~逃走~
ダグラスの一言から始まったニーズヘッグの名付け大会。執務室内では各自が思い思いの名を考えている中、ニーズヘッグは不安な顔をして椅子に腰掛け待っていた。
そんなとき、思いもよらない客が転移石で唐突に現れた。
「ジル、いるかい??」
執務室の扉付近に突如現れたのは見慣れた三人の男女だった。
「うぉ、アル!!ビックリするじゃねーか!連絡くらいしろって。」
「あははは!そりゃビックリさせるためにいきなり来たんだから。ジルが全然王都に来ないし、驚かしがてらミーアに来たんだよ。」
いきなり来たのはオズワルド王国国王アルディ=オズワルドと守護騎士見習いのライル=ヴァンクリフ、エリス=クロムウェルだ。
「兄さん久しぶりー。元気してた?」
「お久しぶりです、ジル様。」
「久しぶりだな二人とも。元気みたいでよかったよ。ちゃんと鍛練もしているみたいだしな。」
「そりゃもちろん。インシュミットさんの剣術の訓練は楽しいから良いんだけど…………なぁエリス…。」
「ええ……。」
「ん??」
「サルビアさんのマナー講座が一番地獄なんだよ………。あの人、綺麗な顔して滅茶苦茶厳しいからさ…………。」
「座学の時間なんて言葉に表せないくらいですよ……。」
二人のひきつった顔を見た俺やアルディ、周りの皆は大笑い。ライルとエルザを守護騎士として鍛えると言っていたんだが、街の事でバタバタしていたからインシュミットさんにほぼ丸投げしてしまっていた。久しぶりに会った二人は少し身長が伸びたくらいで相変わらず元気一杯で安心した。
「ちょっと!笑いすぎですよ!王だって、ゴードリック伯の小言を言われて嫌がってたくせにぃー!」
「ちょ、エリス!!それ言っちゃダメだって!」
エリスの口を塞ぐようにアルディは手で抑えていたが、バッチリ聞こえている。
「ははぁーん……。ってことは、お前ら三人共、ゴードリック伯とサルビア秘書長から黙って逃げてきたな……。」
「「「うっ…………………。」」」
「はぁ…。お前ら、何やってんの……。」
「「「……………すいません。」」」
ライルは昔から家でもそれなりに学習はしてきたはずなのだが二人が逃げ出したくなるほどの座学ってどんなものか興味があったが二人のためだし草葉の陰からそっと見守る事にしよっと。俺が巻き込まれても嫌だしな。
「とにかく、俺から上手く王宮には言っておくから明日には帰れよ。」
「ってことは、今日、泊まってもいいの兄さん?」
「しょうがないだろ…。」
「すまないなジル。助かるよ。」
「有難うございますジル様。」
「まぁ、たまにはいいさ。けど帰ってからどうなるかまでは知らねーぞ三人とも…。」
「その時はその時考えるよ。」
ゴードリック伯とサルビア秘書長から羽を伸ばせると思ったのだろうが、俺は帰った時の方が怖いと思っていた。
(あの人たちの事だし、訓練とか倍にするんじゃねぇの………。まぁ三人共、喜んでいるし上手いこと言っておくことにすっか。)
「ところでさジル、はじめましての顔も何人か居るけど、勢揃いして何かしてたの?」
「ああ、それな……。」
俺はアルディに、新顔を紹介しこれまでの経緯を教えた。
(さすがに、国王には説明しとかなきゃまずいしな。)
「はぁーーー……………。また、やったなジル………。」
「ん?なにが??」
「十大竜王を仲間にし、さらに城に神樹??ちょっとは自重しろよ………。」
「ダメ??」
「十大竜王が一角、翠蒼竜ニーズヘッグに文句なんて無いけど、あるとすればジルの人たらし加減だな。」
「人たらしって………。失礼な………。」
アルディは溜め息混じりに答えたが、俺はあまり気にしちゃいない。(色んな人が喜ぶ顔や驚く顔を見るの好きだから自重はしないけどね。フフフ。)
「お初にお目にかかります。オズワルド王国国王アルディ=オズワルドです。」
「十大竜王が一角。翠蒼竜ニーズヘッグじゃ。よろしく頼むの。」
「王国としても最大限の協力はさせて頂きますニーズヘッグ様。」
「王よ心遣い感謝する。少ない時間かも知れんが友としてよろしく頼む。」
「はい。竜王に友と呼んでいただけるのならば、これ以上の誉れはありませぬ。此方こそ宜しく御願いします。」
「ならば、王もジル君と同じように我と接してくれるかい。」
「よろしいので?」
「友なのだから当然じゃろ。」
「わかりました、ニーズヘッグ。」
お互い笑顔で握手している姿を見た俺は、ニーズヘッグとアルディは尊重仕合い上手くやっていけるのに確信が持てた。
「挨拶も終わったし、んじゃそろそろニーズヘッグの呼び名付け大会始めるかー!」
「……やっぱり、それは、やるんじゃな…………。」
ニーズヘッグの、ひきつる顔を余所に呼び名付けが始まった。




