魔女の工房へ!
ボーリスさんと合流できたあたしたちは、魔女のところに戻っていくのです!
床のビスケットや、柱のチョコバーを、食べるんじゃなくて剥がして手に持ちます。
それで、やって来る獣人を、これでペチッと叩くのです。
「えーいっ!」
「ぐわーっ!?」
「とりゃー!」
「うわー!」
きいてるきいてる!
森の枝もだけど、魔女が作ったお菓子も獣人に効くみたい。
あたしとお兄ちゃんで、お菓子をぶんぶん振りまわしながらボーリスさんの後ろを走ります。
「いまごろ、ナイトリーダーも上にむかっているでござろう! ひたすらのぼっていくでござるぞ!」
「おー!」
「おー!」
一気に逆転です。
さっきまで走ってた廊下をもどって、階段をのぼっていきます。
ボーリスさんはちっちゃいのに、階段を一段とばしでぴょんぴょん。
リスってすごい!
「ししょー、はやいー!」
「ま、まってえー」
あたしたちはふつうの子どもなので、がんばらないとついて行けません。
ひいふう言いながら階段をのぼったら、そこではまた、ボーリスさんが大暴れ!
なんでもかんでも武器にしちゃうリスの騎士さんにとって、お菓子の迷宮はどこもかしこも使えるものばっかりみたいです。
「ビスケットしゅりけんだ! えいやー!」
「ゆ、床を蹴り破って! うぐわーっ!」
「キャンディのだんがんだ! えいやー!」
「天井の明かりが降り注いでくる!? うぐわーっ!」
集まってくる獣人を、たった一人で相手しています。
ボーリスさんはちっちゃいから、獣人も追いかけるのが大変みたい。
しかも、ものすごく速くて、つかんだお菓子を全部武器にします。
チョコバーの柱をかじって折って、ビスケットの床を尻尾でたたいて割って、かざりのゼリービーンズをえいやっともいで、使いこなすんです。
おくれて上がってきたあたしたち。
ボーリスさんが迷宮をこわした時にできた、お菓子のかけらを拾います。
「いくぞ、グレーテ!」
「うん! えーいっ!!」
「うわー! ガキどもまで攻撃してくる!」
あたしとお兄ちゃんは、ボーリスさんみたいに強くないけど、でもお菓子が獣人に効くなら投げつけたりするのがいいと思うのです!
「おおっ! ふたりとも、えんごをかんしゃするでござる!! このすきに、チョコバーをチョコでつなげて……!!」
ボーリスさんが柱からかじりとったチョコバーが、どんどんつながっていきます。
これって、まるですっごく長い長い……!
「やりにござる。じゅうじんども、もういっぽも近づけぬでござるぞ!」
迷宮の通路いっぱいにのびた槍です!
これをボーリスさん、ひゅんひゅんとふりまわします。
当たった獣人は、つぎつぎにビスケットに戻るんです。
「に、逃げ場が! ぐわー!」
「まずい、まずいぞ! フォクシー様にお伝えをぐわー!」
「このまま行くでござる! ふたりともついてくるのでござる!」
「はいっ!」
「わかったぜししょー!」
ボーリスさんがどんどん進む先には、獣人だったビスケットがたくさん転がっています。
誰も、リスの騎士を止められないんです!
『アハハハ! 来るのかい、どうぶつ騎士! いいだろう! アテを魔王様のように倒そうというなら、やってみるがいいさ! だけど、ただのどうぶつにやられるほど、アテは焼きが回っちゃいないよ?』
突然響いたのは、魔女の声です。
迷宮の壁から生えてる、不思議な管から聞こえてくるみたい。
「どこだ、まじょめ! せっしゃがやっつけてやる!」
『フフフ、獣人どもじゃあ、お前の相手にならないようだねえ。ならば、直接アテが相手をしてやろうじゃないか。さあ、おいで! ここがアテのお菓子工房だよ……!!』
「あっ! ボーリスさん、お兄ちゃん、天井が……! 壁が……!」
あたしたちの目の前で、迷宮の形が変わっていきます!
壁が動き始めて、廊下が広くなって、天井がぱかっと開きました。
そして、ずうっと上の方に、何かが見えます。
それは大きな鉄のかまです。
かまの横に、あの魔女が立っています。
『さあおいで』
ずうっと上にあるあれが、おかまがあるところが、魔女のお菓子工房なのです。
工房の横に、ストン、と音がして四角いスポンジケーキが飛び出しました。
その下にも、ケーキがストン。
ストン、ストン、ストン。
互い違いに、ケーキが飛び出してきます。
魔女の工房に行けるように、それはスポンジケーキの螺旋階段なのです。
「な、何か出来ていますわー!?」
下から大きな声がしました。
そこにいたのは、お姫様みたいな騎士の女の子と、黒いドレスみたいな鎧の女の子。
それから、真っ白なウサギさんです。
「けっせんか! ボーリスきょう、むりをするなよ!」
「ナイトリーダー! いちばんやりはもらうでござるぞ!」
ボーリスさんが走り出しました。
ケーキの階段を、ぽよん、ぽよん、と登っていきます。
ボーリスさんがケーキに着地するたびに、ふんわりと粉砂糖が舞い上がります。
階段なのに、すごくていねいに作られています!
あたしとお兄ちゃんも、恐る恐る階段をのぼります。
足元が、ふわっふわ。
でも、きちんと足を押し返してきます。
「行こう、お兄ちゃん!」
「おう!」
あたしたちは、手をつないで、一緒に一歩ふみだします。
魔女のところへ……!




