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Magic of OZ~天性持ちの転生者~  作者: 赤間 そあ
~第三章 国境都市編~
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~暴食の熱意②~

俺は、旨いパン作りに必要な小麦を調達する為、城門から街を出て隣にある村に向かった。

この世界は美味いという感情が希薄なため、料理の分野において発展は著しく衰退している。酒だけはエルフ達の酒造があるだけマシなのだが、それでも前世と比べれば天と地ほどの差がある。

食材、料理、酒造、家畜や野生の獣の解体など、色んな事を伝授しなくちゃなんねぇ。

(俺だけ、やたら仕事多い気がするが気のせいか??)


そんなことを考えながら散歩していると、ふと気づいたときにはもう村に着いていた。村では、そろそろ秋の野菜や果物の収穫が始まる様子で、村人達はその準備で忙しそうに走り回っていた。

俺の目当ての麦も元気良く育っていて、ときおり流れる優しい秋風に穂がゆっくりと揺れていた。

厳しい冬を越すためには秋に採れる作物の収穫量がある程度、備蓄できないとまずい。

だが、これだけ村の皆が忙しくしているところを見ると、それは杞憂みたいだな。


俺は遠巻きにその村人たちを見ていたのだが、その中に熱心に収穫量の計算をしているヒルデの姿があった。


「おーい。ヒルデー。」


「あっ!ブレッドさん!!お疲れ様です。」


「おう、お疲れー。精が出るなー。」


「そりぁもう。今年は麦と芋と大南瓜が豊作ですし、明日から芋と大南瓜の収穫が始まりますからねー。皆大慌てですよ。」


「嬉しい悲鳴じゃねーか。」


「今年の冬も街や村の皆がひもじい思いをしなくて済むと思えば、これくらいへっちゃらですよ!ミリアリアの漁村も大漁が続いてて、ブレッドさんに教えていただいた魚の干物を作ってますよ。ほんと、助かります。」


「ここの冬は厳しいからな。今のうち出来ることは今の内しとくに限るからな。」


「ところで、今日はいかがなされたのですか?」


「麦を使ってパンを作ろうと思ってな。」


「パンを……ですか………??」


「ああそうだ。今までのとは一味も二味も違うパンだ。」


「へぇー。それは楽しみですね。なら、今年の麦を用意しましょう。」


「おう、すまんな。だが今までの製粉方法じゃなく新しい方法でと思ってるから穂のままで頼む。他の者にこのやり方を覚えてもらいたいしな。」


「製粉方法?石で叩いて潰すだけでしょう??」


「それじゃあ、せっかく作った粉に麦殻が混ざって不味くなるだろ。そこで、こんな物を持ってきた。」


俺は、魔法鞄から製粉に使える道具を取り出した。

(米が手に入った時に使うようにジルに作らせといてよかったな。)


千歯扱(せんばこき)

木摺臼(きずりうす)

唐箕(とうみ)

(ふるい)

石挽臼(いしひきうす)


「何ですかそれ??」


「やりながら説明してやるよ。麦を持ってきてくれ。」


「わかりました。では村長の家で待っててください。」


「ああ、わかった。」


そういうと、ヒルデは麦畑に向かい村人と共に新麦を刈り始めていた。

俺は村長宅に行き、ちょうど休憩していた村長と茶を飲みながら談笑しているとヒルデがポルタと一緒に麦を持ってやってきた。


「ブレッドさん持ってきましたよー。」


「ああ、ご苦労さん。ポルタも手伝ってくれたんだな。」


「んだ。何か面白いものが見れると聞いて一緒に来ただ。」


「まず、千歯扱(せんばこき)は麦の穂だけを取る道具でな、穂先をそいつの歯先にいれて引っ張りゃ穂だけとれる。んで木摺臼(きずりうす)の穴に穂を入れて回しゃ穂殻と実に分けられる。だが細かい殻が残っちまう、そこで唐箕(とうみ)の出番だ。こいつの中に摺たての実を入れて取っ手を回すと風を巻き上げ殻を飛ばし実だけにする。更に細かな殻を篩をかけて取り除いて、最後に実を石挽臼(いしひきうす)で砕き、粉末にすると真っ白な小麦粉の出来上がりってわけだ。どうだ?」


「こ、これは!」

「綺麗……。まるで雪みたい……。」

「んだ。いつもおいら達が使ってる小麦粉と違うんだな。」


村長とヒルデそれにポルタの3人は俺の作った小麦粉の出来映えに惚れ惚れした様子だった。

いままでの小麦粉からは考えられないほどの美しさと、きめ細やかさなのだから驚くのも無理はない。


「しかし、道具だけでこんなに品質が上がる物なのですな。」


「それだけじゃねぇぜ村長!作業スピードが上がるし、村人の負担も減る。便利な道具は人の心を豊かにするからな。」


「まったくもってそのとおりですな。流石ですじゃ。」


「ダッハハハ。だろ?小麦粉は本来、こういうもんだ。だが驚くのはまだ早いぜ。これからが本番だ。今度は人の口と腹を豊かにするぜ!」


俺は机の上に、パンをより一層柔らかくそしてフワフワにするための"ある物"を取り出し置いた。


「瓶に入ったモモノミ?……ですか……?」


「おお、良く分かったなヒルデ。」


「そりゃわかりますよ。」


「まさしく、これは水に浸し密封したモモノミだ。」


「で??これが何です??」


「モモノミ。」


「じゃなくてですねー……。これとパンが柔らかくなるのとなんの関係があるんですかって事が言いたいんですよ…。」


「わかったわかった。ちゃんと説明すっからよ。」


「…お願いします。」


「パンを柔らかくするためには、絶対必要なもんがいる。そいつは酵母って言うんだが瓶の底に溜まったものこそが酵母だ。これを小麦粉と混ぜて焼くだけで柔らかいパンが出来る。」


「たったそれだけで?」


「論より証拠だ。今から焼いてやるから、待ってろ。その間に、ミリアリアと蔵元を呼んどいてくれねぇか?あいつらにも意見を聞きたいからな。」


「わかりました、では早速。けど、今からなら夕方になりますよ?」


「大丈夫だ。頼んだぜ。」


ヒルデは、漁村のミリアリアと山森の泉にある酒造蔵にいる父親のハルラス=アディスンに通信珠にて連絡を取り、夕刻には農村に着くようにすると二人はヒルデに伝えたのだった。

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