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もっとのぼれ、お菓子の迷宮

 獣人たちが出てきた、壁の抜け道をのぞきこんだ、リスの騎士とウサギの騎士一行。

 その奥には、大きな管と小さな管がついていた。

 どうやら、この大きな管を使って獣人たちは滑り落ちてくるらしい。

 そして小さな管からは。


「なんですの? これ」


 ココア姫が小さな管をつついた。

 管にはフタがしてあって、見ている今も、管とフタがぶるぶる震えている。

 姫は興味半分で、フタをあけてみた。


『何をしているんだい! 侵入したどうぶつ騎士たちはまだ生きてるよ! お前たち、どんどん焼くからぞくぞく押しかけて、どうぶつ騎士たちをやっつけておしまい!!』


「ぎゃーっ」


 凄く大きな声が聞こえたので、ココア姫はびりびりと痺れて目を回してしまった。


「姫様ー!?」


 駆け寄って、彼女のほっぺをぺちぺちむにむにするナーデ。

 けっこう容赦なくぺちぺちむにむにしたので、ココア姫はすぐに気がついた。


「はっ、わらふひは、はひを……ひょわっ!? いひゃい!! いひゃいでふわ、ナーレ!!」


 それなりに痛かったので、ココアはぶんぶん腕を振り回してナーデをポコポコ叩いた。


「あいたた! 手加減してください姫様ー! でも、なんともなくて良かったですー」


「ふーむ、これはもしや」


 ココアの手から解放されたリスの騎士、ボーリスは、トテトテトテっと床と壁を駆け抜けると、小さい管にぶら下がった。


「ナイトリーダー。これは、でんせいかんでござるな」


「むむむ」


 ウサギの騎士、ピョンスロットはその場からジャンプ。

 伝声管だという管につかまり、ぶら下がってみた。

 管がみしみし言う。


「ナイトリーダーはおもすぎて、くだがこわれそうでござる!」


「なにっ。私はウサギとしてはけっしてムチムチしてはいないぞ!」


「ピョンスロット卿はよく食べるから、ムチムチしてますよね」


「毛皮の下ももちもちしてますものね」


 ピョンスロットの反論だったが、ウサギの騎士のさわり心地をよく知る女の子ふたりの証言によって、説得力がなくなってしまった。

 すぐさま寄って来たナーデが、ピョンスロットのお腹をキャッチして管から離す。


「うわーっ、おなかをもってはいけませんぞ!」


「ピョンスロット卿がくっついてたら、管が壊れちゃうかもですから! うわー、やっぱりもちもち、ムチムチしてます」


「ダイエットが必要ですわね!」


 あわれピョンスロット、少女騎士たちに、お腹や脇腹をさわられることになってしまった。

 美味しい野菜大好きなピョンスロットは、けっこうお腹にお肉がついていたのだ。


「ナイトリーダー、びしょくはほどほどに! では、せっしゃはでんせいかんを伝って行ってみるでござる! こう、みみあなに、くるみのかけらをギュギュッとつめて……」


 伝声管の上に立ったボーリスは、頬袋に詰めていたクルミの欠片を取り出して、ちょうどいい大きさにかじった。

 これを耳に、ぎゅっと詰めて耳栓にする。


「では行ってくるでござる! えいやー!」


 気合一閃、伝声管のフタを蹴りあけたボーリス。

 ぴょーんとジャンプすると、空中でくるんと一回転。

 小さな管の中に入っていってしまった。


「ボーリス卿はスリムですわね! それに、やっぱりピョンスロット卿では、この管は細すぎてお腹がひっかかってましたわよ?」


「むむむーっ」


 悔しそうにうなるピョンスロットなのだった。




 さて、伝声管にもぐりこんだボーリス。

 小さな体を活かして、びりびり震える管の中を、トテトテと駆け上がる。


「まじょめ、ずいぶん大きいこえを出しているでござるな! よほどあせっているとみえる」


 管はどんどん上に向かって伸びていて、それがあちこちに枝分かれしている。

 きっと、それぞれの階につながっているのだろう。

 だけれど、ボーリスが目指すのはただ一つ、魔女がいる場所なのだ。

 クルミの耳栓で魔女の声を聞かないようにしながら、どんどん上に上に。


「しかし、でんせいかんの中までもおかしのにおいがするとは! あのまじょは、すじがねいりのおかし作りだいすきでござるな」


 伝声管の匂いは、チョコレートの香り。

 金属の色に塗ってはいるけれど、これはまるごとチョコなのだ。

 だから、ボーリスが爪を立てればどんどん上っていける。


「ナイトリーダーだったら、チョコがわれていたでござるな!」


 はっはっは、と笑いながら、ボーリス。

 ついにまっすぐ上に伸びた、伝声管の最後のあたりに到着した。

 見上げると、上の方は暗くなっていてよく見えない。

 だけれど、びりびり響く大きな声は、前よりも強くなっていた。

 魔女フォクシーの場所が近い。


「よし、まっているでござるぞ、まじょめ!」


 ボーリスはむむっとリスの顔に決意をにじませ、四足を踏ん張りながら、真っ直ぐの管を上っていく。

 その途中だった。


「はやく、はやく逃げなくちゃ!」


「わっ、獣人が追いついてくる!」


「お兄ちゃん、逃げてー!」


「グレーテ!」


 聞き覚えがある、双子の声がした。

 ピタリと止まるボーリス。

 真横には、別の階につながっている伝声管。

 このまま上れば、魔女の本拠地であろう最上階。


「なにをまよう、ボーリス。おまえはまじょをやっつけるのであろう。それこそが、せかいをすくうための道でござる」


 ボーリスは鼻をひくひくさせた。

 リスのヒゲが、ふるふると揺れる。


「だが、したしきふたごをたすけられなければ、きしのなおれ! ふたごもせかいもすくう! それがわがきしどうにござる!!」


 ボーリスは一声、ござるーっと叫んだ。

 そして、迷うことなくぴょーんっと真横の伝声管に身を躍らせた。

 目指すのは、その先にいる双子のところ。

 リスの騎士は、チョコレートの管の中をひた走るのだ。

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