~七贖①~
「じいさん??」
「自分、知ってんちゃうの?最高神のゼウルフ爺さん」
ヴァン=スピリタスが大声で呼んだのは、まさかの最高神ゼウルフだった。
「へっ??嘘ぉーー!!」
最高神ゼウルフ。死んだ俺をこの世界に転生させてくれた神族。
転生前に会ったきりだったが……。
「爺神を知っているのかよ?しかも呼び出すなんてできるのかよ。」
「普通は出来ひんで。ワイ等は特別やねん。」
「????」
「じいさんは余程じゃない限り人界に干渉しいひん。だいたいワイから言わせてもらえば、最高神に転生させてもろてる自分の方が特異点やで。そこんところ、爺さんから聞いてへんのか?」
「人界に干渉?特異点?なんの事だ?」
「ったく、あの爺さん手を抜きよったな。」
「たぶんな。爺神、抜けてるからな。」
ゼウルフへの愚痴を言っていると後ろの方から、会話に割り込むように声がした。
「誰が抜けてるじゃと?」
「爺さん!」
「爺神!」
執務室の片隅に人影がいつの間にかあった。白いローブを羽織り、木で出来た杖を持つ神族の代表の最高神ゼウルフだった。眩く光輝くその姿はまさしく最高神そのもので俺とアルは久しぶりに見たその姿に懐かしさがあったが、グレイだけが口をあんぐりと開けたまま固まっていた。
「久しぶりじゃな崇くん、それにジル君。いまはジル君とアルディ君じゃったな。それにニーズヘッグ、息災か?」
「久方ぶりじゃなゼウルフ。いまはマツバと名乗っておる故そちらで頼む。」
「うむ。わかった。」
ゼウルフとマツバは元々、顔見知りだったらしい。十大竜王の名は伊達じゃないみたいだ。マツバが言うには「若い頃によく遊んでいた仲じゃよ。」と言っていた。
(神と竜の遊びって……?)
「それにしても、二人とも元気そうで何よりじゃ。」
「それなりに元気でやってますよ。なぁアル。」
「毎日忙しいですけど、楽しいです。前アルディ王には申し訳ないですが、元気な体を与えていただき感謝しますゼウルフ様。」
「仲良くやっているみたいで安心したぞ。」
久しぶりに会った俺とアルに、にこやかな表情を向けてくれた最高神ゼウルフだったが、ヴァン=スピリタスの話の真意を聞こうとしたとき、表情が一変し引き締まった顔つきになった。
「すいません、挨拶はこれくらいにして、先程この者達が言った話で転生者が多くいる事、そしてそのほとんどの者がこの世界に迷惑かけているって話は本当の事なのですか?」
「ああ……。本当じゃよ……。この世界に悪行を撒き散らしておるのは確かじゃ。そういった行動をする者達を『咎人』と呼んでおる。転生した時の影響か、転生において自らの価値観が壊れた反動か、もしくは何者かの策略か……。いまだに実態が掴めておらんがの……。」
「原因不明ですか……。」
「うむ…。その調査と対策のための組織を構成したのじゃ。同族殺しという罪を被ってもらう事になるは酷じゃがな……。」
「だから贖罪の一文字をとり、『七贖』なのですか。」
「意味はあっておるが、名付け親は儂じゃない。彼じゃよ。」
最高神ゼウルフがさす彼というのは、黒髪の綺麗な顔の男だった。
「話が長い……。」
「すまんのう。そう怒るな。」
「フン……。」
不機嫌なその男のことをヴァンが紹介し始めた。
「こいつは、ラス=ギャレット。魔族の七魔王の一柱、憤怒の魔王サタンや。」
「「「「 まっ 魔王ーーー!!!! 」」」」
(いったい今日はどうなってんだ!!)
前世の転生者が来たと思えば、最高神と久方ぶりに会うし、挙げ句に魔王だなんて……。竜王であるマツバは分かっていたらしく「やはりか…。」って言ってるし、グレイなんか驚きすぎて白目むいてるし……。
「五月蝿い…………。」
(なんか怒ってるよ……。)
「……ん?七魔王ってことは?もしかして、お前ら全員………。」
「そや!ここに来たのは全員魔王やで!」
『七贖』。その名は魔王サタンが考えた七人の魔王の総称だ。
この世界の為とはいえ、同郷の同族殺しをしなければならない。魔族でも、親殺しと同郷同族殺しは蔑まれる対象だ。前世においても有名な言葉で七人の魔王に由来している『七大罪』を引用しているらしい。七大罪とは人の罪の根源とされる七種類の悪しき感情、欲望などを指し、七人の魔王の特徴として伝わるものでもある。




