第7話 おうち
朝はあんまり周りを見ていなかったけど、お家の中はレンガ造りで趣きのある造りだ。
「フィー、夕食はどうする?」
どうするとは……?何言ってるの、食べるに決まってるけど。
「たべましゅよ!さっきかったたべもの……じぇんぶだしてくだしゃい」
パパはちょっとびっくりした顔でキッチンのテーブルにドドーンしと食材を出した。
やっぱりこの魔法、使ってみたいなー。
「パパ、そのまひょうはフィーもつかえましゅか?」
興奮しすぎて嚙んだ!!
「ん?そうだな……訓練次第だが……ん、魔法を使ってもいいのはは五歳からだよ」
ええええええーーーー。
「身体と心、魂が安定してからが望ましいとされているんだよ」
今、バランス悪いんですけど。
身体は三歳くらい?魂?は私……柳屋美弥子45歳、心は……永遠の16歳。
でも精神年齢なんてさ、二十歳くらいからそうそう変わらないと思うのよね。
こずるさやその場しのぎ、他人とそれなりにうまくやっていくために、取り繕って、大人になったつもりで、なんとなくやり過ごしてたわけ。
だから、三歳からやり直せって言われてもねー。
「れんしゅうはだめでしゅか?」
必殺、三歳児のうるうる上目遣い!!パパ瞬殺用。
「う!」
パパはズキューンと撃たれたように胸を押さえてる。
「……パパはフィーが健やかに育つように守る使命があるから」
ブルブル震えつつ、私の希望は却下された……
んー、危険なら仕方ないのかな。魔法の世界なら魔法、使ってみたいよね。
『少しなら私が教えてやってもいいぞ。それより早く食事を用意するがいい』
あ、そうだった。もう夕方なのよ。
「ア゛ィー、ピーーェ、コノヤロー、ア゛ア゛ー、ピー」
あれ?ピエール、空気読んでたのかな。
『ちなみに、私たちは人間と同じ食事を所望する』
(果物や生肉じゃないの!?ペットフードも用意してもらったのに……)
『それはそれでおやつでだしてもらおう』
ただの食いしん坊だった!?
「パパ、ごはん!!かんたんなもの、だべましゅよ。ルルカ、てつだってくだしゃい」
ルルカはこくんと頷くと私の近くに来てくれた。
「パパはパンをこれくらいにきってくだしゃい」
硬そうな丸いパンを手のひらサイズにしてとお願い。
チーズとハムもおなじくらいに。
「ルルカ、このおやしゃいをちいしゃくちいしゃくしてくだしゃい」
私にナイフを持たせてくれないので手先指先で「こうでこう」と説明。
みじん切りにしてもらった。
時短するよ。すぐに煮えて、私が食べやすいようにトロトロの野菜スープにするの。パパにはハムとチーズを焼く。私も食べたいけど、あのレーション汁に慣れた胃には早いと判断した。
私のパンはスープにヒタヒタさせる。パン、硬すぎだった。
っていうか、棚に調味料が結構そろっている。なのになぜパパはレーション生活なんだ。私の分だけ避けて、みんなの分には少し味をつけたよ。
私だってコショウ使いたいけどー。
ルルカはなんとごはん食べないらしい。パパの魔力がご飯だって。なんかエッチくさいよね。ホムンクルスの仕組み、どうなってるのかな。
今日はとりあえず簡単に済ませて、明日からもう少し良い食生活を目指すよ。
「フィーはすごいな……」
あ、今朝までルルカにお世話されるだけだった三歳児がいきなり料理に目覚めるとか意味わかんないよね。
怪しすぎるか……でもごはんは美味しいものがたべたい。レーション汁は嫌だ。
「さすがパパとママの子だ」
……ものすごい親ばかで助かった。
パパき目を潤ませて感動している。
『まだ食事を始めないのか』
アルノー、空気読んで。
私はパパのお膝に乗せられて、そして「いただきます」をした。
神様とかに祈る習慣はないっぽい。私が手を合わせたら「どうした?」って言われてしまったよ。
パパはまず私にスープを食べさせてくれた。ルルカは横に控えている。食べないってわかっていもなんか切なくなるね。
私が作った(ほぼルルカ製)って事実だけで、パパはお腹が満たされた気分になっていたらしいけど、食べ始めたらパクパクと勢いよくなった。交互に私の口にもスープを運んでくれてるよ。
「シンプルだが娘と食べるという至上の喜び、……確かに幸せを感じる」
あ、美味しいとか味が良いとかじゃなく。
ま、凝ったもの作れてないからそんなものか。パパはお金持ちだから元は良い物を食べてただろうしね。
『ふむ、まぁまぁだな。明日は肉をたっぷり焼いてくれ』
アルノー、ぶっ飛ばすぞ。
「ア゛ーー、イイワァ、モットー」
ピエール……お代わりが欲しいのかただの鳴き声かわかんないぞ。
食事が終わったらパパは寝る時間だなって。
そっか、幼児の夜は早いんだったなーって思った瞬間に意識が途絶えた。




