~七贖②~
『七贖』
悪事を働く転生者『咎人』を律する裁定者。『七大罪』から引用しており、七人の魔王の一柱である憤怒の魔王サタンが名付け親との事だった。
『七大罪』とは。
傲慢 驕り高ぶること。
嫉妬 自分に無い物を有す他者を快く思わない感情。
暴食 後先考えず無闇やたらとたくさん食べること。
色欲 色事の欲望。要するに性的な欲求・欲望の事。
怠惰 怠ける事、だらしがない事
憤怒 人間の感情の一つ、激しく怒る事。
強欲 欲が非常につよいこと。
罪の根源とされる7種類の悪しき感情、欲望などを指すものだ。
そして『七贖』とは、七人の魔王の総称でもある。
「とりあえず、自己紹介しとこか。」
ヴァンは、ミーアに来た6人の魔王の名前を俺たちに教えた。
「改めまして、七贖のまとめ役をしとる、ヴァン=スピリタスや。よろしゅーに。」
サングラスをした金髪の青年
傲慢なる堕ちた天使 魔王ルシフェルのヴァン=スピリタス
種族 堕天使
「リップ=デニムだよ。よろしくぅ。」
赤茶色の髪で片側だけを束ねた褐色肌のギャル。
怠惰な乙女 魔王ヴェルフェゴールのリップ=デニム
種族 闇森人
「俺は、ブレッド=グラーノ。よろしく頼む!」
毛皮を纏とい、顎髭を蓄えた七三分けの髪型の豪快な巨漢の男
暴食貴族 魔王ベルゼビュートのブレッド=グラーノ
種族 人狼
「……アイス=ショコラ……。」
黒髪ショートボブの一部に青のメッシュが入った物静かな女子高生
嫉妬に満ちた少女 魔王レディアタンのアイス=ショコラ
種族 魔竜人
「ローズ=ダイアモンドよ。よろしくね。」
煙管を持ち、腰まである長いウェーブがかった黒髪と獣耳が特徴の艶やかな女性
色欲を抱く淑女 魔王アスモデウスのローズ=ダイアモンド
種族 妖狐
「ラス=ギャレットだ……。」
黒髪の無造作な髪型で、上背がある綺麗な顔の男
憤怒の王 魔王サタンのラス=ギャレット
種族 魔人
「あれ??魔王なのに魔族じゃなかいの?」
「魔族ってのは、共同体名やからな。神族には神族の他に天使族や精霊族が含まれ、人族には亜人やエルフが含まれるやろ?魔族もそうや、魔人がいたりダークエルフ、小鬼族もや。簡単に言うたら、そういうこっちゃ。」
「なるほどなー。ん?そういや、『七贖』なのに6人ってのは、どういうことなんだ??」
「そやから、最初に勧誘に来たって言ったやんけ。」
「ああ、そうだったな。んで、誰を勧誘しにきたんだ?俺の知ってる人?」
「そんなん、決まってるやんけ。自分や、自分。」
ヴァンは俺に向かって指を指してそう言った。
「はぁ?俺??」
「そっ!じゃあ、そういうことやし今日から魔王やってやー。」
「ちょ ちょっと待て!!いきなり来て魔王やれって言われても無理だって!!」
「なんでやねん!格好いいやんけ魔王!!」
「アホか!!こっちは街のことで忙しいわー!」
「そんなん言ったかて!ゼウルフの爺さんにも許可もろてるちゅーねん!!」
「はぁー??」
最高神ゼウルフの方をジロリと見ると、汗を滴ながら目線をそらしている。
「ちょっと爺神!!どういうことですか!?」
「こやつら、魔王たちが、ジル君をえらく気に入ったんじゃもん。しょうがなかろう。」
「じゃもんって……。嘘でしょ……。」
訳がわからないうちにあっさりと『七贖』の一員になってしまった。
『七贖』とは、選ばれた者達自身、前世において少なからずその罪に関わっており贖罪の意味を込めると共に、同族粛清の咎を背負いし七人。故に『七贖』。
(俺、何にも前世で強欲なことしてないんだけどな……。)
選ばれし者は、『七大罪』を引用し、魔王の称号と二つ名をそれぞれに与えることになっている。
『強欲深き者』強欲の魔王マモンのジル=ヴァンクリフ。
新たな二つ名を与えられた。するとその途端、俺の力や魔力が上昇するのが感じとれた。
「なんじゃこりゃ!!!………一体どういうことだ……。」
「それはな、『割譲』と言って、魔王になったら貰えんねん。いうなりゃ神族の『加護』の魔族版や。その割譲の効果で、お前の能力が上がったんや。だがそれだけとちゃうで!なんと『地性』がもらえるんや!」
「『地性』??」
「そや、神から譲与される『天性』に対して、魔王の継承で引き継がれるのが『地性』や。ただ、二つの力が強すぎて魔力暴走引き起こしかねへんから両持ちはオススメできひんけどな。」
「ってことは、いま持っている天性『鍛冶細工』は……。」
「地性を選ぶなら天性は放棄するのが得策やろなー。」
「放棄かぁ……。気に入ってるんだけどな…。けど、新たな力も出来れば欲しいし…。」
「欲張りな奴やなー。まさしく『強欲』やんけ。まぁ、天性のことはひとます保留しとこか?」
「保留できんのなら、ゆっくり考えてみるよ。そういや俺の種族が半神半人なんだけど、魔王になるんなら魔族になったりすんの?」
「さぁ……。」
「へ??」
「したこと無いさかい分からんわ。半神半人なんて珍しいし。」
「知らねーのかよ!魔王だろうが!!」
「魔王やからって何でも知ってるわけ無いやろが!!だいたい『天性』持っとる奴に『地性』与えたら、どうなるかもわからんのに半神半人の種族変化まで知るか!ボケ!!」
「なっ!!種族変化で魔力暴走したらどうすんだよ!それに、俺の種族が何か知ってて『割譲』渡しただろーが!」
「アホか!そない昔の事覚えとるか!」
「ついさっきだろーが!!」
「一秒でも経てば昔じゃ!!」
(このアホ魔王やべぇ…。無茶苦茶だ…………。)
「おい………。」
「「 なんだ!!」」
俺とヴァンが言い争いしている中、もう一人の魔王サタンのラス=ギャレットが口を挟んできた。口を揃え、振り向いてみるとラスの顔には青筋が浮かび顔がひきつっていた。
「貴様等、五月蝿い………。殺すぞ……。」
低くドスの効いたその声に、俺はさっきまでの怒りが静かに消え去り、恐ろしさのあまり汗が吹き出していた。ヴァンなんか半泣きで鼻水まで垂らしている。
「「 すんませんっ………………。」」
魔王サタンのラス=ギャレットの一言に、一旦落ち着きを取り戻したは良いがやはり気にはなる。魔力暴走で爆発なんて死に方望むヤツなどいない。それを不安視していた。
「心配するな…………。魔力暴走など無い………。」
「本当に!?」
「貴様の能力を見てみろ…………。」
ラスが言うように自分の能力値を見てみると種族が変化していることに気がついた。
「『魔神人』??」
「おそらく……。貴様の中の、三種族の力が上手く混同したのだろう………。」
「何故だろう?」
「それはわからん……。だが、魔と神が混じった貴様ならば『天性』と『地性』、両方扱える時が来るかも知れん…………。魔力暴走が起こらないように、その時までに自力をつけろ……。力があれは抑え込めるだろう……………。」
「とりあえず精進してみるよ。」
「精々、抗ってみるのだな………。」
魔力暴走が起こるとすれば魔王継承時点で即発生するみたいで、ヴァンと言い争いする事すら出来なかっただろうとラスは教えてくれた。
厳しく叱るようなラスの言葉だったが、俺の胸に響いた。
(けど、自力をつけるには何すりゃいいんだ?修行なんてしたことないぞ……。)
すぐに行動するわけじゃないから、とりあえず保留にして、難しく考えるのをやめる事にした。
話が終わると最高神であるゼウルフが腰をあげた。俺が魔王と話をしているとき、マツバと昔話に花を咲かせていたのだろう、楽しそうに話している二人が見えていた。
「では、儂もそろそろ、お暇するかの。」
「今度はゆっくり来てくださいよ。」
「フォフォフォ。ありがとうジル君。ああそうじゃ、大事なことを忘れとった。」
「どうかしましたか?」
「君に伝言預かってきてたんじゃ。」
「伝言??」
「孫娘のクロトーネからじゃよ。」
運命を司る女神にして俺の最愛の人クロトーネ。前世での名前は黒戸マナ。転生してから、ずっと気になっていたが、街の復興や内乱の所為もあり、頭の隅っこに追いやっていたのは事実だが忘れてはいなかった。
「どんな伝言ですか?マナは元気でやってますか?」
「元気は元気じゃが……。」
「何かあったのですか?」
「いや…まぁ……。伝えおいてくれと言われた伝言にちょっとの…。」
「???」
「伝言じゃが、『崇は色んな女の子にモテモテでいいですね!!ちゃんと神界から見てるんだから!!もうすぐ会えるからそれまでに浮気したら、どうなるか分かるよね?』じゃ……。」
「えーーーーーー!!!」
(モテモテって…。それ不可抗力だし……。)
「確かに伝えたぞ。じゃあ、儂帰るから。それじゃあの。」
「ちょ、ちょっとー!」
最高神ゼウルフは運命を司る女神からの不気味な伝言を俺に伝えるや否やその場から逃げるように過ぎ去って行った。
マナからの伝言には怒気が含まれており、ヤキモチの度合いが増しているのが伝わってきた。
「そんなーー!誤解だぁぁぁぁぁーーー!!!」
割譲
魔王に選ばれし者が、先代より代々継承される力をいう。神族の加護と良く似たもの。魔王となった暁に自信の能力が向上するが技能などは継承はされない。
地性
天性とは逆で、代々の魔王から受け継がれてきた才能。
魔王継承をし割譲が行われた後に受け取ることが出来る。
天性と地性を両持ちすれば魔力暴走を引き起こすかもしれないため慎重にならざるを得ない。




