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Magic of OZ~天性持ちの転生者~  作者: 赤間 そあ
~第三章 国境都市編~
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~強欲の憂鬱②~

ドルフの工房にて魔王からの依頼の品を作っていたジル、ドルフ、グレイ。もう少しで大方出来上がるところまでこぎ着けた。製作に没頭するあまり工房の外は暗く、夜鳥の鳴き声が聞こえるほど辺りは静まりかえっていた。


「あっ。気づきませんでしたが、もう夜ですね。」


「ほんとだ。そりゃ腹も減るよな。」


「どうだ、お二人さん?酒場で一杯いかねーか?」


「いいねー。」

「そうですね。たまには行きますか。」


「へへっ。そう、こなくっちゃな。酒場じゃ新しい店主が来てメニューも増えたらしいぜ。」


「知ってるよ。ダリルだろ?」


「なんだ知ってたのか。」


「昔馴染みでね。俺からローズに紹介したんだよ。」


「そうだったのか。酒場は賑わっているらしくて職人街の連中も気に入ってんだ。かくいう俺も今じゃ常連なんだがな。」


「俺たちは初めてだよ。ここは常連さんに酒場でのマナーを教えてもらうとするかな。」


「そうですね。宜しくお願いしますねドルフさん。」


「おうよ。任せとけ。」


三人は工房の片付けをし、夜の街へと繰り出した。昔は街路は薄暗く目が闇に慣れるまで歩くのもやっとだった。だがグレイが洞窟で発見した光結晶のおかけで街は夜でも明るくなり人々の暮らしに役立っていた。


「夜の街も良いものですね。」


「グレイが見つけた光結晶のお陰だな。」


「たまたま見つけただけですよ。」


「そのたまたまが他の奴じゃ出来ないんだよ。」


「あははは。そうかもしれませんね。」


「おう、お二人さん見えて来たぜ。」


ドルフが指差す場所には、煉瓦積みの二階建てで入り口はスイングドアがある大きな酒場があった。

入り口の上には店名であろう『銀の山猫亭』と書かれた看板が設置してある。ドルフは躊躇無く扉を開け入っていき、付いていくようにジルとグレイも店の中へと入っていった。


「いらっしゃいませー。あっドルフさん!!」


店員の可愛らしい猫人族(キャットピープル)らしき女性が声を掛けてきた。ドルフが常連なのがよくわかる。


「よぉー。今日は3人だ。席あるかい?」


「珍しいですねドルフさんがお連れさんといらっしゃるなんて。」


「たまにはな。」


「こちらにどうぞー。」


店員に奥の席を案内され椅子に座る。酒場の雰囲気は中々良い。まるで昔見た西部劇の酒場を思い出す。客も多く繁盛していた。


「姉ちゃん、とりあえずエールを3つ頼む。それと店主を呼んでくれや。」


「はーい。一番テーブルさんエール3つでーす。後、店長お願いしまーす。」


その女性はドルフが頼んだものを声高らかにキッチンに向けオーダーした。

麦酒にはエールとラガーがあり発酵方法が違う。エールは芳醇で濃厚な味わいと飲み応えがあり、ラガーは、のどごしが良くすっきり爽快でゴクゴク飲めるのが特徴である。前世では主にラガーが流通していたがこの世界ではエールしか無い。そのうち作るんだけどね。


「ドルフさん?一体なんだ呼び出して?」


店の奥からハゲた顔に傷のある男で店長のダリルがドルフの前にやってきた。ジルはダリルに背中を向けたままの状態で誰かはわかっていない。


「よお。紹介しておこうと思ってな。こちら、この都市で宰相をしているグレイ様だ。」


「はじめまして、グレイ=ミーアと申します。」


「それはご丁寧に。元陸の王シリウス=ヴァンクリフ騎士団副団長をしておりましたダリル=マグワインです。今は退役しましてしがない酒場の店主です。」


「宜しくお願いしますねダリルさん。」


「こちらこそグレイ様。」


「様は要りませんよ。」


「わかりましたグレイさん。でこちらは?」


ダリルはジルを怪しそうに見ながらドルフ聞いた。


(ずっと背中を向けたままだし、しょうがないが……。気づかないとは元副団長の名が泣くぞ……。)


それを見ていたドルフとグレイは失笑している。


「おい。わかんねーのかよ!!」


「あぁん!誰だてめぇ!!」


「俺だ。」


ジルは、そう言いながら立ち上がりダリルの方を振り向いた。


「ゲっっ!!ジル坊!!!」


「ジル坊はやめろっつたろーが!!お前ねぇー何やってんの!客に喧嘩売る店主がいるかよ!!」


「若が背中向けてるからでしょ!」


「あほか!客なんだからいいんだよ!!それに店員のお姉さんは俺だと気づいてたぞ!わざわざ気づかない振りして気使ってくれてんのに!」


「ほんとですかい……。」


「ああ。だから何も言わず、人目につかない奥の席案内してくれてんだろうが!!なっ?」


「はいー。領主様だって一目見てわかりましたよ。お忍びかなって思いましたから奥の席御通ししました。」


「ほれ、みろ!!」


「うっ………。すんません………。」


「ったく。しっかりしろよ、元副団長……。」


「面目無い……。」


ワッハハハハハハーー


ドルフとグレイは大声で笑っていた。ジルのダリルを叱る声が店内に響き渡り他の客まで笑い始めた。

ジルに叱られたダリルの情けない姿は酒の肴になっていた。


「ったく、しょうがねぇダリルの顔を、立ててやるか。」


そう言うとジルはグラスを片手に他の客の前に立った。


「騒がしくして申し訳なかったな皆。ここは俺が持つ。目一杯楽しんでくれ。」


シーーーーーン…………………。


(あれっ??嬉しくなかったのか??)


「「「 うぉーーーーー!!! 」」」



「ヒャッホーイ!ただ酒だぁー!」

「最高だぜウチの領主はー!!」

「ダリルに感謝だな!!」

「感謝すんのは領主さんを連れてきてくれたドルフだろ!」

「違いねぇーハッハッハッ!」



ジルの言葉に、店内は一瞬静寂に包まれたが、冒険者や職人達は一斉に雄叫びを上げジルに向けて礼や歓声が上がった。


「あぶねー、恥じかくとこだったぁー……。 ん??あいつは何してんだ??」


だがその声が上がる中で、さっきとは別の店員の女の子を必死で口説いている奴がいた。その者は着衣したものはみすぼらしい外見だが、脇には鮮やかな輝きの武器らしい大鎚があり、それにジルが見ているとドルフが急に立ち上がった。

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