を付けて。ここは私の書庫」
グレンが口を閉じる。
シグレが小声でつぶやいた。
「ここは雰囲気どおり、言葉の扱いが重いでござるな」
「お前も黙れ」
「承知したでござる」
ござるは残ったが、レクスはそれ以上相手をしなかった。
指先が、卓上をゆっくりと進む。
【第漆転送門・入口流入制限】
【退避導線】
【代替経路】
【制限範囲】
【解除条件】
五枚の札が、一枚ずつ中央へ集まる。
縦一列に並んだところで、動きが止まった。
右には、まだ位置の決まっていない蒼白の観測者側の札。
左には、すでに位置を確定した青車輪側の札。
その間に、俺たちが行った処理が並んだ。
俺はアイを見ると、視線が重なる。
アイの目が、五枚の札へわずかに落ちた。
必要な記録は、すぐに出せる。
それだけを確認する。
「今日は、蒼白の観測者側の最終確認をする」
レクスは、最初の札へ指を置いた。
「その前提として、この五枚について、あなたたちから聞き取る」
赤い瞳が、俺へ向く。
「この制限を決めたのは?」
「俺だ」
「一人で?」
「最終的に決めたのは俺。アイには、発動条件と影響範囲の確認を頼んだ。記録をまとめたのもアイだ」
俺が小さくうなずくと、それを受けて五枚の札の後ろに細い白い光が立ち上がった。
まだ、記録の中身は開かない。
必要になれば、すぐ展開できる。
「処理条件との照合、影響範囲の確認及び記録作成を担当しました」
レクスは、俺から視線を外さなかった。
中央に置かれた五枚の札。
その最初の一枚だけが、淡い光を帯びる。
ほかの札の光が落ちた。
黒い卓の上で、入口流入制限だけが光を残した。
「では、次はそこから聞く」
赤い瞳が、まっすぐ俺を見ていた。
「あなたが、何を確認して決めたのか」
アイの補足メモ
――札を並べる前に、争う場所を決めます
今回、レクスが行っていたのは、すぐに勝敗を決める手続ではありません。
誰が、何を主張しているのか。
その主張を支えるために、どの記録を使うのか。
反対側は、そのうち何を認め、何を争うのか。
それらを先に整理する手続です。
現実の訴訟では、これに近いものとして、民事訴訟法上の争点及び証拠の整理手続があります。
行政事件訴訟についても、行政事件訴訟法に特別な定めがない事項には、原則として民事訴訟の規定が用いられます。
行政事件訴訟法第7条
行政事件訴訟に関し、この法律に定めがない事項については、民事訴訟の例による。
そのため、行政処分の適法性を争う場合であっても、裁判の進行には、民事訴訟法上の準備書面、争点整理、証拠申出などの仕組みが広く関係します。
札が「置いてあるだけ」という意味
本文では、提出された札が最初からすべて表を向いていました。
ただし、表に出ていることと、その札が争点として採用されることは同じではありません。
証拠を提出するときは、単に資料を置くだけではなく、
何を証明するための証拠なのか
どの主張と結び付くのか
その事実が事件の結論に必要なのか
を整理する必要があります。
民事訴訟規則第99条も、証拠の申出について、証明すべき事実と証拠との関係を具体的に明示することを求めています。
したがって、
「もう並んでるだろ」
「置いてあるだけ」
「まだ、対立させていない」
というやり取りは、
資料は提出されているが、どの争点について、どちらの主張を支えるものとして扱うのかは、まだ確定していない
という状態を表しています。
札の位置が決まることは、証拠の価値そのものが決まることではありません。
まず、何を証明するために使われる札なのかが決まり、その後に、内容や信用性が検討されます。
「不意打ち禁止」について
本文では、レクスが、
「提出していない札は使えない。相手が確認できない形で、新しい主張も出せない」
と説明しています。
これは、現実の制度を物語向けに単純化した表現です。
現実の裁判で、新しい主張や証拠を後から出すことが一律に禁止されているわけではありません。
ただし、準備書面は、相手方が反論や準備をするために必要な期間をおいて提出する必要があります。また、準備書面には、主張する事実と、それを証明する証拠との対応を記載することが求められています。民事訴訟規則第79条、第83条などが、この事前準備と相手方への送付を定めています。
さらに、当事者が故意又は重大な過失によって提出を遅らせ、そのために訴訟の完結が遅れる場合には、裁判所がその主張や証拠を却下できることがあります。
これが民事訴訟法第157条の、いわゆる時機に後れた攻撃防御方法の却下です。
つまり、本文の「不意打ち禁止」は、
相手が対応できない段階になってから、隠していた主張や証拠を突然出してはいけない
という訴訟上の要請を、短く翻訳したものです。
正確には、後から出しただけで直ちに使えなくなるわけではありません。
提出が遅れた理由、相手方が反論できるか、審理がどの程度遅れるかなどを踏まえて判断されます。
今回行われているのは争点整理です
レクスは、青車輪側について、
「主張と、使う札の位置は確認済み」
と説明しています。
一方で、蒼白の観測者側については、まだ最終確認が残っています。
この場面は、民事訴訟法第164条以下の準備的口頭弁論や、第168条以下の弁論準備手続に近い構造です。
これらは、当事者の主張と証拠を整理し、その後の証拠調べで何を明らかにする必要があるのかを確定するための手続です。民事訴訟法第165条では、準備的口頭弁論を終える際に、その後の証拠調べによって証明すべき事実を、裁判所と当事者の間で確認することとされています。
したがって、今回のレクスは、まだ、
運営処理が適法だった
運営処理が違法だった
青車輪に損害が生じた
蒼白の観測者の主張が正しい
とは判断していません。
先に、
何が争われているのか
何を証明する必要があるのか
どの記録が、その証明に関係するのか
を確定しようとしています。
世界律ではなく、「実際の使い方」が問題になる理由
蒼白の観測者は、転送門の流入を制限できるという世界律そのものを否定していません。
問題にしているのは、
十分な退避導線があったか
大型輸送隊が使える代替経路だったか
必要以上の範囲を止めていなかったか
解除可能になった後も制限を続けていなかったか
という、個別具体的な運用です。
行政法では、行政機関に一定の権限が与えられていることと、その権限の行使が適法であることは別の問題です。
権限が存在していても、
法律上の要件を満たしていたか
必要な事実を確認していたか
考慮すべき事情を考慮したか
必要な範囲を超えていないか
裁量権を逸脱又は濫用していないか
が問題になることがあります。
特に裁量処分について、行政事件訴訟法第30条は、行政庁の裁量権の範囲を超え、又はその濫用があった場合に、裁判所が処分を取り消すことができると定めています。
今回の五枚の札は、その判断材料を分解したものです。
【入口流入制限】
制限を開始する必要があったか。
【退避導線】
制限を受けた者が安全に移動できる手段があったか。
【代替経路】
形式上存在するだけでなく、対象となる利用者が実際に使用できたか。
【制限範囲】
必要な範囲を超えて広く制限していなかったか。
【解除条件】
制限を継続する必要がなくなった後も、漫然と続けていなかったか。
つまり、レクスが尋ねようとしているのは、
結果的に問題が起きたか
だけではありません。
その時点で、どの情報を確認し、どのような判断過程を経て制限を決めたのか
です。
行政処分の適法性を検討するときには、処分時に存在した事実や、行政庁が判断の基礎とした資料が重要になります。
運営記録を中央に置いた理由
運営側が提出した記録は、蒼白の観測者が利用しようとしている資料です。
しかし、そのことだけで、運営記録が蒼白の観測者側の札になるわけではありません。
同じ証拠から、
行政側は、必要な確認を行っていたと主張する
相手方は、確認が不足していたと主張する
ことがあります。
証拠自体に、最初から味方や敵という属性があるわけではありません。
どのような事実が記録されているか。
その記録を、どの主張と結び付けるか。
そこから、どのような事実を認定できるか。
それぞれ別に判断されます。
そのため、レクスは運営記録を蒼白の観測者側へ置かず、まず本件紛争の中央に置いています。
さらに行政事件訴訟では、裁判所が訴訟関係を明瞭にする必要があると判断した場合、行政庁に対し、処分の内容、根拠法令、原因となった事実、処分理由を明らかにする資料の提出を求めることができます。
これは行政事件訴訟法第23条の2の釈明処分の特則です。
今回、アイたちが提出したログは、
制限を決めた時点の状況
判断の根拠
確認した影響範囲
解除条件
代替措置
を示すための一件記録に近い役割を持っています。
ただし、本文では、レクスが第23条の2に基づいて強制的に提出を求めたというより、運営側がすでに必要な記録を提出し、それを争点整理の中で確認している形にしています。
「あなたたちから聞き取る」の意味
レクスは、五枚の札について、
「あなたたちから聞き取る」
と言っています。
これは、直ちに証人尋問を始めるという意味ではありません。
まず、
誰が決定したのか
誰が条件を確認したのか
誰が記録を作成したのか
判断時にどの資料を見たのか
を明らかにし、運営記録の位置付けを確認しています。
証拠には、記録の内容だけでなく、
誰が作ったのか
いつ作ったのか
どのような目的で作ったのか
後から変更されていないか
という成立過程も関係します。
今回、主人公が最終決定者であり、アイが処理条件との照合、影響範囲の確認、記録作成を担当したと明らかにしたことで、その後に確認すべき事項が分かれます。
主人公には、判断の内容と理由を聞く。
アイには、確認した条件、資料、記録作成の過程を聞く。
同じ処理に関係していても、説明する事項は同じではありません。
ミナトの札が消えなかった理由
ミナトには、今回の訴えについて原告適格が認められませんでした。
取消訴訟を提起できるのは、その処分又は裁決の取消しを求めるにつき、法律上の利益を有する者に限られます。
これは行政事件訴訟法第9条第1項に定められています。
ただし、原告適格がないことと、ミナトに関係する運営処理がすべて正しかったことは別です。
原告適格は、
その人物が、この訴訟でその処分の取消しを求める資格を持っているか
という訴訟上の入口の問題です。
これに対して、
運営が適切な案内をしたか
必要な配慮をしたか
誤った処理をしていなかったか
は、本来の行政活動や別の救済手段に関する問題です。
入口を通れなかったからといって、その前に起きた事実まで存在しなかったことにはなりません。
そのため、ミナトの札は本件紛争の中央には置かれませんでしたが、消されてもいません。
今回の訴訟の直接の争点ではない。
しかし、運営処理を検証する際に関係する可能性は残っている。
その位置を表しています。
今回の流れ
今回の手続を現実の訴訟に近い順番で整理すると、次のようになります。
まず、青車輪側の請求と主張が整理されます。
次に、蒼白の観測者側が、何を争い、どの事実を運営処理と結び付けるのかを示します。
その上で、運営処理のうち、
制限開始の判断
退避措置
代替経路
制限範囲
解除時期
のどこが、本件の結論に必要な争点になるのかを確定します。
そして、各争点について、
誰が立証するのか
どの記録を用いるのか
追加の説明や証拠調べが必要か
を決めます。
今回の話は、その途中です。
まだ勝敗は決まっていません。
札が中央へ置かれたことも、違法だと判断されたことを意味しません。
ただし、中央へ置かれた以上、その札については、
知らなかった
覚えていない
記録がない
だけでは終われません。
何を確認し、なぜ決めたのか。
次は、それを説明する番です。




