第19話 あまいおやつ
「焼きあがったよ」
パパのお膝で目が覚めた。
やっぱり寝ちゃってたらしい。
ルルカがオーブンから焼きあがったメレンゲクッキーを取り出していた。はちみつぼうろはこれから焼くみたい。
ピエールが焼きたてを狙ってバッサバッサとルルカの邪魔をしてる。
「メッでしゅよ。すこしさめたら、もーぉっと、おいしいのでしゅ」
お砂糖のそのままの味とかいう人もいたけど、シュワジャリ、おいしいよね。
スノーボールとかもさ、作れたらいいなぁ。
「ア゛ア゛ー……」
ピエールがしょんぼりしてる。数分でいいから待ってってば。
「味見……出来ないのか」
って、セシルさんまでピエールと同じ顔で。
冷めるのを待っているうちにはちみつぼうろが焼きあがった。こっちも少し冷ましたほうがいいんだよってことで、メレンゲクッキーの方を先に実食!!
…………うまー。
若干、雑味があるけど、白砂糖でも粉砂糖でもない、粗いめのお砂糖だし仕方ないよね。でも甘くてザクホロ。
「アババーーーアア゛ー、モットォ、ガリガリ」
『ふむ。私のような高貴で品のある味わいがする』
ピエールは嘴で器用に食べてる。アルノーは虚無顔でパクパク。食べながら何を言ってんだかって感じだよ。
「おい、これはすごいぞ、砂糖の塊だがちゃんと菓子だ」
セシルさんもなんか語彙がおかしい気がする。
「……これは良い。ママが毎日欲しがるくらい甘美なお菓子だ」
パパはしみじみ一つを味わってている。
私もメレンゲクッキーは大好きだけどね、毎日はいらないかな。太っちゃうよ。
ルルカが冷めたはちみつぼうろをテーブルに置いた。
セシルさんとピエールが瞬時に手(嘴)を出す。
「じぇんぶはメッでしゅ。フィーのおやつでしゅよ」
思わず主張したよね。私の分を食べられちゃう。
「セシル、気持ちはわからないでもないが大人げないぞ」
そーだそーだ。レーションで満足してたくせに。
パパが窘めるとバツが悪そうな顔で手を引っ込めた。ピエールはがっつり食べたけどね。
結局全員で均等に分けてお皿に。ピエールだけ先に食べちゃったので「待て」ってパパが言ったけどアルノーの分を奪おうとして一撃で横に飛ばされちゃった。乱暴だけどピエールが悪いね。
「アババーーー、クソッタレーイデデ、コノヤロッ」
羽で頭を抱えてて鳴き真似してる。何気に芸が細かい。
アルノーは鼻先でフンフンしながらぼうろの匂いを嗅いで舌でペロッと口に入れた。
『こちらは同じ卵でも味わいが違うのだな』
違いのわかる男……
「うん、こっちの方が粉っぽいな。喉が渇くが好きな味だ」
口の中の水分は持ってかれるねー。でもメレンゲクッキーも甘さで飲み物が欲しくなるから、結果は同じ……かも。
「フィー、これを次の時までにたくさん作ってくれないか?礼を弾む」
子供相手に何を言い出したのかと思えば、対等な取引を持ちかけてる……?
「セシル、フィーには作れない」
「あ、そうだった」
まさか、私が子供だって、幼児だってこと、ルルカとパパがほとんど作ったこと、忘れてた!?
セシルさんは私を見て苦笑いをした。
「ルルカの手が空いてる時ならいい」
パパ、セシルさんに代替案を出したよ。
「ああ、ルルカ、頼めるか」
セシルさんがルルカに声を掛けると、ルルカはそのまままたメレンゲを泡立て初めた。今から!?
「……常備したら良いだろう」
私がギョッとパパを見上げたらちょっと困った顔でつぶやいた。
レーションの代わりにする気かな……
「あまいの、まいにちたべたら、びょーき、なるでしゅよ」
糖尿病、怖いんだよ。この世界には無いのかな。
でも、お腹まわりがドーンと出たりはすると思うからおやつは適量でね。
私だって幼児でコロコロになるのは避けたいよ。 小さい子がぽちゃっとしてるの可愛いけど、自分がそうなりたいかと言えば……なりたくないわけで。
「これ、疲れているときにあれば便利だろう」
疲れているときに甘いものは正義だけど……ダメでしょ。
結局、セシルさんは夕飯を食べて……って言うか泊まっていくことに。
夕飯は私はいつもの野菜スープに肉そぼろ、パパたちにはセシルさんの持ってきた牛肉、薄切りステーキ……私もステーキ食べたいなぁ……
そしてセシルさんがお風呂に入るって言いだして!!
お風呂があったのか??ということと、私はまだ〈洗浄〉で良いと言われてお風呂に入れないことでショックを受けた。
ぬぬぬ。
「ア゛ア゛ア゛ーーー、イー、アワワワーーー」
『たまには悪くない』
私がパパのお膝の上で悲しみに打ちひしがれていると、お風呂の方からピエールの雄たけびとアルノーのご機嫌な声が聞こえてきた。
魔獣は入っていいの!?




