表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夏サバイバル  ヒーロー最後の7日間  作者: 双鶴


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

6/9

Day 5

午前9時15分。控室の空気は、静かだった。

直哉は、着ぐるみの頭部を膝に乗せ、じっと見つめていた。

「あと3回。あと3回“変身”すれば終わる」

そう言い聞かせながら、腰にテーピングを巻く。

首には冷却ジェル。

痛みは、もう“前提”になっていた。


田所さんが控室に入ってくる。

「今日、動き変えてみようか。昨日の回転、ちょっと危なかった」

直哉はうなずく。

「受け身、少し早めに取ってもらえますか。俺、着地がもう…」

「了解。ヒーローの動きに合わせるのが悪役の仕事だからな」

その言葉に、直哉は少しだけ笑った。


---


ステージ。

気温37度。風はない。空気は重い。

着ぐるみの中は、開始5分で限界に達する。

だが、直哉の動きは、昨日までとは違っていた。


ジャンプの角度を変える。

回転を半分に抑え、ポーズで魅せる。

敵役との距離を調整し、無理な接触を避ける。

“技術”が、痛みを凌駕し始めていた。


田所さんとの連携も冴える。

直哉の動きに合わせて、敵役が吹き飛ぶ。

観客の歓声が、ステージを包む。

「ヒーロー、かっこいい!」

「今日の戦い、すごかった!」

その声が、直哉の背中を押す。


---


ファンサービス。

今日は、初めて来たという兄弟が並んでいた。

弟が言った。

「ヒーロー、動きが本物みたいだった!」

兄が続ける。

「テレビよりすごい!生で見ると、ほんとに守ってくれてる感じがする!」


直哉は、拳を高く掲げて応える。

“守る”という意志が、動きに宿っていた。


その後ろで、スタッフが小声で言った。

「今日の動き、完璧でしたよ。さすが演劇部出身ですね」

直哉は、着ぐるみの中で小さく笑った。

“俺は、ヒーローになってる”

そう思えた瞬間だった。


---


閉園時間。

最後の子どもが手を振る。

直哉は、笑顔のポーズで応える。

痛みはある。汗も止まらない。

でも、動きには“誇り”があった。


控室に戻り、着ぐるみを脱ぐ。

汗が床に滴り落ちる。

田所さんが缶コーヒーを差し出す。

「あと2回。いけるな」

直哉は、缶を受け取りながら笑った。

「はい。いけます」


---


この日、直哉は“技と意志の融合”を果たした。

ヒーローは、ただ立つだけではない。

“どう立つか”が、すべてを決めるのだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ