第24話 もりのおがわ
パパのお仕事が一段落したらしく、今日は魔道ギルドに行くために街に向かうって言われた。
ルルカはやっぱりお留守番。
私は街で買ってもらった服の中からパパが選んだ特に可愛い服をルルカに着せてもらった。頭に大きなおリボンをつけられて、おばさん少しダメージを負った。
ここには鏡がないから、自分の姿が見れなくて。
前の自分のイメージで想像しちゃう部分が……今の自分はとてもかわいい三歳児ってわかっててもさ。
頭の中ではちょっと痛いコスプレしているおばさんな自分がよぎるよね……
パパももっさりから普通に見栄えを整え、荷物の準備を終えた。
街には森の中を散歩してから行くことに。
アルノーが家の近くに川があるって教えてくれたのでパパに川に行ってみたいとお願いしてみたの。
パパに抱っこされて少し進むと鬱蒼とした森の景色が少し明るくなって……
小川が木漏れ日を映していた。
マイナスイオンたっぷりな木々の匂い、川のせせらぎ、良いねぇ。
「……ア゛ア゛ア゛ー」
ピエールが少し離れた場所に飛んで川の中に急下降した。
「ア゛ア゛ー、コレ!!ココ!!」
ここ掘れ、わんわん的な合図かと思ったら、ザバザバッと潜って、普通にお魚咥えて戻って来た。
……何気にすごい鳥だよね。
「お、立派なものだ。食べるのか?」
イワナみたいなお魚だ。塩焼きにしたい。ほぐしたら私も食べられるよね……
「ア゛ア゛ア゛ー、モットォ!!」
『ふむ、勝負だ。今日も私が勝つ』
ピエールがもう一回さっきの場所付近に飛ぶとアルノーもついていった。
このコたちいつもこんな感じで獲物を持ち帰ってきてるのかなぁ。
「お前たち、これから街に行くのだから張り切らないように!!」
パパの注意が効いたのか、アルノーが五匹、ピエールが四匹で戻って来た。
「アガガガー、ヴヴ……」
悔しそうにしているピエールなんだけど。
「ピエール、さいしょのある、アルノーとひきわけでしゅ」
そう、合計で同点なので引き分け。
「ヴェ!!」
ピエール的には最初の魚は一回手放して忘れていたっぽい。
『……余計なことを』
アルノー、スタートってなってからってことだと確かに勝ちだけどさー。
「大きさではアルノーに軍配だ」
パパ!?
『ふ、良くわかっているではないか』
「ア゛ア゛アーー!!コノヤロ!!」
あ、文句の言葉がちゃんと出てるよ。ピエール。
「同じ数ならサイズで勝敗が決まるんだよ。フィー」
確かに……そうかも。
「……ヤダワー!!ヤメテェ!!ア゛ア゛ーー」
ピエールの元の飼い主、そこはかとなくドメスティックなバイオレンスの香りがするなぁ……浮気されたら怒るのも仕方ないけど……
たまに鳴き声が場面にドンピシャなのちょっとおもしろすぎる。
『ふ、13戦9勝、私の勝ちだ』
あれ……アルノー、圧勝ってほどでもないんだ。めっちゃ満足そうな顔……いや虚無ってるので声音……か、してるけど。
何も口に出さないほうがいいよね。ん、黙っておくよ。
「ア゛ア゛ア゛アーーー!!」
ピエールは悔しそうだけども。健闘してると思う。
「さてそろそろ街に向かおう」
……アルノーとピエールが楽しんでる姿を見つめるだけで時間が過ぎちゃった。
ここは良い雰囲気なのでまた連れてきてもらおう。
そうしてみんなで街に〈転移〉した。
街の隅っこに出て、魔道ギルドに向かってスタスタと進むパパ。
「フィー、今日は苗と種も買って帰ろう」
「たね!はたけ、おいしいおやしゃい」
……綺麗なお花とも通路沿いに植えるんだよ。でも、いつでも食べられるお野菜、大事だよね。あれば、イチゴも欲しいなぁ。
魔道ギルドに到着すると、今日は人が何人か並んでいた。
閑古鳥ギルドじゃなかったみたい。
パパは勝手知ったるで受付の人に軽く合図をして、二階にあがった。
「セシルはいるか」
え、それは下で聞こうよ。
二階の廊下にいた職員に声を掛けると、その人はパパを見て背筋を伸ばした。
「執務室におられます」
「ありがとう」
……パパって実は偉い人なのかしら。
職員はアルノーを見て一瞬戸惑いの顔をした。
虚無顔のモノリスキャット、そんなに珍しいのかしら。
普通のモノリスキャットは魔獣屋さんで見てないんだ。アルノーのインパクトが強すぎた。
他にもいるって言ってたけど、一回ちゃんと見てみたいね。
「入るぞ」
パパは執務室のドアに手をかけた。




