第30話 じかんがかかるのでしゅ
…………モツを煮込むのには時間がかかる……のだった。
『で……いつ出来上がるのか』
「ア゛ア゛ア゛ーー、ピエーーー、ハヤクゥ」
ごめんね。思い付きでやっちゃったばかりに……
「おにゃかしゅいた」
「ピエーーーーー」
『今すぐ食べられるものは無いのか』
ピエールの催促とアルノーのため息交じりの声に私はしょんぼりだ。
「……今日は他のものを食べようか」
パパがアルノーとピエールの様子と私の顔を見て提案した。
仕方ないのでルルカに言ってモツ焼きと野菜炒めを作ってもらった。
ちょっとだけスパイスかけて。
焼いたモツ、プリプリムニムニでおいしいですよね……私には嚙み切れないから食べられなそうなので予定通りフルーツパンケーキを食べることに。ぐぬぬ。
パパもアルノーもピエールもモツ焼きは気に入ったようだ。
『火を通すというのはとても有用なことだな』
「ア゛ア゛ア゛ーーー」
アルノーの言葉に反応したのか、ピエールは突然、自分とアルノーのモツ焼きに火を噴いた。
「わっ!!」
びっくりしたパパにかばわれて、熱は感じずに済んだ。
『突然何をするのか』
アルノーは眼前でゴォっと炎に焙られたっぽい。オコです。
モツ焼きからこんがりとしたジューシーな香りが漂う。私の頭の上のパパの喉がこくりっと動いた。うん……いい香り過ぎる……
『外はパリッと中はプルっと実に不思議な食感で気に入ったぞ』
「ア゛ア゛ア゛ーーー、コノヤロ!!」
野菜をよけてモツをガツガツと食べる。野菜も食え。
パパがルルカに言ってよく焼きでモツ焼きを追加で作ってもらった。
アルノーもピエールもめっちゃ食べる。
『これも焼いて欲しい』
アルノーたち自分の生食用にとっておいた内臓も出してしまうほど気に入ったらしい。ってどんだけ食べる気なの。
「なべは、あしゅた……たくさん、にこんでたべゆのでしゅよ。なべもきにいったらたいへんでしゅね」
全部焼いて後からモツ鍋もおかわりって言っても出せないよ。
『む、明日も狩にいってこようぞ』
わぁ……元気だね。
『どのみち街の子供はこうるさいくてかなわぬからな。出かけるが吉だろう』
え、アルノーの場合はインパクトがありすぎて騒がれているだけだと思う……虚無顔の子、他にいないっぽいしねぇ。
リカちゃんの息子がどんな子かはわからないけど、アルノーもピエールもお出かけなら安心かな。ピエールの鳴き声はまだちょっと危ういもん。
ルルカがずっと鍋を見守ってくれる中、私はパパのお膝の上で寝てしまった。
起きたら朝。ちゃんと私用のベッドでパジャマを着て寝ていた。
よくよく考えてみれば、私のベッドは子供用でパパは一緒に寝れないんだけどね。
パパ、いつ寝てるのかわかんないし……
「ア゛ア゛ア゛ーー、クソッタレー、クッサーーー」
さわやかな朝が台無しなアルノ―の鳴き声だ。
『起きたのか』
「……おはようでしゅ」
気が付けばアルノーの腹毛に埋まっていた。ふわふわの毛がとても良い。
魔獣を引きずっていたのを見てなかったらとても素敵なんだけど。もちろん〈洗浄〉できれいになっているんだけどね。
野生の場合は汚れは舐めとる一択らしい。うむ。猫だね。
「フィー、起きたのかい?」
「あい。パパ。おはようごしゃいましゅ」
パパは私の額にキスをしてからルルカを呼ぶ。
私はパパの選んでくれた淡いブルーのワンピースを着せてもらう。何気に靴も髪飾りも統一されたデザインなのだ。
「リカルドのことだから早くにやってくるだろう。朝ご飯を食べてしまおうね」
リカちゃん、せっかち説……森の中に朝早くやってくるって、何時起きなの。ってパパと一緒で〈転移〉してくるのかな。
朝ご飯は私の分はミルク粥。雑穀煮込み……レーション。目を離すとすぐにレーションが使われる。
「ルルカ、フィーのごはんにはレーションダメでしゅ……」
「フィー、たまには栄養もたっぷり摂らないと」
パパのせい!?
「えいようはおやしゃいとおにくでもとれましゅよ……」
手っ取り早いのはわかるけど、激マズなんだよ。
パパはおいしいものを食べてもレーション信仰は消えてなかったのか……
『私の食事には絶対に使わないでくれ……くさい』
魔獣が嫌がるほど臭い!?最悪だ。
「ア゛ア゛ーー、イヤーン」
ゴリゴリ。
ピエールはしっぽをブンブンさせながらカチカチのままのレーションをかじっている。あれか……くちばしが痒いとかそんな感じのためのおやつ的な……?
「フィー、レーションはこの一枚で三日は満腹感を得られる優れものだよ」
パパは嬉しそうにレーションの束を見せてくる。
「っばかちんが!!みっかもごはん、たべにゃいなんてありえないでしゅ」
思わず、パパの胸をパァンと叩いたよね。
食事をおろそかにするなんてありえない。
しかも味が一種類だよ……




