~傲慢の遊戯③~
ゴォーーン ゴォーーン ゴォーーーーン
15時を知らせる鐘の音がミーアの街中に響き渡り、卒業試験が開始された。
「ダッハハハハハハ。あいつ等、慌てとった姿が面白すぎやわ。たかが三ヶ月の訓練でワイを捕まえられるわけないのになー。ほんまアホな奴等やでー。それにジルに作ってもらったこの『隠者のローブ』があれば絶対見つからんしなー。」
ヴァンがジルに内緒で作ってもらっていた物。それは、『隠者のローブ』といい、姿を透明にして他人の視界から見えなくするアイテムだった。見た目は普通の布製のローブだがジルの魔法《付加》で光学迷彩を付与されていた。
「これを着て気配遮断すりゃ見つかるわけ無いしな。簡単な話やでー。どっかで昼寝でもして時間潰すとすっか。」
ヴァンは街の西側に位置する、とある住民街民家の屋根の上で日向ぼっこをしながら時間を気にせず昼寝をすることにした。
~ 一時間後 ~
卒業試験と題した『鬼ごっこ』。一人で逃げるヴァン=スピリタスを追いかけるゼネガー、ネロ、ルゥを含む総勢20名の鬼達。ハラハラドキドキワクワクが入り乱れての大乱戦の予定だったのだが……。
ヴァンを見つけた5人の若い兵は一様にキョトンとしていた。
「おい…………。まじか…………。」
「腹出して、爆睡してるよこの人………。」
「ありえねぇー。」
「これって、捕まえていいのか?」
「んーーー。部隊長だし顔を立てたほうがいいんじゃね?」
「けど、負ければ地獄行きだぜ。」
「だよなー。」
「とりあえず縄でふん縛って連れて行くか?」
「そうだな。後はゼネガーさんやネロに任せようぜ。」
「だな。」
といった感じで若い兵に練兵場に縄でぐるぐる巻きにされ連れてこられたヴァンだったが今だに起きない。
「はぁー何やってんだこの阿呆は……。」
「さすがに予想してませんよ。この結末。」
「僕が空から見ていた意味もないよー。」
「おい。桶一杯の水を持ってきて、これに掛けてくれ。」
ゼネガーは、5人の若い兵に指示を出し一斉にヴァンに向けて水を掛けた。
バッシャャャャーーーーーン!!
「うおっ!!冷たっ!!誰や!何さらすんじゃボケ!!!」
水を掛けられ目を覚ましたヴァンは、自らの状況に驚いた。
「なんやこれ!身動きとられへんやんけ!!誰やこんなことしよったアホは!!」
「アホは、お前だ!!!何やってたのか忘れたのか!!!」
「何やと!何って………………。あっ!!!」
「やっと寝惚けから目を覚ましやがったか!」
「ワイ捕まってもーたんかい!ゼネガーにか?ネロか?ルゥか?」
「ちげーよ!若いこいつらにだよ!」
「う 嘘やん………。」
「こっちの台詞だそれは……。まあいい。これで、あんたの言っていた地獄の訓練は無しだ。それになんでも言うこと聞く話だったよな?」
「うっ……………。まぁ待てや。訓練は無しにしたるから、褒美は何とかならんかなーって…………?」
「はいー??傲慢の魔王様ともあろう御方が自分の吐いた唾を飲むんですかい?」
「やだなーゼネガーさん。そんな事するわけ無いじゃないですかー。魔王様ですよー。ね?魔王様ー!」
「そうですよ。傲慢の魔王様なんですから。きっと太っ腹ですって!」
「あ 当たり前やんけ!何でも言うてこいや!」
「言ったな。」
「ええ、ハッキリと。」
「間違いないよー。」
額から汗を流しながらサングラスの上からでもわかるような涙目になっているヴァンを尻目にゼネガーは褒美を提案した。
「じゃあ、褒美だが傲慢の旦那。20名の部隊員全員に一人につきひとつ願いを叶えてもらおうか。」
「ちょっと待てや!褒美はなんでもひとつだけって言うたやんけ!」
「だーかーらー。最初の褒美が『部隊員一人に付きひとつの願い』って事だ!」
「それやったら、20個褒美用意してんのと変わらんやんけ!!」
「おんやー。傲慢の魔王様が駄々を捏ねるので??」
「先程、何でもと言われたかと?空耳でしたかねー?」
「僕もハッキリ聞いていたから間違いないよー!」
「お前ら悪魔か!!血も涙も無いんかー!」
「魔王の部下だしなー。」
「地獄なんかへっちゃらの魔王の部下だしなー。」
「七魔王のリーダーの傲慢の魔王ルシフェルの部下だしなー。」
「クソッタレがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
傲慢の魔王ヴァン=スピリタスに対して20名の部下のおねだり祭りが始まった。
希少級の武具一式を頼む者、大量の金貨を頼む者、家の掃除、街の溝さらい、家畜の世話、挙げ句には憤怒の魔王ラス=ギャレットの新人冒険者鍛練に参加など、ヴァンには金を出させ、体で払わせ、精神的に追い詰める事で20名は地獄の訓練の鬱憤を晴らしていったのだった。




