第4話 まじゅうやさん
魔獣屋さんに着くと周りのお店と違って入口に派手めな布がかかっていてちょっと目立つ佇まいだ。横には小さいドッグランのような庭と馬小屋がある。
その入口にはさっきの怒声の持ち主と変な鳴き声を出していたらしい鳥がいた。
鳥だったんだよー。憧れの大きなオウム。魔獣だから名前は違うかな。
「店主、うちの子にいろいろ見せて欲しいのだが」
パパが鳥をスルーして店主に声を掛ける。
「いらっしゃい。中に小さめのコもいますからどうぞ」
「ア゛ア゛ァ゛ーー、キタワァ、オソイワネー!!」
大きな鳥がおしゃべりすると店主、鳥に「うるさい」ってデコピンしたよ。
「すみませんねぇ。前の飼い主のお宅で変な言葉覚えたらしくてね」
頭をペコっとさせて迎え入れてくれた店内にはまずかモルモットやウサギっぽいコ、大きな猫……猫科と思うモフモフ、キツネっぽいコ、そして蛇やトカゲなど爬虫類と豊富すぎる種類がいた。
「この奥には馬や牛なんかもいますが……」
馬や牛は移動や荷運び、農耕など、働くコたちだって。
「フィー、気になるコはいるかい」
パパはちゃんとゲージの高さに合わせて腰をかがめて見せてくれる。
大型のペットショップくらいワクワクする。
鳴き声が控えめなのは家畜としてしつけられているのかしら。
私は大型の爬虫類もじっくり見た。
「この子たちはなにをたべましゅか?」
「お、しっかりしたお嬢さんだねー。ウチにいる子たちは基本的に雑食で肉を好みますよ」
おっと。魔獣屋さんだった。普通?の生き物じゃないんだ。
「エサならルルカに任せたらいい」
「パパ、それはいけましぇん!イキモノをかう、いのちをあじゅかる、せきにんがあるのでしゅよ!!」
「おぉ……」
このコたちには飼い主を選べないのだから、この飼い主で良かったと思ってもらわないとだよ。
「えらい子だねー。こいつらは一月くらい食べなくても死にはしないけど大事に飼ってもらいたいからね」
え、一か月も断食させられたら私なら復讐するよ!?呪うよ。
「虐待なんぞしたら近くに棲む魔獣たちが荒れ狂うからすぐバレるがね」
なんと、猫猫ネットワークみたいなものが魔獣同士にはあるらしい。仲間に連絡して、虐待しているお家にご近所で飼われている魔獣や野良が大集合して威嚇するんだとか……
魔獣を放し飼いしてるんだ……ってことにびっくりだよ。
「うちや魔獣商のコたちにはこの識別のリングが付いているからね。むやみに人を襲えないのささ。野良は害があるようなら街の衛士や冒険者が狩るんだよ」
店主、私みたいな子供にもちゃんと説明してくれて好感度が高い。
「お嬢さんにお勧めはこのコかこのコかな」
手のひらサイズのモルモットと私と同じくらいのサイズと思われる猫をお勧めされた。
「ふむ……」
確かにかわいい。ふわふわで子供が一緒に過ごすのには最適な感じだ。
でも……
「あのコは……?」
「「え!?」」
パパと店主が同時にびっくりした、私が気になっているコは……
あの無表情で虚無顔のチベットスナギツネちっくなモフモフ。
「あいつうちにいるはモノリスキャットの中で一番、ブサ……っっ不愛想で扱いにくいですよ」
ブサイクって言いかけたよ。店主、ダメだよ。きっと言葉がわかってるよ。
ってキャット、猫なんだ……
『私を選ぶとはお前は見る目があるようだな』
唐突に私の頭の中に声が渋いイケボが響いた。
「?」
「どうした、フィー?」
パパの腕の中で首を傾げたからか心配げに顔を近付けてきた。
『この私を飼いたいのであればあの入口のうるさい鳥も一緒に飼うのだ』
(え、あのへんな鳴き声のコ?)
『あれは上書きが可能だ。新しい言葉を覚えたら静かになるし、育てば自分の言葉を話すようになる』
え、自分の言葉?賢い鳥じゃない。
(パパがいいっていったらね、って言うかこの話、パパに聞こえてないの?)
『それはお前に言語理解スキルと念話スキルがあるからだな』
(スキル?)
『ふむ、そのあたりは今後暮らしていく中でゆっくり教えてやろう』
って、もう飼うの確定で話すじゃないの。
……ま、いいか。ペットの方から私に声を掛けてくれるってうれしいかも。
ペットとの運命の出会い的なのあこがれてたんだ。
渋い声のネコと変な鳴き声のオウムは予想外だけど、逆におもしろい。
「パパ、あの入口のコとこのコ、飼いたいでしゅ」
「えぇ!?」
またも二人の声がハモった。
「フィー、変わった趣味だな……」
「お嬢ちゃん、モノリスキャットはともかくルージュビークは子供向きじゃないですよ」
店主、売れないコを厄介払いとか喜ばないの信頼できるね。
「フィーはきにいりましゅた」
「……店主、いくらだね」
パパはどうせ森の中だから多少うるさくてもいいしって感じで特に反対はしないみたい。
「えっ、モノリスキャットは金貨十、いや五枚でいいです。ルージュピークは出戻りですんでお金はいりません」
ひょー、おねだりしてみたものの高い。
「ちゃんとした対価は払う。当面の餌と運ぶためのケージの準備を頼む」
パパは腰のポーチからカードをだして「これで」って。
「銀のギルドカード!?」
なんと上級錬金術師のものらしい。店主、ちよっと腰が砕けちゃった。
魔獣屋さんは冒険者、商業、農業、魔道ギルドに登録されているのでカードが使えるらしい。
小さい個人店は使えないから、さっき現金おろしたんだね。
「まだ買い物があるから準備を頼む」
「あ、ありがとうございます」
あ、服と靴だね。忘れていたよ。
「ア゛ァ゛ア゛ア゛ーーン。イイワァ。ウルサーーーイ」
『早く戻るのだぞ』
あの鳥、やっぱやばくない?パパがちょっと嫌な顔したじゃないの。




