第28話 べんりなおどうぐ
森のお家に戻ってルルカに出迎えられる。
アルノーとピエールは夕ご飯までお散歩に行くとそのまま出かけて行った。
ルルカはおうちの掃除とお菓子の作り置きをしていてくれた。フル回転で働いている。ホムンクルスは魔石、もしくはパパの魔力補充で活動しているから休みは必要ないらしいけど、人の形をしているのに休み無しってかわいそうな気がするよね。
パパにお願いして早速買ってきた果物をだしてもらう。
一番最初にイチゴを一粒食べてみたら、昔懐かしいような酸っぱいイチゴだった。牛乳やお砂糖、練乳をかけて食べていた子供のころのお味……
改良された美味しいイチゴを食べなれて贅沢になってしまった私には、こやつはジャムになってもらう一択だ。アルノーとピエールが森の中でひっこ抜いてくれる予定のイチゴに期待しよう。
「これはジャムにしるでしゅ。こっちはおしゃとうとはちみつ……」
パンケーキと簡単クッキーしか作れない今、ジャムとフルーツの砂糖漬けを作っておいて生地に混ぜれば簡単に味変ができる……はず。
「……ジャムまで家で作れるのか……」
パパから聞き出した中で、ジャムは高位貴族がお茶会に出すものらしい。スコーンのような形の甘くない焼き菓子にはちみつかジャムを付けて食べたりするものらしい。
クッキーみたいなものには使わないのかな。
クロテッドクリームとかチーズクリームは無いのかしら……
パパがみたことのある範囲の情報だから、もっと色々あるかもしれないよね。
ん、アルノーなら何か知っているかもしれない。
パパは鍋をずっと混ぜ混ぜする作業はもうプロだよ。錬金術でも完成の瞬間を見極めるのに集中するらしいので、得意分野っぽい?
ルルカには生クリームにチャレンジしてもらおう。
その前にパパに何のミルクか聞いてみた。
家畜魔獣、説明からなんとなく牛っぽいかなって思ったので牛と思っておく。なんでおとなしく飼われるのかと聞けば、弱いから人の元で餌をもらって暮らすのに向いてるのだとか……名前にフレイム、ウォーターとか属性が付いてる牛、魔素の濃い場所に住む牛は気性が荒いから家畜には向かないんだって。
ざっくり草食タイプ(家畜向き)と肉食タイプ(否家畜向き)の生き物に分かれている感じかなぁ。
ちなみにアルノーたちが持ち帰る獲物は肉食タイプ。栄養や魔力が家畜のコたちより豊富だからだろうって。この世界も弱肉強食だね。
パパに出してもらったミルクの樽には目当ての上澄みが無かった……むむむ。
この世界にはチーズ自体はあるから酪農家が回収済み?
「パパ、ドロドロ、ないでしゅねぇ」
「ドロドロ?」
パパに聞いてもよくわからないらしい。 ミルクはこういうものだろうって。
とは言え、成分調整されているミルクよりはぜんぜん濃い。私は毎日飲んでいるのだからわかってるよ。
「パパ、これ、おみじゅとえいよう、わけれましゅか?」
ルルカがブンブン振ればどうにかできないかなぁ。
「ん?攪拌したらいいのかい?」
パパは何でもないことのようにお仕事部屋に入ってすぐ何か機械をもって戻ってきた。
遠心分離機……?
「これはポーションに使う薬草や魔獣の素材の欲しい成分を抽出できる機械だ」
ええーーーー、そんな大事な道具を使ってもいいの?
「ミルク……つかっちぇ、いいでしゅか?」
「〈洗浄〉してしまえば何でも一緒だろう」
って魔獣の素材っって言ってた!!
どんなものを入れているかわからない機械だ!!
このばかちん!!
……〈洗浄〉しちゃえば一緒か……何も見てない。聞いてない。
…………うん。気にしたら負けだ。
使える道具があることに感謝しよう……
「パパ、トロトロ、おみじゅわかれるようにしてくだちゃい……」
そんなわけでものの数分で生クリームをゲットできたよ。
濃厚部分と薄い乳成分……は栄養が残ってるから大事に使うよ。そのまま飲んでもいいし、料理に使える素敵なヤツだものね。
これはバターもヨーグルトも簡単かもしれない。
一気にやるのは良くないから、また今度ね。
生クリームが出来たことで今夜は甘いパンケーキ。フルーツサンドとかしたかったけどね。私の分はフルーツを細かく切ってもらった。
今日の成果は生クリーム、ジャム(イチゴ、リンゴ)、レモネード用レモンの砂糖漬け。オレンジピール。
オレンジピールの仕上げはパパが魔法で乾燥させてくれた。
便利魔法……早く使ってみたいなぁ……
ルルカは全部の作業をすぐに見て覚えちゃったらしい。
そして、家の中が甘い匂いに包まれているなか、アルノ―とピエールが帰ってきた。
血まみれの獲物付きで……




