第18話 パパといっしょに
セシルさんはまずパパの使う素材を置きにいって。
蜂蜜がめちゃ気になっているけど、私の服もあるので先にルルカにクローゼットに収納してもらうことに。と言っても私のクローゼットはまだなくて。
「……」
どこに仕舞えばいいのだろう。私の部屋は必要最低限の家具しかないし、ちょっと狭い。
パパが少し考えて、荷物に手を翳して仕舞って、私を抱き上げた。
「セシル、アルノー、ピエール、お前たちはキッチンに残れ」
連れていかれたのはキッチンより少し陽あたりが弱いけど、家具やリネンはかわいらしい女性の部屋だった。私の部屋の奥だ。
「フィー、ここはママの部屋だ。まだフィー専用の部屋を用意していなかった。ここを使うといい」
多分、大きくなったらママの好みでそろえる予定だったのかな。
ママを思い出にしたくないパパは、この部屋をママのいたときのまま保存したかったんじゃないのかな。
私に与えるのは私がママと触れ合えるように?
本当に私が使っちゃっていいのかなぁ。
「ルルカ、荷物は適当に仕舞ってくれ」
パパは空間からドンドンとクローゼットの前に私の服や靴の箱を出した。
「フィー、この部屋は好きに使っていい。寝起きは今までどおりあの部屋でしてくれ。パパの目につくところで過ごすように」
荷物の整理はルルカに任せてキッチンに戻った。
「イテッ、やめろって、悪かったから」
「ア゛ア゛ア゛ーーー、キェー」
キッチンではセシルさんがピエールに突かれていた。何してるんだか。
「いやー、お土産に持ってきた肉に内臓がなかったから怒ってるっぽい」
セシルさんはテーブルの上に蜂蜜、お肉、果物、ヨーグルト(かな?)をドーンと置いてくれていた。
「ピエール、おみやげ、ごこういよ、ぜいたくメッ」
お肉だったら、自分で新鮮なもの狩ってきてるからいいじゃない。
「フィー、ご好意とか贅沢って良く知ってるなぁ。ピエール、次は内臓も持ってくるから許せ」
セシルさんはピエールの羽をポンポンしながら宥める。
私の語彙が三歳児じゃないってバレたかなって一瞬ドキッとしたけど、あんまり気にならないっぽい。パパと同じ錬金術師?なのに脳筋かも!?
細かいことを気にしない男、ありがたいね。いい男だと思う~。
「アヴァヴァー、イテッ、クソー」
「イテェのはこっちだっての」
さっきより勢いはなくなったけど、ピエールが脳髄チュルチュルしていた映像が記憶に新しいのでバサバサ広がる羽、キックしている脚、セシルさんの腕を突く嘴、ちょっとゾッとする光景だよね。
『あれで加減はしている。私たちは人間は傷つけぬ制約をしているからな』
魔獣屋さんの制約は飼育下にいる魔獣には絶対だから心配はいらないらしい。
痛そうだけどなぁ……
「はちみちゅ、つかってもいいでしゅか?」
「ああ、フィーに持ってきたんだ」
「ありがとでしゅ」
さて……ルルカがいないんだった。パパをじっと見上げると心得ているとばかりに私を持ち上げて台に載せてくれる。
「パパ、おこなとさとうと……」
私が伝える材料を順番に出してくれる。
「はちみちゅぼうろでしゅ」
簡単なものしかできないけど、卵黄とでんぷん粉と砂糖と蜂蜜混ぜて、パパと二人で丸めた。
セシルさんも混ざりたそうに見ていたけど、ピエールの相手をしていてほしい。
そして卵白が余ったので、戻って来たルルカに「もったりするまでまじぇて」っとお願いした。
はちみつぼうろとメレンゲクッキーができるよ。
「はー、砂糖たっぷり、そんな作り方よくわかるなー」
そういえば、お砂糖も蜂蜜も高いらしい。しまったかな。
「フィーがつくるものはなんでも美味しいから任せたらいいんだ」
あのカチカチの、味は気にしていないらしいレーションを食べている二人にはサクホロの甘いお菓子なんて想像できないものだろうなぁ。
焼きあがるまで時間がかかるので、セシルさんが持ってきてくれた果物のうち干せるものをスライスしてもらって、レモンとオレンジを砂糖漬けにした。贅沢かもだけど、これで今後のお菓子つくりの幅が広がるよね。
チョコとかにも出会えると良いけど……
ルルカに火加減を見てもらいつつ、私たちはお茶タイム。パパとセシルさんにはフルーツティ、私はミルクに少し蜂蜜をいれてもらって。
アルノーとピエールも蜂蜜を入れたミルクを望んだ。
漂う甘い香りの中、パパとセシルさんはお仕事の話を始めた。
寝ちゃいそう……




