~強欲の憂鬱③~
「あいつぁはー!!」
その者を見た瞬間、急に椅子から立ち上がりドルフは無言のまま、店員を口説いている若い男の元へ向かった。
「手前ぇ、ここで何してやがんだ。」
「あぁん?………げっ!!」
「よくもまぁノコノコ俺の視界に入れたもんだな。ああん?」
「ちょっと待ってくれ………。」
「待つわけ無いねぇだろがボンクラ!!」
ゴンッッッ!
ドルフの怒りの鉄拳が頭に思いきり落とされ、その男は頭を押さえながら踞った。
これ以上は、さすがに不味いと思ったジルはドルフの腕を掴んだ。
「ちょっと会長何やってんの!」
「いいんだよ旦那!こいつはこれくらいやっても!」
「知り合いでも殴っちゃ駄目だって!」
「家族なんだから問題ねぇ!」
「えっ??家族って……まさか。」
ドルフは掴まれた腕を振りほどき傍にあった椅子に腕を組ながら腰かけた。
「このバカは、俺の一人息子のガルフォードだ!」
「え?そうなの?」
「ええ、間違いありません。ドルフさんの息子さんですね。」
「挨拶しやがれ!ボンクラ!!」
怒鳴るドルフに体をビクつかせたその男はムクッと立ち上がりジルに向かって挨拶を始めた。
「どうも、領主さん。このジジイの息子『ガルフォード=ベイン』だ。宜しく頼む。」
「手前!挨拶くらいちゃんとしやがれ!!」
「まあまあドルフさん。俺がミーア領主ジル=ヴァンクリフだ。よろしくな。」
「皆さん、とりあえず座りましょうか。」
グレイが諭すようにドルフとガルフォードを椅子に座らせた。ドルフはテーブルにあったエールを一気に飲み干した後神妙な面持ちでガルフォードに話した。
「手前。母ちゃんには会いに行ったか……?」
「ああ……手ぇ合わせに行った……。」
「そうか………。」
それ以上ドルフは言葉を口にしなかった。息子が無事で安堵したのだろう。
「急に帰ってきてどうしたのです?確か鍛治の見聞を広げるため諸国を回ると言っていたのでは?」
グレイがガルフォードに帰ってきた理由を聞いた。
「実は……ちょっと前まで牢屋にブチ込まれていて。命からがら逃げてきたんだ……。」
「どういう事です?」
ガルフォードは事の顛末を説明した。
「母ちゃんが死んだ後、俺は世界を見て回ろうとあちこち回っていたんだ。インザス共和国、高天原、グリム公国、北西部諸国連合、聖国メセナ、農業国ユルク、ガイア帝国。色々な鍛治の知識を身に付けた俺は自国に戻ろうとしたとき、最後に寄った国が俺に利用価値があると言われ拘束された。大人しく言うことを聞けば痛い目にもあわず、それなりに良い暮らしが出来ると言われてな。何か作らせるみたいで、あまりに怪しかったから俺は拒否した。そしたら奴等に捕まって指示に従うというまで拷問されていた。従う振りをして牢屋から出たとき隙を見てなんとか逃げ出せたは良いが愛用の道具や設計書なんかは全て捕られ、なんとかコイツだけは取り戻せた。後は必死でこの街を目指し帰ってきたんだ。で、さっき着いて母ちゃんの墓に参った後、腹が減ってこの店に来てさっきの姉ちゃんに街の事聞いていたらジジイに殴られたってわけ。」
ガルフォードの言うコイツとは綺麗に装飾された大鎚だ。
やれやれと言った感じで簡潔に今までの状況を話したガルフォードの服がボロボロなのも頷ける。話し方からは苦労した風に思えないが相当な目にあったのだろう。
「そういうことでしたか。色々、大変でしたね。」
「まぁね。とりあえず喉乾いたしビール飲んで良いか?」
「そうでしたね。お腹も空いてるでしょうし、何か頼みましょう。」
「すまねえなグレイさん。」
「構いませんよ。」
ジルは、グレイとガルフォードの会話を言葉を発せず静かに聞いていた。そんなジルをお構いなしにガルフォードは酒や食べ物をガツガツ食べては飲んでいた。
ガルフォードが満腹になり落ち着きを払った頃、ジルが口を開いた。
「大変な目に遭ったなガルフォード。」
「まあ、おれがむやみやたらに色んな国に行ったせいだからな。」
「久しぶりのビールはどうだ?旨いだろ?」
「五臓六腑にしみわたるぜ。」
「そうか。それはよかったな。すまないが、少し聞きたいことがあるんだがいいかい?」
「いいぜ。飯食わしてもらった恩があるし何でも聞いてくれ。」
「すまないな。悪いがグレイ、ドルフさん。ガルフォードと二人で話したい。席を外してくれないかい?」
「わかりました。」
「ああ、わかった。」
グレイとドルフは席から離れ、ダリルがいるカウンターへと移動した。二人が移動を確認しガルフォードの方を向いた途端、ジルの目付きが変わった。それはまるで敵を見る雰囲気を出しガルフォードを見ていた。
「さてと、話を始めようか……。」
「なんだぁ?妙に改まって??」
「単刀直入に聞く……。お前は誰だ……?」




