~魔王~
最高神ゼウルフが神界に帰る間際に言ったマナからの伝言に、大声を出しながら冷や汗を垂らしていた俺の姿を見た場にいる者達は、声を圧し殺すように失笑していた。
「なんや自分、女神とデキとったんかい。」
ヴァンがあざけ笑うように俺に言ってきた。
「……………生前に付き合ってたんだよ。転生してから一回も会えてないけどな。そんなことより、俺は魔王になって、これからどうすりゃいいんだよ?」
行きずり的に魔王になってしまったが、魔王の役割が把握できず、どうすりゃいいのかわからない。
「魔王は、咎人の情報を集め対処する。基本それだけやねん。」
「それだけって……。んじゃ、余った時間は何してんだよ?」
「自由行動や。」
「………。お前ら、今までどうしてたの?」
「ワイは情報収集にいつも飛び回っとるからなぁー。普段こいつらがどうしてるか知らんねん。」
ヴァンは親指を横に向け後ろにいた他の魔王達を指しながら言った。咎人の事はヴァン自身が情報収集するほか、神界からの連絡に頼る他に無いらしく、一人で集められる情報はたかだか知れていた。
「悩みの種っちゃ種やけど、こればっかりは移動範囲が大きいワイしかできひんからなぁ。」
「移動範囲が大きいって??」
「あぁ。ワイは種族、堕天使やろ。いまは隠してるけど羽があるさかい飛べるんよ。」
「へぇー。そうなんだ。」
「ん??あんまり、驚かんな??これ言ったら大概、驚かれんのに。」
「だって、空飛ぶくらいなら俺もできるしな。」
「そういや、闘技場で竜に跨がってたな。」
「いまは、鯨に乗ってるぞ。」
「鯨?ああー!妖術士を倒したヤツかいな?」
「うん。」
「そんなんまで出来るんかいな。自分、考えようによったら魔法で何でもできるやんけ!そや、自分の魔法で『咎人』見つける事もできひんか?」
「おっ!なるほどそりゃいいかも……。んじゃ、創ってみるからちょっと待ってて。」
俺は目を閉じ、両手を体の前に出し頭の中で新たな魔法を構築し始めた。まずは気配を感じ取る魔法の創造をし、次にその気配の識別魔法を創り出した。そのふたつを創造魔法『融合の扉』で合成した。
創造魔法 『認識の櫓』
広範囲による気配感知ができ、その生命体の判定ができる。その判定は魔物(動物含む)と人成る者(種族)だけである。
「んーー……ダメだ。魔物と人しか分別できねーや。『咎人』も人族に含まれるからこれ以上分けることが無理だな。」
「そない上手くは、いかんかー。しゃーないな。」
「悪いな、力になれなくて。」
「かまへんかまへん。気にせんとって。人によって正義や悪なんて曖昧な言葉を仕分けるなんて無理なんやろな。」
「たぶんな。百人いたら百個の意思があるからな。」
「まぁひとりで、ボチボチがんばるわー。すまんな手間かけさして。」
「なぁ。一旦、咎人探すの止めないか?」
「はぁー??」
いきなり俺が言った言葉にヴァンは驚きと共に腹立たしさを隠せずに反論してきた。ヴァン以外の五人も俺の言葉に、すこしムッとしていたが口に出さずに静観していた。
「そんなもん、アカンに決まってるやろが!何の為の『七贖』やねん!」
俺は、ヴァンに向かってとっさの思いつきを、さも前から考えていたように口にした。
「考えてみろ、一人が『咎人』を捜して他の奴は連絡待ち。そんなやり方で上手く行くとでも思ってんのかよ?一人二人の話じゃないんだろうが?『咎人』一人倒している間に何人ものこっちの人達が殺されるんだぞ。」
「んなもん、言われんでも分かっとるわ!!けどしゃーないやんけ。他に手段があらへん。」
「……手段ならあるぞ。」
「なんやて??自分の創造魔法での捜索は無理やったやろが!他に何があんねん?」
「人だ。」
「ひと??どういうこっちゃ?」
「なるほど……。そういうことですか……。」
「ああ。説明している間に、幹部他主要な物達を謁見室に集めてくれるかグレイ。」
「承知しました。では早速……。」
何とも不思議そうな顔をして俺を見ていたヴァン達だったが、グレイだけは、俺の考えていることがわかっていた。
(さすが、俺の右腕だなー。頼りになるわー。)
直ぐ様グレイは執務室の扉から飛び出していった。
「説明の前に確認したいことがあるんだが、お前らの得意としている事教えてくんない?」
「はぁ??得意?なんでや?」
「いいからいいから。」
さっぱり俺のやっている意味が分からない6人の魔王達だったが、少しでも今の現状を変える事ができるのならばと俺に教えてくれたのだった。




