~色欲のお仕事②~
「さぁどうぞ。入ってくださいな。」
「お邪魔します。」
扉の前から聞こえる声はローズなのだが、あと二人の声がする。
男と女の声だ。
ラベンダーとガーネットには、どこかで聞いたことのある持ち主の声だった。
ガチャ
扉のノブが回り、ローズの後から二人の男女が部屋へと入ってきたた。
一人は坊主頭で顔に傷があり、いかにも歴戦の兵みたいな風貌の男で、もう一人は肩までの黒髪と眼鏡が特徴の仕事が出来る感じが漂う女だった。
「よぉー。久しぶりだな。」
「元気にしてた?」
それは、プリスデンにおいて、18歳の統治に向かう前にジルが出会っていたダリル=マグワインとメリル=ラッシュだった。
ラベンダーとガーネットにとっては、陸の王シリウス=ヴァンクリフ宅に仕えていた時に幾度も会っていた旧知の仲である。ダリルはシリウスの私設騎士団元副団長で今は道具屋の親父であり、メリルは安心安全がモットーの奴隷商の女主人。
「ダリルさん?メリルさん?」
「あら、お久しぶりですわ。」
「ああ。ジル坊の見送り以来だな!」
「そうですわね。お二人ともお変わりなくて?」
「まぁな。相変わらず、のんびり暮らしているよ。」
「それは、あんただけでしょ!私は忙しい日々よ!」
「まぁ、いいじゃねぇか。固いこと言うなって。」
久方ぶりに会った知った顔だったが、ラベンダーとガーネットは通常運転。だが少し嬉しそうにも見えた。
「まぁまぁ積もる話は、お茶をしながらね。ラベちゃん、お願いできる?」
「わかりましたわ。」
客人のメリルとダリルは応接室に通され、ラベンダーの淹れた紅茶をのみながらローズは自己紹介を含めオーガスト、シェリーを紹介し皆で談笑をしていた。
「ところで、お二人を何故こちらに??」
シェリーがローズに聞く。
「そうね。そろそろ本題に入りましょうか。二人をここに呼んだのは、『歓楽街』を仕切ってもらうためよ。」
「えっ?元締めはローズ様じゃ?」
「シェリーちゃん忘れたの?ジル君に依頼されたもうひとつの仕事?」
「あれですか?歓楽街に足を運ぶ者からの情報収集と調査。」
「そう。そして不貞の輩の暗殺。わたしやラベちゃんガー君は、あくまで裏に徹しなきゃならないでしょ?だからワタシが表に出る訳にはいかないの。あくまでワタシは裏の顔。だから表の顔としてメリルさんとダリルさんに来てもらったの。」
「…ということは?」
「そう今日から、お二人は、この街の一員として暮らしてもらうことになりました。」
「まぁ、そういうこった。」
「よろしくね皆。」
プリスデンでは商人としてメリルは確固たる地位を築きまたダリルも大公爵へ道具を卸売りしそれなりにだが忙しい日々だったのに、それを捨てミーアに来たのがラベンダーには少し不思議に思えた。
「ちょっと待ってくださる。プリスデンでの道具屋と奴隷商はどうなされたのですわ?繁盛していたのでしょう?」
「ああ、道具屋は退役した昔の仲間に譲ったんだ。」
「奴隷商はミーアに移転すれば問題ないしね。幸いジル様が開発された転移玉で引っ越しが簡単だし。奴隷商館はここの隣の屋敷をくれるらしいから問題ないわ。それに何より………。」
「それに??」
「人手が多くいる事業でしょ?うちの奴隷達をほぼ全員使ってもらえるしね。足りなかったら増やせばいいしね。酒場の切り盛りや宿屋の従業員、娼婦に呼子。あぁー考えただけでもワクワクしちゃう!こんな儲かる話に乗らない手は無いでしょ!簡単に見積もっても今の倍!いや、三倍は儲かるわよ!!いやーほんと有り難いわ!!フフフフフフフフフ!!!」
算盤を叩きながら頭の中で計算しながらウキウキしているメリルの姿は商魂たくましい。メリルは金の匂いをかぎ分けミーアに来ることにしたのだろう。
(この人は、分かりやすいですわね。ほんとに、金の亡者の言葉が似合う。)
だが、ダリルが実家でもある道具屋を他の人に店を譲ってまで来たのには何か訳があるとラベンダーは、そんな気がした。
「ダリルさんも、商売のためですの?」
「俺の場合は、ジル坊に酒場の切り盛りとこっちでも道具屋をしないかと誘われたんだ。昼は道具屋、夜は酒場の親父ってとこだな。」
「それだけですの?」
「どういうことだ??」
「こちらに来た理由が少し弱い気がしましたので。」
「あぁー、やっぱわかるかぁー。」
「ええ。まぁ。」
「嫁探しだ。」
「は??」
「だから、嫁探し!俺も良い歳だし、そろそろ所帯を持てとシリウス様にも言われちまってな。心機一転、新しい土地で嫁探しながら頑張ろうかと思ってな。」
「なんですの、そのしょーもない理由は!!」
「バカ野郎!俺はいたって真面目だ!!」
「ダリルさんにはメリルさんがいるじゃありませんか!」
「アホか!あの銭ゲバに恋愛感情なんかあるわけねぇーだろうが!しかもあいつとは従兄弟だ!!」
「え!?従兄弟ですって??」
「そうだ!」
「嘘ですわね!全然似てませんわ!」
「ほっとけ!!」




