第13話 かいたい
パパはちょっと嫌そうな顔でセシルさんを迎え入れた。
そして、作業部屋に向かう。
作業部屋はパパの仕事部屋の奥にあった。 このお家、外から見える面積と中の広さが合わない気がする。中が広い……よね。
作業部屋はお仕事に使う素材を仕分けたり、保管するために使うんだって。
セシルさんはまずここに来た用事の届けに来た素材をやっぱり空中からドンドン出して、パパの指示通りの場所に置いた。便利魔法、じっくり観察したけど、どういうものかよくわからないや。
そして、解体するために……
ってさっきの蛇、大きかったのよ。ここのテーブルに載るのかなって思ったら、ニュルンと空中から出してグネグネ曲がった状態にして置かれた。
「ポイズンスネークか」
「食用にしたいらしいが皮ごとぶつ切りで良いか?」
パパが「食用……?」って首を傾げてから、ついてきていたピエールとアルノーを見た。自力で調達してきたことを伝えると、「そうか」って。
「いらない部位は貰ってもいいのか」
『好きにするがよい』
パパにはアルノーの声は聞こえないので頭をこくんとすることで了承の意を伝えた。ピエールは「ア゛ア゛ー」って鳴くだけ。
セシルさんは横にオオカミもだした。
「あ、フィー、解体を見るのはまだ早い。あちらで休んでいなさい」
興味はあるけど、スプラッタは別に見たくないので大人しくパパのいうことを聞く。
「パパ、ピエールはかんぞう、たべたいでしゅって」
せっかく狩ってきてほしいところが食べられないとかわいそうだからね。って思ったんだけど、なんでわかるのかって話よね……
「魔獣は基本的に魔力が多く残る内臓が好きだからなぁ、よく知ってるな、フィー」
セシルさんが普通に受け入れてくれた。
アルノーもピエールもなんでも食べるけど、好物はあるってことかー。魔獣屋さんでも食べていたのかな。
生肉や干果物、木の実が用意されていたけど、お肉の部位まで見てないよ。
私はルルカの案内で衝立の裏に座って待つことに。
「……」
いえね、同じ部屋で作業しているわけで、会話と解体する音が生々しく聞こえるわけで。ピエールが「ア゛ババー、クェー」と叫び、アルノーは『そこは私のものだ』なんてやってる。パパには聞こえてないんだってば。
「あ、こら内臓に爪を立てるな」
「おい、切っている隙に食うんじゃねぇ」
と、アルノーとピエールに邪魔をされているパパとセシルさん。
皮を剥いだり、骨を切断したり……すごい音だよ。うん。
ちょっと「うへぇ」って気分になりながら待つこと三十分。
やっと呼ばれたとと思ったら、テーブルの上に生々しいプルプルしたお肉が。
あかん。パパもセシルさんも解体は見せないの捌いたばかりの生肉と残骸の頭なんかはそのままデーンと置いたままだよ……
そしてピエールが蛇の頭を突いて中を食べてる……
地獄絵図のような怖いシーンになってるよ……
「パパ、パパもセシルさんもピエールもアルノーもみんなばっちいのでクリーンをするでしゅ」
パパはもっさりしてるだけだけど、アルノーとピエールは血のりと肉の破片付きなのだ。踊り食いでもしたのかな。
「ははは、ばっちいか。そりゃ困ったな」
なんて言いながらセシルさんが〈洗浄〉を使った。魔法が使えるひとは誰でも使えるのかな。だといいなぁ。
「今夜も食事をつくるのかい?」
「食事ぃ?レーションでいいだろう」
あ、この人もあかん人っぽい。
「ごはんはおいしくたのしく、なのでしゅよ」
「そりゃ暇なときは酒場に行くがなぁ」
セシルさんは大きな手で頭をカリカリかいた。
酒場がある……だと!!
三歳じゃいくら世界が違っても飲めないよね……生殺しぃ。
「俺たちは時間があったら籠って仕事していたほうが楽しいからなぁ」
ワーカーホリックですか。
寝る間も惜しんで頑張った結果、ばたんと死んでしまうこともあるんだぞ。
「おいしいごはんをたべるのでしゅ、セシルさんもたべる、いっちょにつくりましゅよ」
こんな感覚の人とパパが一緒にいたら、美味しいご飯に縁遠くなりそう。
ちゃんと三食、おやつ付きの暮らしをゲットしないと。
えらそうに言ってところで今の私は一人で料理できないので、パパとセシルさんを巻き込んで、ご飯を作ることにした。




