~憤怒の行動①~
~冒険者組合 ギルド会館 三階 代表私室~
「…………やっと届いたか……。」
オズワルド王国、国境都市ミーアの首長で強欲の魔王でもある、ジル=ヴァンクリフ辺境伯の依頼により、この都市に冒険者組合を設立することになったのだが、ミーアで起こった戦争でこの街の冒険者組合は解体されていたのだ。冒険者組合を復活させるにあたり、必要な書類等が明記された申込書一式を冒険者組合総本部から取り寄せていたのだ。
その封筒を開け確認したところ、おいそれと簡単には設立出来ない事が判明した。必要なものがあり、それらを用意しなければならなかった。
1 冒険者組合本部への再申請書と許可証交付
2 冒険者組合支部代表になる為の試験の合格書と任命書
3 本部への新設上納金と年間上納金
4 潤沢な運営資金額の明記
5 支部予定場所近隣における30階層以上の上級迷宮の存在確認
6 冒険者組合支部施設の用意
7 冒険者、探索者の教育
8 上級冒険者、上級探索者の確保
これらが必ず必要とされる。
「………面倒だな…。」
冒険者組合は独自組織で、例え国であっても口出しを禁じられ決して私利私欲で利用できない治外法権を有する。
その為、冒険者組合支部長になる為には試験を受けなければならないらしい。
試験は筆記と実技があり100点満点中90点以上で合格なのだが、特例もある。それは、冒険者としての実績だ。
冒険者には階級があり下位のG級に始まり、F級、E級、D級、C級、B級、A級、S級、SS級、そして最上位のSSS級があり、S級以上の冒険者ならば無条件に支部長になれる仕組みだ。
幸い、俺は冒険者経験があり階級もSSS級持ちだから問題はない。
(そういえば、冒険者時代何度か支部長にスカウトされていたな………。)
次に本部への上納金と運営費だが、金に関しては心配などはない。ジルとアルディ王に出させれば良い。教育に関しては、兵士教養機関との合同訓練も考えていたので然程難しくはないだろう。
施設の用意に至ってはすでに用意されていおり、支部の認可が下りれば本部より、受付や薬師、事務方が派遣される手筈になっており此方も大丈夫だ。
次は5番目にあたる"上級迷宮の存在確認"
"迷宮"
下級、中級、上級、最上級からなる冒険者には馴染みのある場所で、一攫千金を狙うために日夜冒険者や探索者は迷宮に潜る。迷宮の形は様々で洞窟みたいな場所もあれば、城や塔などの人造的な場所もある。
階層の数で迷宮の階級が決まり、下級ならば10階以下、中級ならば20階以下、上級ならば50階以下、最上級ならば50階以上となる。
したがって、冒険者も階級で入れる階層が決まっているというわけだ。E級F級G級の下位冒険者は10階層まで、B級C級D級の中位冒険者は20階層まで、S級A級の上位冒険者は50階層まで、最上位のSS級SSS級冒険者は最下層までとなる。
下位冒険者は身の丈に合った迷宮を争覇しながら、自らの階級を上げ、中級迷宮に挑むというわけだ。
迷宮は、実のところ多く点在し探すのは容易い。だが上級ダンジョンとなれば話は別だ。
何せ迷宮に潜らなければ30階層以上あるか確認できないからである。しかし利点もある。上級迷宮や最上級迷宮が近くにある街はもれなく発展するのだ。上級迷宮には希少な魔物が多く、それ目当てに大勢の冒険者が集い魔物の素材や肉等が多く街のギルドに買い取られ、その金を街に還元するからだ。中でも迷宮の魔物の体内にある魔核や魔石は高値で取引される為、冒険者には人気だからだ。
『迷宮は生物』
迷宮に関わる者ならば当たり前のように知っている言葉である。
何故なら、刻々と少しずつ迷宮内は変化するからだ。大きな変化で言うと、階層が増えたり、強い魔物が存在したり、珍しい鉱石が採取できる。10年も経てば中身がごろっと変わっていたりすることも珍しくは無い。
以前、ジルが治める前には、冒険者組合支部がミーアには存在していたが戦争の影響で支部は撤退した経緯があり、その事を考えると近くに上級迷宮があったのは予想できる。しかし長年使われていないとなれば迷宮内が変化していることも予想できた。
とはいえ、探す手間が省けたのは大きい。後はその迷宮が何階層まで増え、どう変化したかを確認しなければいけないだろう。
最後に8番目の"上級冒険者と上級探索者の確保"だ。
「上位冒険者の確保か………。フン………奴等に任せてみるか………。」
そう言うと、ラス=ギャレットはギルド会館裏手にある練習場に向かった。そこでは、兵士教養機関ね若い兵と共に日々鍛練を行っている男達の姿があった。
その中にいる4人を呼び、練習で流した汗を湯水で洗ってから三階の自室へ来るように言い付けた。




