~得意分野①~
『咎人』に苦しませられているこの世界の人々を助ける。
その為に、いまの方法を変える必要がある。しかし現状では難しい問題なのだが、何やらジルだけは考えがあった。傲慢、怠惰、暴食、嫉妬、色欲、憤怒の6人の魔王は強欲の魔王ジルの考えが読めないでいた。
「何のこっちゃか分からんけど、自分の得意なもん言ったらええのか?」
「そうそう。一人ずつ、できれば詳しくね。」
「まぁええわ。んなワイから言うたるわ。自分の事はゼウルフの爺さんに聞いてるさかい、ワイらの事だけ伝えへんのは対等ちゃうし七贖の経緯も教えたるわ。」
ヴァンが一番最初に自らの事を言ってきた。
「ワイは元々商売人やってん。学生の頃に始めた商売が当たって、それを元手に吸収合併を繰り返して、みるみる会社は大きくなっていったわ。会社が大きくなれば、ワイの態度もそれと比例するようになって大きくなっていって、自分の力だけでしたんやといい気になっていったんや。他人をどん底に落とすことに生き甲斐すらもあったかもしれん。そこら中から恨み辛みを買うてて、そんでそのどん底に落とした一人に背中を刺されて、くたばったってこっちゃ。良くある話やわな。まぁ、そういう事で得意なもん言うたら銭勘定や交渉、商売事ならお手の物や。後は嘘を見破ったりなんかも得意やで。」
「なんか聞いた事あるような話だな。」
「せやから良くある話っていったやろが。こっちの世界では前みたいなことは止め、人々の為に生きるとゼウルフ爺さんと盟約を結んだんや。」
「それがヴァンの贖罪なわけね。」
「まあ、そういうこっちゃ。」
ヴァンの話す言葉からは、殺された事への悔しさや、生前にした事への申し訳なさが含まれているのだが、それ以上にこの世界の為にという気持ちの方が勝っている事が強く感じ取れた。
(さすが起業家だな。こいつは、過去を振り返るより前を見ている……。『傲慢』の魔王になったのも起業家からの由来なんだろうな。)
「んじゃ次は、ギャル子、君の事を教えてくれるかい?」
「ん??あーし??」
「他に誰がいんだよ。」
「ちゃんと、リップ=デニムって名前で呼んでよね。」
「いいじゃん可愛いんだし。それより、やっぱり見た目と名前の通り得意なものって……。」
「可愛いって……………ったく、しょうがないなー………。」
リップは少し頬を赤らめて照れている様子だった。
(ん???なんで、顔真っ赤にしてんだ???)
「ん…まぁ……いいっか……教えてあげるよ。想像通り、メイクとファッションには自信があるんだ。服飾の学校通ってたし。」
「やっぱりな。そうじゃないかと思ってたよ。けどなんで『怠惰』なんだ??」
「ああーそれ。メイクとファッションが生き甲斐だったから、生活費とかバイト代とか全てそれに注ぎ込んだり、自分のスタイルを保つために無茶なダイエットしすぎて拒食症を発症しちゃったりして栄養失調になって死んじゃったわけ。だから、好きなもの以外を怠けたから『怠惰』になったと思うんだよね。」
「拒食症か……。」
「そ。だからあーしの贖罪は、自分を労る事とこの世界の女の子に健康で綺麗になってほしいっていう事。」
「なるほどな。」
(馬鹿そうに見えて、色々経験してんだな。『怠惰』に選ばれたのも納得だ。)
「健康にって事なら俺もそうだぞ!」
そう言ってきたのは、顎髭を蓄え熊の毛皮を肩に掛けた巨漢の男だった。
「あんたはたしか、パン=ライスだったか??」
「ちがーーーう!!ブレッド=グラーノだー!!!」
(意味は一緒じゃねーかよ……………。)
「んで、ブレッドのおっさんが言うギャル子と一緒ってのは??」
「ああ。俺の贖罪は腹が減ってる奴にたらふく旨いもん食わせることだからな。」
「なるほどね。だから健康と一緒ってことか。」
「ああ、そうだ。俺はもとの世界じゃ、片田舎に住みながら、狩猟や農作業の傍ら美食家として生きていたんだ。『暴食』に選ばれたのもそのせいだろうな。死んだ理由は、狩ろうとした熊に返り討ちにされて呆気なくな。ダァッハッハッハッ!!」
「おおーーーー!!!料理に野菜作りできんのか!!」
「それだけじゃねぇぞー!肉の解体なんかも任せろ!」
「まじかよ!!スゲーじゃん!!」
「そ、そうか!そんなに褒められちゃ照れるじゃねぇか!」
「そういや、肩に乗ってる毛皮も??」
ブレッドの右肩から腰まで掛けてある毛皮を指差して聞いてみると…。
「ん?これか?こいつは、こっちの世界で初めて喰った熊の魔物だな。」
「もしかして、毛皮を鞣す事も出来たりするのか?」
「おうよ!!どうだ器用なもんだろ?」
「おっさん……最高!惚れ惚れする!!」
「おい…………。喜んでくれるのは嬉しいけどよ…。俺は、そっちの気は無いぞ……。」
「んなもん、俺も無いわ!!」
「ダァッハッハッハッ!冗談だ!!冗談。それはさておいて、俺は料理はそこそこだが、趣向品に関しちゃ俺より適任者がいるぜ!」
「趣向品??」
「嬢ちゃん、教えてやんな。」
「……ん………。」
ブレッド=グラーノが嬢ちゃんと言って呼んだのは、背が俺よりも低い髪に青いメッシュが入った女子高生だった。
「たしか、アイス=ショコラだったよな?マツバとの話は終わったのか??」
「…うん……。」
「名前から察するに……。」
「……そう……パティシエ目指してたから………。」
「やっぱりか!」
「……けど…こっちの世界には調理道具も材料も無いから出来ない………。」
「それなら、大丈夫だ。道具は鍛治士がいるから問題ないし、砂糖に牛乳や卵なんかは解決済みだ。果物なんかもあるぞ。俺も、上手くはないがパンケーキを作ってみたんだ。」
「それ、ほんと??」
「ああ、だから君も作れる筈だよ。そのために協力してくれるか?」
「……うん……。マツバに作ってあげたい……。」
「それはいいな。きっと喜んでくれるよ。」
「ありがと…。」
「どういたしまして。ハハハ、なんだか妹が出来た気分だよ。」
「…妹……。」
アイス=ショコラは俯いて恥ずかしそうにしていた。リップ=デニムと同じように頬を赤く染めている。
(アイスもリップと同様に真っ赤だ。どしたんだ??)
「それで、なんでアイスは『嫉妬』の魔王になったの??」
「…………………たから。」
「ん??」
「………人を………殺したから……。」




