第5話 おようふくやさん
また魔道ギルドの近くにもどって、かわいい看板がでている建物に入った。
「ようこそ、いらっしゃいませ」
パパは場慣れした感じでスタスタと入るけど、緑色の髪の女性店員は目をパチクリとさせているよ。
箒の状態からはマシになったけど大雑把に結んだ髪にズルズルした衣装だから、こんなかわいい感じのお店にくるお客に見えないよね。
「この子の普段着と外出着、下着、靴などが見たい」
「まぁ!!」
パパが私をプランとさせて見せると店員は楽しそうな声で奥にいるほかの店員を呼んだ。
「何着ほどご用意しましょう?」
「お好みの色は?」
「サイズをお測りしましょうね」
緑色の髪の女性とちょっと背の小さいレモン色の髪の女性がパパに話しかけつつ、私のサイズをテキパキと測る。
オレンジ色、紫色の髪の若い女性がお店の中から裏からとたくさんの服や靴の箱を運んでくる。
カラフルだなぁ。服より髪が気になっちゃうよ。
「パパに似ていらっしゃるから色がおそろいのブローチやリボンなんかもよろしゅうございますね」
なんてお上手を言っちゃうものだからパパの目の色が変わっちゃう。
「む、おそろいは良いな。お勧めのものを見せてくれ」
このお店は雰囲気と品揃え的に女性向けだと思ったけど、オーダーメイドで男性の衣装や小物を作っているらしい。
男性は男性専用のお店もあるし、妻帯者は自分で服を選ぶことが少ないんだって。
あと、このお店は普段着にするには少しお高いらしいよ……
パパ……子供はすぐにおっきくなるからもったいないよ。
「こちらの薄い桃色のお衣装はいかがです?」
「もらおう」
「このライトグリーンのお衣装は……」
「もらおう」
こんな感じでどんどんと服が積まれていく。
下着……ネグリジェとかぼちゃパンツもたくさん。
靴下や靴もドンドンっと。
お靴は革製と布製があってとってもかわいかった。姪っ子に買ってあげたかったくらい。
パパとおそろいは水色の宝石が付いたピンブローチと銀色と水色の刺繍が入ったハンカチになった。
まだまだボンネットやポシェット、ストールやリボンとどんどん選ぼうとするからさすがに止めた。
「パパ、すぐに大きくなりましゅのではんぶんでいいでしゅよ」
半分も多いくらいだ。
「ん?何故だ。毎日違う服がいるだろう。足りないくらいだ」
え、使い捨て感覚なの??
今まで着替えを頻繁にしていた記憶ないっぽいんだけど。
「フィーはものをだいじにしましゅ、かわいいおようふく、だいじよ」
口がうまく回らないので腹立たしい気分。
「む……では外出着を選ぼうか」
ひ、まだ選ぶんかーい。
「パパ、まだおそとたまにしかいかにゃい。こっちのでだいじょぶね」
「そうか……ママはもっとたくさん持っていたぞ」
パパはしぶしぶ折れた。って言うかママ、富豪の娘か何かなの??パパ、めっちゃお金持ちなの?なんで森の中で暮らしているのかな……
「ふむ。ならばまた今度にしようか」
「それがいいでしゅ」
私たちの話を笑顔を固めたまま聞いていた店員たち。
「とても賢いお嬢様ですのね……私の娘はもっと欲しいなんて泣くところでございますよ」
もっとって。三十着くらいはあるよ。お靴も十足……
「ではおまとめするのにすこしお時間をいただけますか。お届けはどちらに」
「そのままでも良いが……買いすぎたな。ギルドカードは使えるか?」
パパが出したシルバーのカードで店員たちの笑顔が驚愕に変わった。
「……もちろんでございますよ」
魔道ギルドのシルバーカード、水戸黄門の印籠みたいね。
さすがに高級店でこんなに買うと金貨十枚では足りないよね……まじ買いすぎ。
「サイズ直しもありますのでこちらの方は後日になりますが」
「かまわない。今日持ち帰れる分だけ渡してくれ。荷物は魔道ギルドのセシルに預けて欲しい」
パパはまたセシルって名前を出した。誰だろうね。
「ご連絡もそちらに?」
「ああ、頼む。今この子が着られるものがあれば着替えさせてくれ」
え!?もうお家に帰るだけなのに??
「あら!喜んで」
目をキラキラさせた若い店員さんに仕切りの裏に連れていかれて来ている服をひん剥かれた。
あーれー、だよ。下着も全部お着替えされた。
そして唐突に自分の姿とご対面だよ。
目の前に立派な鏡があったのだ。前の世界よりちょっと曇っているけど。
……まぁ天使がいるわ。
って、私だよ。
ふわふわの水色の髪に薄い紫……ピンク?の瞳。もちもちのほっぺ。ぷくぷくした手。よちよち歩きを卒業したてっぽい。三歳になる手前くらいのはずだけど、ルルカとの暮らしであまり動いてなかったからかグラグラと不安定そうな足元。
ぎゃーーー、おばちゃん、なんでも買ってあげるーってなるやつ。
店員によってふわふわレースの白いワンピースを着せられて、かわいい靴下にワンピースと共布の布製の靴。
まだ結ぶには足りない髪を可愛くリボンで飾ってくれているのがぐうかわだよ。
「ぁわわ……」
「うふふ、大変おかわいらしいですよ」
手を頬にあてて感動している私を支えてくれつつ笑顔で褒めてくれた。
「さ、お父さまにお見せしましょうね」
手を添えられてヨタヨタと歩いて出ていくと、パパが膝から崩れ落ちた。
パパ、今朝まで放置プレイだったのにふり幅すごすぎない?




