~呼名~
十大竜王翠蒼竜ニーズヘッグの名付けに、国王アルディと守護騎士ライル、エリスが加わり総勢27名で行うことになったのだが、ニーズヘッグは気が気でない様子でいた。
「よし、じゃあ始めよっか。考えた奴から発表してくれる?」
小一時間程経って結局考えたのは、オーガスト、シェリー、ルゥ、ラゴール、ラベンダー、ゾル、アルラ、チヂ、だけだった。俺はまだ考えが纏まっていなかったから最後に回してもらった。最終判定はニーズヘッグ本人に決めてもらうが俺とアルも判定には参加する。名を決めた者は、一人づつ俺とアル、ニーズヘッグが並ぶ前に出て発表する流れで進行していく事となった。
「では俺からいきますよ。」
オーガストが一番最初に発表した。
「やはり、漢を前面に出した名で『マッスル!!』。どうです完璧でしょう?」
「「「 却下!!」」」
「えー!!」
いきなりの却下に驚きととまどいを隠せずにいたオーガストだったが、そんなもん却下だ。ったく脳内筋肉は相変わらずだ。
気を取り直し次に行く。次はシェリーだ。
「あれじゃあ却下になるわよ。私のネーミングに任せなさい。」
「ほう、シェリーは自信満々だな。」
「任せてジル様。ビックリするわよ。やっぱり名前には色気が必要なんだから。その名も『エロス』。どうピッタリでしょ?」
「「「 却下だ!!」」」
「なっ なんで???」
「我は今さらエロスなんか求めんよ………。」
「シェリー、ニーズヘッグの年齢を考えようよ………。」
(ほんとブレないな、この二人は。オーガストは脳筋でシェリーは色気…………。はぁー疲れるわーー。)
次は問題児のルゥだ。何かやらかしそうな気がするのだが。
「僕が考えたの名前はー。『タ………。 」
「「 却下だーー!! 」」
ルゥが全てを言う前に俺とアルが覆い被せるように叫んだ。
「ちょっと待って下さいよー!まだ全部言ってませんよー!」
「お前、絶対前に付けようとした、あの名前言うつもりだろうが!!」
「あの名前??ああ『タマ』ですかー?違いますよー。」
「えっ?そうなの?悪い悪い。てっきり『タマ』かと思ったもんだから。」
「当たり前じゃないですかー。ちゃんとアレンジしてますってー。」
「んん???アレンジ??」
「では改めて発表しまぁすー。僕が考えたのは『タママークⅡ』です!!」
「「 一緒じゃーーー!!! 」」
「我の名前一体どうなるのじゃろ………。」
(こいつ、やっぱりやらかしやがった…。)
あらかじめ分かってた事とはいえ、こいつの名付けはやっぱり酷い。ニーズヘッグは、ずっと苦笑いしているし………。
「次だ次!!」
意気揚々と前に出てきたのは小鬼族のゾル=ホーンだ。
「俺はニーズヘッグ様が長寿なことを考えて、竜王様と古風な名を併せた感じで考えたぜ。」
(嫌な予感が…………。)
「その名は『ドラ座衛門』。どうだ!」
「「「却下!」」」
直ぐ様、判定が下った。問答無用で却下だ。ゾルは理由は何故かと聞いてきたが、当たり前だ。竜王という身分を隠すための名なのにドラ座衛門など駄目に決まっている。
(それに、一歩間違えりゃ某有名キャラのドラ○もんになっちゃうだろうが!!!)
ほんと勘弁してほしいところだが次に発表するのは、もう一人の問題児のラゴールだ。当てにはならないが不機嫌になられても困るから、やらしてみることにした。
「やっと、俺の番だな!」
「ラゴール大丈夫なのか……?。」
「任せとけって旦那。こうみえて学習するんだよ俺は!」
「学習ねぇ。ほんとかよ。」
「イカした名は足し算だぜ!つーことで俺が考えた名は『ラーズ』だ!!」
「うお!!まともじゃん!」
「ラゴールがまともだ!」
「まともな、名じゃな!」
「おい!!俺がなんだがアホみたいじゃねーか!!!」
そうは言ってはいるが、ラゴールはなんだか嬉しそうだ。
「ところでラゴール、足し算ってどういうことだ?」
「それ、我も気になったぞ。」
「そりゃ簡単だ。俺の名とニーズヘッグを足して割ったってことだ。」
「そういうことね。」
「単純だが、良いかもしれないな。」
「うむ第一候補じゃな。」
ラゴールは、胸を張り他の名前を付けた者達に向かっておもいっきりドヤ顔をして見せていた。
だが、その中のひとりが異義を言ってきた。ダグラスだ。
名前の付け方は良いのだが、竜王ニーズヘッグの名前の一部の前に他の者の名前の一部があるのに対して不満があるらしい。
竜王とは神聖な存在であるから、立場を考えなければいけないのだ。
「言われてみれば、そりゃそうだな。じゃあ『ラーズ』ではなく『ニール』ならば問題ないだろ。」
「それならば、大丈夫だ。」
ダグラスにラゴールが確認した。
「なら『ニール』にしようぜ。」
ラゴールは事情を考え、すんなりダグラスの意見を聞き入れた。一昔前のラゴールならば、聞き入れなかっただろうがミーアに来て少なからず影響を受け成長しているのだろう。大人になったラゴールの行動に素直に俺は喜んだ。
つづいて、蜘蛛人族のアルラ=アリアドネが次の発表者だ。
「それじゃあ駄目ねラゴール。ニーズヘッグ様の名にするには、強さが足りないわ。」
「なんだと!!」
ラゴールはアルラが言った言葉に反応したが、同時にラベンダーがアルラの発表前に口を出してきた。
「そうねアルラ。けど強さだけじゃ駄目じゃなくって?」
「あら、じゃあこんな名前だったらどうラベンダー?」
「そこは、この方が良くってよアルラ。」
ラベンダーとアルラは名付けの共同作業を行っていた。まるで、買い物をする女の子達が服を選ぶようにキャッキャキャッキャ言いながら名前を選んでいた。その姿を見ていたニーズヘッグはあからさまに微妙な顔をしている。
(いつの間にかこの二人、仲良くなってたんだな。)
「出来たわ!」
「フフフフ 完璧ねアルラ。」
「じゃあ、発表するわね。わたしたちが考えた名は『ブルート=ヘルツ』よ。どう?いい感じでしょ。」
「あれ??以外といいね。」
「ほんとうじゃのアル君。少し構えていたのじゃがの。」
不思議な表情のアルと、ほっとした表情のニーズヘッグに向け俺はまだまだこいつらの事をわかってないなと思いながら二人に向け溜め息混じりに言葉を口にした。
「二人とも、何言ってんの………。」
「「 えっ??」」
「はぁぁー。ラベンダー、アルラ、ちょっと名前の意味言ってみて。」
「フフフフフフフフ。『ブルート』は『血』、『ヘルツ』は『心臓』ですわ。」
「「 ………………。」」
「でしょ…。」
「えーっと………却下で………。」
「なっ!何でですか??」
「……名前に心臓って嫌じゃよ。」
「うっ…………。」
( そりゃそうだろう………(場にいる一同)。)
ニーズヘッグの一言で、考えた名前が却下になり二人が落胆しているのだが、その場にいる誰もが同情はしていなかった。ラゴールは、アルラとラベンダーを指差し腹を抱えて大声で笑いころげている。それを見た二人はラゴールを睨んでいるが、気にせず笑いまくっていた。
最後は猿人族で大工組合棟梁のヂヂ=アームライトだ。いままでの名付けの様子を見ていたヂヂはあまり自信が無いみたいに見えた。
「ヂヂどうした?」
「ジル辺境伯……。俺なんかが考えた名前なんか駄目だろうと思って……。」
「ほんと体でかいのに気が小さいな。お前が、俺に向かってきた時、もっと迫力あったけどな。」
「また、昔の事を持ち出すの勘弁してくれよ………。あれはニーズヘッグ様の事だったからつい……。」
「この名付けもニーズヘッグの為のもんだろ?大丈夫だって。棟梁にもなったんだ。自身持てよ。」
「ああ。わかった。駄目もとで言ってみるよ。」
「ああ、がんばれ。」
少しだけ自信を俺の励ましで取り戻したヂヂは自らの足で前に出て発表した。
「俺は、ニーズヘッグ様が大好きだ。優しい笑顔を俺みたいな者にも向けてくれて、いつも心が暖かくなる。まるで木々の隙間から光差す森の木漏れ日の様に。その降り注ぐ木漏れ日がニーズヘッグ様の御身にあたると、松の葉の様に美しい翠になるんだ。そこから名を考えた。名は『マツバ』。俺が大好きな色だ。」
ヂヂの説明を周りにいる者たちは静かに聞いていた。ヂヂの大きな体から考えられないような繊細な言葉に皆は声を出せないでいた。その状況を見た俺とアルとニーズヘッグは即座に決定した
「決まりだな。」
「ああ。申し分ない。」
「うむ。『マツバ』。いい名じゃ。気に入ったわい。」
満場一致で、ヂヂが考えた名に決定した。ラゴールは悔しいそぶりをしていたが顔はにこやかだった。
「では、たった今から翠蒼竜ニーズヘッグは大老の『マツバ』だ。ニーズヘッグの名で呼ぶことをせず『マツバ』と呼ぶように。いいな。」
「「「 はっ!!」」」
私用で忙しく、約1ヶ月後の投稿となりました。遅くなったこと申しわけありません。
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