のぼれ、お菓子の迷宮
「なんということだ!」
リスの騎士が、ぴょんと飛び跳ねて怒った。
「せっしゃというものがついていながら、まじょめにふたごをさらわれてしまった!!」
「うむ。まじょフォクシーめは、かなりこうかつなようだ。ゆだんはできないぞ!」
ウサギの騎士も、横でぴょいんと跳ねる。
「はいはい、お二人とも、ぴょんぴょんしてないで。行きますわよ!」
ウサギとリスの首根っこを、ココア姫がキャッチした。
そのまま持っていく。
「うわーふかくー」
「うでをあげましたなひめ!」
「ま、待ってください姫様ー! あっ、ミルクレープさんはここで待っててくださいね」
「ブルルー」
そびえ立つお菓子の迷宮に向かうのは、ウサギの騎士とリスの騎士。そしてココア姫とナーデだ。
いくら、獣人と戦えるようになったからと言っても、村人が迷宮に入るのはとてもあぶない。
何しろ、迷宮はせまいから、獣人が出てきてもみんなで囲んで叩くことができない。
「頑張ってくださいよ、ウサギのだんな!!」
木こりのクルトンが、手をふり回して応援する。
村人たちもいっしょ。
みんな、ウサギの騎士ピョンスロットを尊敬している。
彼らに、ピョンスロットはこう言っておいたのだ。
「みんなでかこんでたたかなければ、えだがあってもじゅうじんには勝てないだろう。せまいところではたたかわないで、にげるのだ!」
村人たちはよく言うことを聞く。
迷宮の下で、応援の声をあげることにしたのだ。
「村人の皆さん、素直になりましたわねー」
「うむ、まじょをやっつけられるかもしれないので、テンションが上っているのでしょうな。あっ、ひめ、こっち、こっちですぞ。ウサギのきゅうかくが伝えてきます」
「はいはい」
「こ、こらむすめご! せっしゃの首をじゆうにするでござるー!」
「姫様の手の中で、リスさんが暴れてますねえ」
「おほほ、こそばゆいですわ!」
一行はトコトコと迷宮の中を行く。
ココア姫は、何も用心せずにどんどんと先を進んでいくのだけれど、これは両手につかまえているどうぶつ騎士がいるからだ。
ピョンスロットも、ボーリスも、鼻や耳をひくひくさせて、獣人が近づいてこないか、何かおかしいものが無いのかをずっと探っている。
さくさくさく。
クラッカーの床が、歩くたびに音をたてる。
さくさくさく。
ナーデは面白くなってきて、スキップしながら歩いている。
「お菓子の匂いでいっぱいですわね。これじゃあ、獣人のにおいなんてわからないのではなくて?」
「それはだいじょうぶでござる。じゅうじんはじつは、バターのにおいがするでござるからな」
「ええっ!? なんでですの!」
「ひめ、じゅうじんはビスケットから作られていますからな!」
「なるほどですわね。言われてみれば、クラッカーのしょっぱい香りの中に、かぐわしいバターの匂いが漂ってくるような……」
そんなことを言っていたら、目の前の壁がパカっと開いた。
そこから、獣人たちがわいわいとあふれ出してくる。
「焼き立てだー!!」
「ここから先は通さんぞー!!」
実に美味しそうな匂いを立てながら、できたての獣人たちが襲いかかってくる。
「出ましたわね! なんてお茶が欲しくなる香り!」
「姫様、水筒にお茶が入っています!」
「待つのよナーデ! 美味しそうな匂いはするけれど、あれはあくまで獣人ですわ! ええい、どうぶつ騎士のお二人、お願いしますわ!」
「こころえた!」
「おまかせあれ!」
ココアが、両手につかんだどうぶつ騎士を、まとめて獣人へと投げつけた。
茶色と白の閃光が、お菓子迷宮の闇を切り裂く。
「えいえいえい、えいやーっ!!」
「とあー! とととととあーっ!!」
松ぼっくりとニンジンが唸りをあげた。
ぽこぽこぽこっと、柔らかいもので叩く音が響き渡る。
「うぐわー!」
「あばばばばー!」
獣人たちの断末魔がひびく。
そして空に跳ね上がるビスケット、ビスケット、ビスケット。
「この迷宮、本当にぜんぶぜんぶお菓子なんですねえ……」
黒い鎧のドレス部分を広げて、落ちてくるビスケットを受け止めるナーデ。
「それに、新しい獣人が焼きたてで出てきたということは、魔女は双子ちゃんを追うのを一休みして、お菓子作りをしているのではないですか?」
「確かにそうですわね……」
「ふむー」
「ふむむー」
「はいはい、唸ってないで、行きますわよお二人とも!」
ココア姫が、リスとウサギをひょいひょいっと抱え上げた。
「わたくしたちが、こうやって獣人をやっつけて回れば、魔女は獣人ビスケットを焼く仕事に集中しなければいけませんわ! つまり、その間は魔女は双子の子たちを追いかけられず、無事ということになるのでは!」
「ふむむ!」
「ふむむむ!」
どうぶつ騎士たちも納得したようだ。
一行は、獣人たちが顔を出したところをのぞく。
すると、そこには上に上がる階段が。
「そうか! 獣人は魔女のところから来るんだから、獣人が来るたびにやってきたところを探せば、上にいけるんですね!」
「ですわね! 獣人をやっつけながら、上に登って行きますわよー!!」




