第10話 アルノーとピエール
結局、ゴリゴリルルカを連れて庭に出た。
パパはとても切ない顔をしつつ、仕事部屋にいったよ。
「アバババーーア゛ッー」
ピエールは庭に出た途端、まわりを楽しそうに飛んでいる。
「アルノー、ちかくだけ、おしゃんぽしたらいいでしゅよ」
『私も護衛をするのだ』
ぬぬぬ。でも草がボーボーだから探検をするわけでもなく、庭で日向ぼっこするくらいのつもりなんだけどね。
「ここをくしゃかりしたいでしゅけど、フィーにはむりでしゅねぇ」
『草を刈って何かしたいのか?』
「そうでしゅねぇ、あしょべるくらいにきれいにしたいでしゅね」
アルノーは猫科だけど、かけっこしたりボールで遊んだりしたい。
私がもう少し大きくなったら家庭菜園もいいかも。
『ふ、造作もないことだ』
その言葉とともに草むらにアルノーが突っ込んで、雑草がザザザッと揺れたと思ったら、私の背丈より高かった雑草が根元から刈られた姿で倒れた。
『ピエール、焼きはらえ』
「ア゛ア゛ーーー、タカイヨー」
えええーーーー!?
アルノーの指示でピエールが口から火を噴いた。私はビクッとして後ずさっちゃったらマッチョなルルカがしゃがんで私を支えてくれた。
勢いの良い火は刈られた雑草を一瞬で焼いて、ピエールは「ヴォエーー」と最後にゲップで小さな火を吐いた。
……えええええ…………
「アルノーもピエールもまほう、つかえましゅか……」
魔獣ってすごいんだねー……
『愚か者、私もアルノーもただの魔獣ではない。精霊の加護を得た素晴らしき存在なのだぞ』
精霊の加護のおかけで属性の魔法が使えるんだって。アルノーは風でピエールは火ってことか。
……モノリスキャットとルージュビークってことしか聞いてないし、魔獣屋さんでそんな説明受けていないから……ねぇ。
「よくわからないでしゅが、そんなしゅばらしい、なのにやしゅかったでしゅね」
魔獣の相場はわからないけど、精霊の加護が特殊だったらもっとお高くてもいいはず……いや、高かったかもだけど、お口の悪い鳥と無表情で虚無顔の猫だしな。
『ふん、いちいち「自分は高貴で特別な力がある」などと申告するわけがない。こき使われるではないか』
……私が子供で御しやすそうだから飼い主に選ばれたってこと!?
『お前はなにかおもしろい気配がしたから選んだのだ。私は面白いことが好きだからな』
虚無顔なのになぜか鼻高々に見えるの、腹立つなぁ。
「なんで、ピエール、いっしよにかう、いったでしゅか」
お友達っぽくないし、ピエールはアルノーに何か意思を示している感じでもない。
『アレは、便利だろう。それに普通の家ではなかなか引き受けられないだろうし、店の営業に支障が出ていたからな』
アルノーは店主を気に入っていて、他のコたちの教育にも悪いからって言うけど、多分ピエールのことを気に入ってるんだと思うなぁ。
『アレの元の飼い主は、嫁が愛人を屋敷に連れ込んでいたことをピエールの鳴き声で知ってな。客人の前に出せない言葉を発するから追い出されたのだ』
わぉ。ピエールの鳴き声の意味はやっぱりおピンクな言葉でしたか。嫁が悪いのにピエールとばっちりじゃないの。浮気、良くないけど家に連れ込むのって一番最低だよね。なんなんだろうね。嫁も浮気相手も気持ち悪っ。
人に飼われている魔獣は飼い主が飼いきれないと元の魔獣屋に戻されるんだって。
無責任……ではないかもだけど、飼い主に捨てられること自体は良くないよね。
「ア゛ア゛ー、イイワァ、スゴーイネッ」
ピエールが私のそばに下りてきた。思わず頭を撫でちゃう。
「ピェ!カワイー、アア゛ー、ピ、ビェ」
かわいい、元の飼い主が教えた言葉かなぁ。だといいね。
「アルノー、ピエール、くしゃをかってくれてありがと、でしゅ」
一羽と一匹を両手いっぱいに抱きしめてお礼を言った。
「いったい、何をしたんだ」
お仕事に集中していたはずのパパが庭に出てきてむき出しの土になった庭をポカーンと見ていた。
何をって言われると……困る。
私もこんなことになるとは思ってなかったよ。パパ。




