第15話 ディナー
みんなで席について「いただきます」だよ。
アルノーとピエールには別のテーブルが用意されて、ルルカが食事の補助をする。私にしていた介助と同じ扱いらしい……
「ここでちゃんとしたメシを食える日がくるなんてなぁ」
パパとセシルさんは長い付き合いっぽいのに、二人いてもレーション食べてたのかなぁ。
「おとこのひとだってごはんくらいつくれないとモテないでしゅよ」
まったく。彼女や奥さんが熱を出したときとかも何も出来ないとか言うのかな。たまには作るよとか言ってくれたら好感度バリ高でしょ。
……彼氏なんて、ン年もいませんでしたが何か?
「お、フィー、俺はお前さんのパパとは違ってモテるぞ」
ふふんと腕の筋肉を見せつける。
マッチョ好きの女ですか。筋肉だけでモテるとかあるのかな。
「きんにくなんてあきたらおしまいでしゅよ」
一回堪能したら、あとは生活力と思いやりがあるか、だと思うのよ。
尽くしたい女性もいるから……好みがマッチしたらどうでもいいのも。
所詮、嫁に行けなかった女の考えですわ。ぺっ。
「フィー……こんなに小さいのにひねくれて……パパがダメだからか」
「おい、フィーはひねくれてなんかいない。冷めないうちに食べろ」
パパはセシルさんを促してから、膝に乗せている私にミートボール入りスープを食べさせる。
んー……薄味だけとお肉だぁ。蛇肉ってわりと淡泊でプルプル食感なのね。
オオカミの味との相性がわからなかったから合い挽きにしなかったけど、正解かな。
「おお、これうまいな!!」
セシルさんはアルノーたちと同じ、オオカミ肉のステーキからかぶりついてる。
「やいただけでしゅ」
そう、ちょっと塩コショウ、ハーブを揉みこんで焼いただけ。街の食堂で食べたほうがおいしいに決まってる。
「そんなことはないぞ。初めて自分たちで作って、フィーと食べてるんだから」
あー……初めて自分で作った効果かぁ。
「……」
パパは私のスープのミートボールに興味があったらしく、私の分を食べちっゃてる。ダメー!!
「ギッタギタにした肉……うまい」
「なんだって!!!?」
ギッタギタて……
セシルさんはコンロの鍋をがっり掴んできてテーブルに載せちゃった……全部食べたらイヤだよ。明日の朝ごはん……
「ア゛ア゛ア゛ア゛ーーー、コノヤロ!!」
セシルさんの勢いでアルノーとピエールは自分たち用に置いてあったミートボールの皿を隠しちっゃたよ。
「ミンチ!!フィー、こんなにくちどけの良い肉は初めてだ!!これはうまい」
パパが私を抱っこしているから鍋争奪に参加できない。
「セシルさん、あしたのあさごはんでしゅよ!!ぜんふはメッでしゅよ」
せっかく食べられるお肉になったんだからね。ルルカがもう作れるけどさ。
一回で全部食べ切らなくてもいいじゃんね。鍋、わりと大きいんだよ。
「フィー、あとでもう一回作るから許せ」
セシルさんはガブガブと食べる。スープなのになぜか食べる、が正しいみたいな勢いだ。パパにも一応一杯よそってくれる気遣いはあった。
レーションで満足していたくせに。急に食欲がわいてるの。
「こんなに簡単に作れる料理があるなんてなー」
私がなんとか指示出来て、それなりに作れるものにしただけで、肉を炭にしちゃう人に「簡単」って言われたくないなぁ。
「それにスネークは淡泊だが若干噛みにくい肉だ。ギッタギタのミンチという発想はすごくいいぞ」
ミンチにしたのは私が食べられるお肉にしたかっただけ。
蛇なんて食べたことなかったから、結果オーライだった的な。
「ほかにも味はいいが硬い肉なんかで試したいな」
「……お前はずっとレーションを食べておけ」
パパはスープをしっかり平らげた。口元が緩んでるから美味しかったのだと思うけど、セシルさんが大騒ぎしすぎて冷静になっちゃったっぽい。
「今度来るときに美味しい肉を持ってくるから、いっしょに食おうな」
「次も食事をしていく気か……」
パパがちょっと嫌そう。普段は荷物を置いたら次の仕事の説明とかをして帰っているんだって。
「おいおい、お前にじゃないぞ。フィーに持ってくるんだ。だいたいほかの買い物まで俺に運ばせてるくせによぅ」
そういえば、荷物に私の服はなかった。昨日の今日だからまだ仕上がってないんだね。
「フィー、街に来たときは美味しいおやつを食べに行こうな」
おやつ!!
この世界にはどんなおやつがあるんだろう。
「ア゛アア゛ー、サンジヨ!!ベツバラナノー」
ぶ、ピエール、それも浮気な奥様からかな。
セシルさんはミートボールとオオカミ肉のステーキをたくさん仕込んでちゃっかり持ち帰っていった。
私の朝ごはんは確保できだけど……蛇肉とオオカミ肉はアルノーとピエールのなのにね……ってちゃっかりお酒のおつまみをもらって契約成立してたよ。
「あいつは気が良いけど喧しいんだ」
パパはセシルさんのこと、嫌いじゃないけどウザイってかんじかなぁ。




