~憤怒の行動③~
ラス=ギャレットとプリズナーは領主ジル=ヴァンクリフから聞いた迷宮に足を運んだ。そこはミーアから約1km程南へ歩いた森の中にあり、両扉のついた洞窟らしき場所だった。入り口には誰かが利用した形跡があり、取っ手部分以外には苔や蔓草等が付着していた。入口の邪魔する草を取り除き探査を始める。
薄暗い洞窟内は湿気と天井から滴り落ちる水滴が異様な雰囲気を醸し出す。
「ジルによると、この迷宮は50階層あり、10階層ずつ様子が様変わりするらしい……。」
「へぇー珍しいっすね。転換迷宮っすか。」
「ほぅ、詳しいな…。」
「少しばかり、探索者の真似事していたもんで、それなりには。」
「冒険者ではなくてか……。」
「そっすね。周りに頭を使って行動する者が少なかったんで……。」
「なるほどな……。貴様の階級は…?」
「S級っす。」
「なにっ……!ならば奴等に農業国ユルクに、行かせなくても良かったではないか……。」
「駄目っすよ。探索者のS級だけじゃ格が足りませんって。憤怒の旦那は世界で5人しかいない冒険者最上位なんすから、その方が開く冒険者組合支部に、せめて冒険者上位が何名かいないと。」
「フフフハハハ…。貴様最初から分かって、自分は馬鹿の振りして奴等をけしかけていたのだな……。」
「何の事っすか。戦いじゃ、真面目さんと戦闘馬鹿二人には勝てませんから。あの人等に頑張ってもらうしかないじゃないですか。」
「その腹黒さ、中々だな……。」
「それ、誉めてます??」
「ああ……。ならば、城で俺から逃げたのも計算という事か?」
「ありゃ、本心ですって。誰が好き好んで冒険者最上位と闘いますか。しかも、魔王すよ。怪我するだけ損ですもん。」
「ズル賢い奴だ……。」
「そりゃ、俺っちだって敵が刃を仲間に向けりゃやりますよ。けど、ありぁ違いましたからね。挑む方が阿呆なんですって。」
「フフフ、やはり腹黒いな……。」
「絶対、誉めてないでしょ。」
ラスとプリズナーは雑談を織り交ぜながら下層へと降りていき、道中に下級の魔物や魔獣が襲ってくるが容易く退けていく。
9階層に着く頃、プリズナーはラスに階層主の事を聞いてみた。
「次10階層っすけど、どんな階層主いるんすかね?」
「前の階層主ならばこれに書いてある……。」
ラスは迷宮探査前にジルから閉鎖する直前の調査報告書を受け取っていた。
迷宮は10階層毎に階層主が必ず存在し、それについてはどの迷宮においても変わらない。ただし魔物や魔獣の生存競争において、階層主が交代する場合があり今回は、その調査も兼ねてる。階層主は冒険者に倒されても階層主の部屋でならば時間が立てば生き返ることができる。
ジルから貰った迷宮の資料では、以前ならば、
10階層 下級魔物 「骸骨兵」
20階層 下級魔物 「真似人形」
30階層 中級魔虫 「血蛭」
40階層 中級魔獣 「野生狐」
50階層 中級魔物 「霊鎧」
と、書き記されていた。
「んーーー。雑魚っすね。」
「雑魚だな……。」
「こんな、魔物じゃ今時誰も来ませんて。」
「まぁな……。変わっていると思うが期待出来ないかもしれん……。」
「とりあえず、10階層目指してみますか?」
「ああ、そうだな……。」
二人は、"どうせ、大した魔物じゃないだろう"と思いながら階層主のいる10階層を目指す。
~10階層~
9階層から10階層に下り階段を一段づつ降り10階層に着くとそこには大きな扉が現れた。
階層主の部屋だ。
「さぁて、入りやすか。」
プリズナーはそう言って大きな観音開きの扉を開けた。
部屋に入るや否やラスやプリズナーに階層主が出す威圧感を感じ取られた。
暗闇の部屋だったが徐々に目が慣れていき階層主の全貌があらわになりその姿を見たプリズナーは少しだけ驚いた。
「へぇー。下層主がこいつですかい。」
「上級魔獣、地獄犬か…。」
「旦那ぁ、来て良かったすね。」
「まだわからん…。後はどれほど強いかだな……。」
地獄犬を見た二人は期待値が上がったことに喜んでいた。
地獄犬は思う。普段なら自らの姿を見た冒険者は恐れおののき涙を流し生きることを諦め我に喰われる者ばかりだったが、目の前にいる二人の冒険者は自身を見て笑い喜んでいる。
地獄犬は、そんな事をされたのは、初めての経験で無性に腹が立つ。
が、なにか嫌な予感がしてしょうがない。様子見に二人の冒険者に殺気と威圧を放つ。
「おぉー。やる気満々。どうします?俺っちが相手しましょうか?」
「ああ…。任せる……。」
「そいじゃ、ささっと終わらせます。」
『小鬼ごときが我に歯向かうか!身の程を弁えろ!!』
「おおーー!話せる魔獣!!珍しいっすね。」
「プリズナー……。予定変更だ…。捕縛しろ……。」
「へへっ。了解っす。」
プリズナーは魔法小鞄から拘束するためロープを取り出し捕縛態勢を取り地獄犬に向かった。
「んじゃ行きますかっとー!!」
~10分後~
「旦那ー。終わりましたよー。」
目の前にはプリズナーによって縄でぐるぐる巻きにされた地獄犬が涙目になりながらまるで捨てられた子犬の様に鳴いている。
「思ったより時間がかかったな……。」
「捕縛ですからね。しょうがありませんって。で、こいつどうするんすか?身ぐるみ剥いで、毛皮と肉に捌きます?」
『待って待って!!殺さないでーーー!!何でも言うこと聞きますからーー!!!』
「ほぅ……。何でもだな……。」
ニタァァァァァァーー
ラスとプリズナーは、怪しい笑みを向けた途端、ヘルハウンドはギクッと体を硬直させた。
「フフフ。ならば、この迷宮の全てを話してもらおうか……。」
『話したら……殺さないでくれます……??』
「内容による……。話さぬならば………。」
ラスはゴキゴキッと拳を鳴らす。
『言います言います!!』
「では、早く話せ………。」
『わかりました!わかりましたよ!!せっかちなんだから………。』
「ああん……。」
『ゴ ゴホン。ではまず、この迷宮は全60階層で出来ていて、各階層と主はこんな感じです。』
10階層 洞窟区 上級魔獣 「地獄犬」
20階層 森林区 上級魔獣 「大熊」
20階層 平原区 上級魔鳥 「鶏蛇」
30階層 山岳区 上級魔蛇 「石化蛇」
40階層 街路区 上級魔物 「魔像」
50階層 毒沼区 上級魔虫 「黒大百足」
60階層 古城区 特上級魔物 「魔人騎士」
『これくらいしか分かりませんけど……いかがでしょう……?』
「これは、間違いないのだな………?」
『そ それは、もちろんです!!』
「クックック……。アハハハハハ!!」
「旦那!?どうしたんですかい??」
「すまない……。面白い名を見つけたものでな……。」
「面白い名??」
「60階層主を見てみろ……。」
「んーーーと。あっ!!なるほどー。」
「まさか、こんな名を名乗る輩がいるとはな……。」
『一体どういうことで???』
「ああー。お前、知らなかったよな。このお方は、憤怒の魔王サタンのラス=ギャレット様だ。」
『えええーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!魔王さまぁーーーーーー!!!!!』
「五月蝿い………。」
『ってことは、ダンジョン主の魔人騎士様とは何か関係が??』
「さぁな……。おい、犬。こいつのところへ案内できるか………?」
『そりゃ出来ますけど。本来、駄目なんですが直通経路使えばすぐですよ………。』
「ほう……。便利だな……。ならば連れていけ……。」
『ちなみに、会って何するんです?』
「何もしない……。多分な………。」




