うなれニンジン、そして松ぼっくり
「とあー!」
もふもふのウサギさんが宙を舞います。
手にしたニンジンが、クマの獣人をぽこっと叩きました。
「ぐえーっ!」
ただ一回の攻撃で、獣人はクマさん型のビスケットになってしまいました。
「とあー! とー!」
獣人から獣人へ、ウサギさんは跳び回りながら、次々にやっつけていきます!
ボーリスさんだって負けてません。
「うではなまっておらぬようだな、ナイトリーダー! せっしゃもうでにみがきをかけておる!」
ボーリスさんは、いつの間にかたくさんの松ぼっくりを用意していました。
そして、これを木の皮で結んで、引っ張りながら枝を駆け上がります。
「くらうがいい、じゅうじんども! えいや! えいやー!」
ボーリスさん、木の皮をかじっては松ぼっくりを切り離して、獣人たちに投げつけます。
ただの松ぼっくりなのに、獣人たちにはまるで、空から槍が降ってきたみたい。
「ぐえー!」
「ぐえぐえー!」
「横はウサギ、上はリス! 逃げ場がねえ! ぐえー!」
どんどん、獣人が倒れていきます!
「よし、僕もやるぞー!」
「あっ、お兄ちゃんあぶないよ!」
お兄ちゃんが木の枝を持って走り出したので、慌ててあたしも後を追っかけました。
「わっ、お子様方、危ないですわよ!」
後ろを、騎士のかっこうをした女の子も走ってきます。
なんだか、みんなでウサギさんとリスさんが戦っているところに入ってくる感じになりました!
「うおー! あんな子どもたちだって頑張ってるんじゃー! わしらも後ひと頑張りだぞ!」
「うおー!」
ノームさんたちも加わりました!
そして、加わるのはそれだけじゃなかったんです。
「森はみんなものです!!」
すごい大合唱が聞えました。
そしたら、森の向こうから、枝を手にしたたくさんの人たちがいるんです!
「獣人がいたぞー!」
「囲んで枝でたたけー!」
その人たちは、獣人を怖がるわけでもなく、わーっとみんなでこっちに向かってきました。
そして、枝でぽこぽこと獣人を叩きます!
「ば、ばかな! 村人がなんで俺たちに逆らうぐわーっ」
叩かれた獣人が、どんどんビスケットに戻っていきます。
あの枝はなんだろう!
「やはり、このもりの木のえだは、じゅうじんにきいたか! もりはまじょをきらっていたでござるからな!」
ボーリスさんが、あたしの近くまで降りてきてそう言いました。
確かに、前にボーリスさん、そういう話をしてた気がします。
森が魔女を嫌ってるから、木の実をすごく高いところにつけるんだって。
そうだとしたら、魔の森は魔女の森なんかじゃないのです。
魔女に勝手に住まれて、迷惑してる森なのです!
「あ、あたしもやる!」
あたしは、転がってたどんぐりを拾いました。
「えーいっ!」
それを獣人に投げます。
そしたら、当たった獣人が、「ぐわーっ!?」って言ってよろけます!
森のものは、獣人にきくんです!
これを見てた村人が、ぽんと手を打ちました。
「そうか、みんなで囲んだら獣人を叩けるのは限られるけど、みんなでクルミやどんぐりを投げたら一度にできるぞ!」
「よし、僕がやる!」
村人さんの思いつきに、お兄ちゃんがさっそく動きました。
地面には、どんぐりやくるみ、硬い木の実がたくさん落ちています。
昔森に住んでた動物が減ってしまったから、木の実が食べられずに残ってるんです。
これをお兄ちゃんはいっぱい拾って、村の人たちに分けてまわります。
「ありがとう、坊主! よし、やるぞう!」
「どんぐり投げをくらいなさーい!」
いっせいに、みんながクルミやどんぐりを投げ出しました。
棒で叩くよりは痛くないみたいだけど、たくさんぶつかってくるので、獣人たちの動きが遅くなります。
そこに、ボーリスさんが飛び込みました!
「えいやっ、えいえい、えいやーっ!」
手にしているのは、長く伸ばした木の皮に、松ぼっくりを結んだ武器です!
麦の穂を落とす為の竿みたい。
これを振り回して、獣人たちを次々に叩いていきます。
「うぎゃー!」
「くそ、森中の獣人を集めろ! 相手はリスとウサギを除けば、ただの村人や小人だぞ!」
「だ、だめだ! 森の向こうからも村人がきた!」
「なんだと!? まさか、森の周りの村が全部敵に回ったのか!?」
周り中から、声が聞え始めました。
「森はみんなのものです!」
「森はみんなのものです!」
あたしの隣にいた、お姫様みたいな騎士の子が、微笑みます。
「みんな来ましたわね。みんなで力を合わせたら、魔女だってやっつけられますわ!」
そう言いながら、剣を振り回しました。
それは獣人に当たって、
「い、いい匂いうぎゃーっ」
お鼻をひくひくさせながら、獣人はビスケットに戻ってしまいました。
村人の数もどーんと増えて、もうぜんぜん、獣人より多いです。
みんなの勢いに押されて、獣人たちはたじたじ。
逃げようにも、囲まれてるから逃げられません。
今まで、ずーっとひどいめにあわされてきたんです。
ついに、あたしたちの反撃が始まったのでした。
「も、もうだめだー!」
「フォクシー様はまだ、何をやってるんだ!?」
「あっ、フォクシー様が窯の前に立って、今正に開けるところぐわーっ!」
どよめく獣人たちを、くるくる回るウサギさんがなぎ払いました!
次々にビスケットになる獣人。
これはもう、勝負ありです!
「いけるぞみんな! ウサギの騎士ピョンスロット様に続けー!」
ごっつい、きこりみたいなおじさんが大きい声を出します。
そうしたら、村人さんたちはわーっと盛り上がりました。
本当にいけそうです!
だけど……。
「もう、さっきから騒がしいねえ! おちおちお菓子も作っていられないじゃないかい!」
凄く大きな声がしました。
声といっしょに、お菓子の家の扉が開きます……!




