~嫉妬の日常②~
アイスが作ったケーキなる菓子を皆で食べ、相変わらず茶を縁側で啜っていた。こんな穏やかな日々が続いていくと思っていたのだが、その考えは改める事になっていく。
「いやー喰った喰った。旨かったー。」
「……ヂヂ、食べ過ぎ……。」
「ほんとじゃわい。あるとはいえ10個も平らげるとはのう。」
「お前、腹壊すぞ。」
「まだまだいけるんですがね、夜飯の分の胃を開けとかなきゃなんねえんで腹八分目にしたんでさぁ。」
「……あれで、八分目……。」
「ええ、まぁ。だってお嬢の菓子が美味いんすもん。毎日喰いたいくらいですぜ。」
「ヂヂはやっぱり食いしん坊だワン。」
『もう無いの…………??』
「まだ、喰う気かヂヂ??ほんとに腹壊すぞ?」
「へっ??喰わないすよ。」
「じゃあ、コスケとヤスケか??」
「僕もごちそうさまですワン。」
「同じくですバウ。」
「族長じゃないんですかい?」
「いや、私じゃない。マツバ様…?」
「儂でも無いわい。今の声、もしかすると………。」
元老マツバがハッと気付き、神樹の方を振り向いてみると下枝の先に優しく光る大きな球体が見えた。
「なんじゃありゃ!」
「光る玉??」
「うむ………。そろそろ、産まれるのかのう………。」
「そうですか……。とうとう……。」
十大竜王『最期の一年』が始まる予兆。ニーズヘッグを名を継ぐ者は神樹から産まれる。
生まれた日より一年後先代竜王は後継者に自らの全てを捧げ眠りにつく。
幾度となく受け継がれてきたその儀式が、マツバから次なる子へと承継が始まった証しだった。
その光る球体の傍に皆で行き確めてみると、その光の中には女の子の赤子がスヤスヤと丸く眠っている様子でいた。
「こ、こんなことがあるのか………。」
「どうしたのですマツバ様?」
「うむ……。本来は子竜の姿で産まれるのが通例なのじゃが、この子は既に人化しておる……。竜王としての力が、アイス同じ程の高みにあるのじゃろうて……。」
「そんなにですか……。」
突然、強い風が庭先に吹いた。
「ちょっと!そんなことより、落ちそうすよ!」
「危ないワン!!」
風に揺られた光の玉はゆらゆらと揺れ、枝先からこぼれ落ちた。地面に激突すると思われたその時……。
「………ふぅ。セーフ………。」
アイスが落ちそうになる間際、ギリギリで滑り込みその玉を体を呈して守ったのである。
玉は徐々に消え始め中にいた女の子は目を覚まし、何もなかったように目をパチくりさせ、キャッキャッと笑顔を振り撒いた。
「………こっちの気も知らないで。楽しそう………。」
「ほっほっほ。お姉ちゃんに抱かれて喜んでおるわい……。」
「………お姉ちゃん………?」
「ああ、そうじゃよ。アイスがこの子のお姉ちゃんじゃ。ささ、こんなところで裸のままじゃ風邪を引く。家の中に入ろう。」
「……ん。わかった………。」
「ダグラスよ、主はジル君に知らせを。ヂヂはこの子に食べやすいものを作ってもらうためブレッド殿を連れてくるんじゃ。ヤスケはリップ嬢に子供の服を貰ってきてくれ。コスケは湯を沸して湯編みの準備じゃ。儂は布団の準備をする。皆、宜しく頼むぞい。」
「「「了解!!!」」」
マツバの指示のもと、各自一斉に飛び出していった。
~ 30分後 ~
バタバタバタッ バンッ
大勢が廊下を走る音が聞こえ、襖を勢いよく開ける音がした。
「「「「 生まれたのかぁーーー!!! 」」」」
大声を張り上げ部屋に入ってきたのはアイス以外の七魔王達だった。
「赤ちゃんは元気なのか!?」と強欲の魔王ジル。
「男なんかー女なんかー。どっちやー?!」と傲慢の魔王ヴァン
「ありったけの子供服持ってきたよー!!」と怠惰の魔王リップ。
「どんな飯が良いか分からんかったし、とりあえずいっぱい持ってきたぜ!!」と暴食の魔王ブレッド。
「抱かせて抱かせてー!」と色欲の魔王ローズ。
「どこだ、どこにいるんだ………。」と憤怒の魔王ラス。
「なんじゃいなんじゃい!騒がしいわ!いまアイスとコスケが湯編みさせとるわい!ちぃーとは落ち着かんかい!!」
「「「「「 すんません……。 」」」」」
マツバに七魔王が叱られていると奥の襖が開き、タオルにくるまった小さな赤子がアイスに抱かれてやってきた。
「………皆、どうしたの………?」
「生まれたって聞いて飛んできたんだよ。」
「……お風呂入って。寝ちゃった……。」
「そっかそっか。」
「……布団に寝かせるね……。」
アイスはマツバが用意した布団に赤子を寝かせ布団をかけた。
布団の回りには七魔王とマツバ、ダグラスにヂヂ、コスケとヤスケが位置した。
((((( 可愛いぃぃぃぃぃぃ! )))))
風呂上がりの少し頬に赤みがさした赤子の顔を見た一同は声に出さず叫んでいたのだった。




