表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
76/80

止まらないお菓子!

『逃げたって無駄さね!』


 逃げるあたしたちに、どこからか魔女の声がします!


「なんだよ、どこから聞こえてるんだよ!」


 お兄ちゃんもあたしも真っ青になって、階段を駆け下りて、ビスケットの廊下を必死に走ります。


『あっはっはっはっは! 逃げな逃げな! そおれ、アテの可愛い獣人たち! 可愛い獲物はそこにいるよ! 追いかけろ、追いかけろ! 子どもたち、迷宮のお菓子はどれだけ食べてもいいさね? アテの自信のお菓子ばかり。ほっぺたが落ちる美味しさだよ。食べるのが止まらなくなって、ころころと太ってしまうだろうねえ!』


「お、お菓子なんか食べないもん!」


 あたしは叫びますけど、でも、迷宮の中はすっごくいいにおいがするんです。

 壁のクッキーも、チョコレートバーも、足元のビスケットも、どれもこれもできたてホヤホヤ、バターと甘いカカオのにおい。

 あたしもお兄ちゃんも、こんな大変なときだっていうのに、おなかがグウ~ッと鳴りました。


「うっ、が、がまん! がまんだグレーテ!」


「う……うん!!」


 ちょっと迷っちゃいました。

 ここで止まってお菓子を食べだしたら、きっとあたしたちは動けなくなっちゃいます!

 なごりおしくて、振り返りながらお菓子を見てたら……曲がり角から顔を出してる獣人がいました。


「まだ食べないぜ」


「うへえ、なんて辛抱強い子どもだ」


「フォクシー様は子どもを太らせてから生贄にするんだろ? まだるっこしくない?」


「ばっか、魔王様だって太った子どもの方が食べがいがあるから復活しやすいだろ」


「早くお菓子食べろー。食べろ、子どもー!」


 ひええ!

 いっぱいいます!

 みんな、あたしたちが立ち止まってお菓子を食べ始めるのを今か今かと待ってるみたいです。


「ど、どうする……」


「がまん、がまん……ごくり」


 なんだろう。

 なんだか、がまんしなくちゃ、しなくちゃって思っているほど、お腹がペコペコになってくるような……。


「も、もうだめだ! がまんできない!!」


 お兄ちゃんが叫びました。

 そして、壁のチョコバーをはがして、両手をベタベタにしながら、がぶっと食べました!


「お、お兄ちゃんずるい!」


 あたしだってもう、がまんできません!

 バターのいいにおいがする、壁のクッキー。

 はがして、サクッと食べました。

 ふわー!!

 あまーい!

 おいしいー!!


 あたしもお兄ちゃんも、夢中になってお菓子を食べます。

 食べるのが止まりません!

 後ろの曲がり角から、のしのしと足音が聞こえてきます。

 獣人たちがやってきてる!

 だけど、あたしたちはお菓子を食べるのが止まりません!

 あー、うー!

 もうだめだー!


「はやく、はやく逃げなくちゃ!」


 焦るんだけど、動けないんです。

 お菓子、美味しいけど、いつまでもやめられないなんておかしい!


「わっ、獣人が追いついてくる!」


 お兄ちゃん、食べながら足をどんどんしてます。

 だけど、ぜんぜん動けないみたい。


「お兄ちゃん、逃げてー!」


「グレーテ!」


 すっかり獣人に囲まれてしまったあたしたち。

 肩に、大きな手がかかります。

 あうううー!!


 その時です!


「あいや、またれい!!」


 後ろから、何回も聞いた声がしました!

 そこには壁しかなかったと思ったのに、よく見たら、クッキーの間から管が出てます。

 管のフタがパカっと開いて、ピューンっと茶色い小さい影が飛び出してきました!


「な、なにいーっ!?」


 びっくりした獣人の頭に、こつーんっとドングリが刺さりました。


「ぎょわーっ!」


 獣人がばったり倒れます。

 オオカミの獣人です。

 その鼻先に、すとーんと舞い降りたのは……。


「せっしゃだ!」


「ボーリスさん!」


「うむ! せいっ、せいっ!」


 ボーリスさんは、尻尾に手をいれると、そこから小さいものを取り出して、あたしたちに投げました。

 あたしとお兄ちゃんの口に、それが入ります。


「うっ」


「うっ! に、にがぁーい!!」


 苦い!

 とっても苦いです!


「クロガネモチのかけらでござる。おくちのなかをリセットするでござるぞ!」


「あっ……お菓子、食べなくてよくなった」


「なんだろう? ニガニガな実を食べたら……!」


「そのおかしには、たべはじめると止まらないまほうがかかっているのでござろう! というかおぬしら、おかしをたべててピンチだったのでござるか!」


 ボーリスさんが、あきれたような声を出しました。

 あたしもお兄ちゃんも、反省です。


「だが、せっしゃがきたからにはもうあんしん! いくでござるぞ!!」


 ボーリスさんは、ぴょーんとお兄ちゃんのところまで跳んできて、チョコバーをつかみました。

 そして、チョコバーをカリカリッとかじってちょうどいい大きさにすると、これを棒みたいにヒュンヒュンふりまわします!


「さあこい!」


「このリス!」


「チョコバーで俺たちをやっつけるつもりか!」


「さよう! えいやー!!」


 ボーリスさんが跳びました!

 ふりまわされるチョコバーが、獣人の手とか足とかをぼんぼんはじきます!


「えいやー!!」


「うおわー!!」 


 チョコバーでたたかれた獣人が、ぼんっとビスケットにもどりました。

 すごいすごい!

 ボーリスさん、やっぱり強い!


「ふたりとも、このまま行くでござるぞ!」


「へ? 行くって、どこに……」


「まじょのところでござる。このめいきゅうは、どこまで行ってもまじょの手の中。ならば、いちばんあんぜんなのは、せっしゃのうしろにござるからな」


 というわけで、魔女から逃げてたあたしたち。

 今度はこっちから、魔女のところに向かうことになったのです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ